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2014.07.18

ワーキング・ペーパー(14-007E) 「Optimal taxation and debt with uninsurable risks to human capital accumulation」

本稿はワーキング・ペーパーです

  • 上席研究員 中嶋 智之/
    京都大学 梶井 厚志/
    European University Institute Piero Gottardi

 本論文では、人的資本の蓄積を考慮した経済成長モデルを用いて、望ましい課税システムについて分析を行った。人的資本とは労働者の蓄積する知識や技術を意味し、現代経済学における主要な概念の一つである。関連する既存研究では、Jones, Manuelli, and Rossiの論文が有名である。彼らは、人的資本の蓄積を考慮した経済成長モデルを用いて、長期的には資本所得税と労働所得税はともにゼロにするのが望ましいこと、従って、政府はその支出をまかなうために、(負債ではなく)資産を保持すべきであることを示した。これらは現実の課税体系や政府負債量とは大きく異なっており、彼らの結論が正しければ、現実の政府はきわめて非効率な財政政策を行っていることになる。

 我々は、Jones, Manuelli, and Rossiのモデルに対して、個々人の人的資本蓄積に関して不確実性を導入するという拡張を行った。個々人の人的資本蓄積が様々な不確実性にさらされていることは、日々の体験からも明らかであろう。例えば、大学に進学することや、会社で新たな技術の習得に挑むことが、どの程度の賃金上昇をもたらすのかを事前に正確に知ることは困難である。実際、最近の労働報酬に関する実証分析も、人的資本蓄積が多くの不確実性にさらされていることを示唆している。

 本論文では、このような不確実性を考慮すると、Jones, Manuelli, and Rossiの結論は大きく変更されることを示した。具体的には、まず、労働所得と資本所得に課税することが長期的にも望ましいこと、従って、(政府支出がさほど大きくない場合には)政府は負債を保有することが望ましいことを理論的に示した。次に、アメリカ経済を例にとって数値シミュレーション分析を行い、現実のアメリカの課税システムが、理論的に望ましいものと大きくは異なっていないことを示した。




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