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2019.04.19

ワーキング・ペーパー(19-003E)「Fragility in modeling consumption tax revenue」

本稿はワーキング・ペーパーです

 日本では、2019年10月より消費税を10%にまで増税することが予定されている。また、EU加盟国では付加価値税の最低標準税率は15%と定められており、20%を超える国も多い。これらの事実より、消費税収は重要な政府の収入源の一つとなっており、アカデミックなマクロ経済学・財政分野の研究においても、消費税を取り込んだモデルを用いて、数多くの分析がなされている。

 このような応用研究では、「消費税収曲線がどのような形状(消費税率と税収の関係)をしているか」や「消費税収の上限値がいくら」であるかは分析の結果に大きな影響を与える。本稿では、マクロ経済理論を用いた応用研究において、家計の選好をどのような効用関数で表現するか、また税収の用途をどのように考えるかによって、消費税収曲線(いわゆるラッファー曲線)の性質が大きく変わってしまうことを明らかにした。

 効用関数はいずれもマクロ経済学で標準的に用いられているもので、(1) King-Plossor-Rebelo(KPR)型効用関数、(2) 消費と労働供給の加法分離型効用関数、(3) Greenwood-Hercowitz-Huffman(GHH)型効用関数の3つを想定した。本稿の結果によると、KPR型効用関数を用いた場合、消費税を上げれば上げるほど税収を増加させられるのに対し、加法分離型効用関数やGHH型効用関数の場合、消費税のラッファー曲線が逆U字型となり消費税が高すぎると税収がむしろ落ち込むケースが起こりうる。また、税収を移転所得に充てる場合、税収には上限がなく、増税によってどこまでも税収を増加させられる傾向が高いのに対し、税収を政府支出に充てる場合には税収は有限の上限が存在する傾向が高いことも示された。

 本稿で得られた知見は、消費税を導入したマクロ経済理論を用いた分析結果が、そのモデルの基礎的な仮定や政策手段に大きく依存しうることを明らかにしており、どのようなモデルの仮定を用いるべきかその頑健性のチェックが重要になることを示唆している。

 また、消費税のラッファー曲線が逆U字型になるのであれば、消費税増税は場合によっては必ずしも常に税収増加につながるわけではなく、高すぎる消費税率は税収確保の観点から見ても避けたほうがよいかもしれないことを示唆しており、現実の課税政策運営にも一定の含意があると考えられる。


(※本稿は "When is the Laffer curve for consumption tax hump-shaped?" CIGS Working Paper 16-002E に、新たな研究成果を加えて、大幅に改定・修正したものです)


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