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2019年 研究領域・テーマ:政治・経済

通商政策

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 2018年、2年目を迎えたトランプ政権は、保護主義的な措置(鉄鋼・アルミの関税引き上げ、対中関税の引き上げ、自動車も関税引き上げ)を次々に打ち出して、世界を混乱させている。このような行動は”unpredictable”と呼ばれているが、大統領選挙戦中に行った約束を忠実に実行しているという意味では、きわめて”predictable”である。観点を変えると、トランプを支持した人たちの意見を変えない限り、彼は保護主義的な政策を変えようとはしない。そのためには、単に自由貿易の利益を抽象的に唱えるのではなく、具体的な保護主義的政策がどれだけの負担を、アメリカにおいて経済全体だけではなく、特定の産業と労働者に与えるかを示していくことが必要である。
例えば、中国との貿易戦争は、米中間だけの関税を引き上げるというものであり、これは米中以外の全ての国が自由貿易協定を結んだことに他ならない。しかも、自由貿易協定の本質は“差別”である。ということは、米中両国の産業が差別されるということである。現に、中国の大豆の関税引き上げではブラジルが、同じく牛肉ではオーストラリア、自動車では日本が、それぞれ漁夫の利を得ている。なお、米中間の貿易ルートがおかしくなっているだけであり、アメリカ、中国に行く他の貿易ルートはそのままであるので、大恐慌後のような混乱は起きない。しかしながら、アメリカ抜きのTPPの場合と同様、このような主張は少ない。本質的な部分に目が向かないからである。
さらに、トランプの通商政策は、安全保障からの鉄や自動車の関税の引き上げ、通商法301条の適用による対中関税引き上げなど、WTOを無視した政策をとっている。他方で、中国やインドの反対で、WTOの立法的な役割の部分はほとんど機能不全になっている。これを打破するためには、TPP11の拡大によるTPP協定の内容をWTOに盛り込むことが必要である。
以上の観点から、事態の推移に応じた分析と政策提言を行う。
プロジェクトの概要 国内外の交渉担当者、シンクタンク、国際経済学及び国際経済法の研究者と意見交換を行い、これを踏まえて今後の通商交渉のあり方について調査・分析を行う。

農業政策

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 (1) 政策分野
安倍政権の下での農政の現実は、農協改革への着手等一部に前進は見られるものの、減反の実質的な強化を減反廃止と打ち上げたり、影響もないのに不要な自由化対策を講じるなど、自民党農林族議員と農水省が調整したものを官邸が追認するようなものが多く、よりよい方向への転換ではなく、むしろ制度の改悪や農業保護の増大となっている。また、食料自給率など農業界による情報操作により、多くの国民は誤った観念にとらわれている。引き続き、農政改革の必要性とその方向について政策提言を行う。
(2) テクノロジー
ITやAIの農業への活用について、一種のフィーバーのようなものがみられる。しかし、ドローンが作物の生育状況をよりよく把握することができるというだけなら、個々の企業者や農業者による通常の経済活動に任せておけばよいだけである。これに対して、市場だけに任せておくだけでは、目的を達成できない場合には、政策的な関与が必要となる。
そのようなものとして、次のものがある。
①農業IT協同組合の設立(ビッグデータを実現するための、農業者へのデータ処理のアシスト、農業者からのデータの収集と分析、匿名化、さらに、ビッグデータと個々の農業者の経営・生産状況を踏まえた農業者への助言)
②トレーサビリティへのブロックチェーンの活用(食品・農水産物は様々な部位に分解されたり、大量のものが小分け・加工されながら流通する。しかも、流通は多段階であり、かつ多数の人が関与する。また、食の危険を高めるハザードには多種多様なものがあり、加工の段階で人為的なミスで危険な化学物質が混入するだけではなく、関係者の知らないところで微生物に汚染される可能性も存在する(例えば、雪印による食中毒事件では、停電に起因する微生物の汚染の状況を誤解した人為的なミス)。仮に、特定の段階のものについて汚染等が発見された場合、それと同じように汚染されたものを特定できれば、それ以降の流通をストップさせ、汚染の拡大による被害を最小化できる。これが食の安全性についてのトレーサビリティであるが、手作業による記帳を多段階で行うことには膨大なコストがかかるので、農産物の生産から加工まで一貫して行っている業者くらいしか対応できていない。もし、これにブロックチェーンを導入することができれば、食の安全をより一層向上させることができる。
プロジェクトの概要 全国各地の農業者や農産物加工・流通業者等と意見交換し、経済学的な基礎の上に立って、価格支持政策、農地政策、農協政策という農政の大きな柱を中心に、提言を行う。 IT技術やバイオテクノロジーなどの先進技術の導入・活用による日本農業発展の可能性とそれに必要な政策的な枠組みを、国内の農業現場やベンチャー企業の動向を調査するとともに、オランダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど先進国での取り組み事例なども調査しながら、検討する。

林業政策

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 (1) 林業政策の存在理由
林業政策は産業育成と多面的機能のどちらかに重点を置きながら行われてきたが、最近の大雨による被害はむしろ流木によるものが多く、多面的機能とは逆の結果(森林が加害)を招いている。多面的機能論からは植林による育成林業と自然に返す方のどちらが効果的なのだろうか。また、自然による災害の防止という観点からは、林業育成ではなく、砂防ダムの充実や自然に強い河川(流木の河川への流入阻止)の整備のほうがより効率的とは言えないか?農業には食料安全保障という保護の理由があるが、毎日消費しなければならない食料と異なり、一定期間輸入が途絶しても当面は現にある住居を活用すればよいという性質を持つ林産物については、財として保護しなければならないという特殊性はない。単に業界が存在するから保護するというのではなく、国民経済的な視点から果たして林業を政策として保護・育成する必要があるのかどうかということについて、検討する。
(2) 林業政策の妥当性
新しい林業政策は担い手に林地を集積して効率を図るか、それができないときは市町村に管理させるというものである。しかし、林業の場合には、農業の米政策のように人為的な政策により効率化が図られなかったというものではない。経済行為に任せて効率化が図られなかった原因を明らかにしなければ、正しい対策を打てない。これについては、どのようにしても担い手の収益の水準は高くならないので、そもそも林地の集積は困難だったのか、収穫が長期間経過後に行われるので皆伐・植林という経営では、収益が極めて不確実なものになってしまうからなのか?これらを踏まえて、持続可能な林業のありかた、適切な林業政策について、検討する。
その際、諸外国において、林業が持続可能な産業となっているかどうか、我が国とは異なる林業のあり方になっているのかどうか、そのためにどのような施策が講じられてきたのか、などについて検討する。
プロジェクトの概要 林業従事者、林業政策の担当者および研究者と意見交換を行いながら、統計データや海外の林業の動向やその政策を踏まえ、政策提言を行う。

中国経済分析

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 中国経済は2010年代以降、高度成長期の終盤局面にあり、長期的には成長率の緩やかな減速傾向が続いている。2017年初から2018年央まで約1年半の間、減速傾向が止まり、ほぼ横ばい圏内で推移していたが、その後再び緩やかな減速局面に入った。19年は米中貿易摩擦激化という不安定要素が本格化するリスクもあり、予断を許さない状況が続くが、中国経済はすでに内需主導型経済構造に変化しているため、米中摩擦が極めて深刻な状況に陥らない限り、マクロ経済の安定を保つことは十分可能である。
この間、17年10月の党大会以降、第2期習近平政権は一段と政権基盤が安定し、その政治力を梃に、中長期的な金融リスク防止のため、金融・財政両面において構造改革の難題に取り組んでいる。これがもたらす経済へのマイナスインパクトを慎重に見極めながら、米中貿易摩擦の影響下において、マクロ経済の安定確保と構造改革の断行をいかにして調和させるかが当面の最重要課題となる。
また、18年5月の李克強総理訪日を機に日中関係の改善が加速し、日本企業の対中投資拡大の追い風となっている。中国ビジネスの好調持続を背景に日本企業の対中投資姿勢は2000年代前半以来十数年ぶりに本格的に積極化する可能性が高まりつつある。
以上のような現状認識を踏まえ、短期的なマクロ経済動向、構造改革がもたらす様々な影響、日中経済交流活発化の実態等について、それぞれのファクターが相互に及ぼし合う影響にも注目しながら、中国経済の全体像をわかりやすく描き出すことを目指す。
プロジェクトの概要 定期的な中国出張による現地取材をベースに、中国の政府関係者・学者・エコノミスト、中国現地の日本企業等信頼できる筋から正確かつタイムリーな情報収集に努める。それらの情報を基に、マクロ経済、地域経済、産業別動向、金融動向、各種構造改革の進展状況等を総合的に整理し、国内政治動向や日中関係も加味し、中国経済の実態および日中経済関係をわかりやすく分析する。

Élan Vital for Japan

プロジェクトリーダー
プロジェクトメンバー  ・   ・ 
外部協力メンバー 黒川 清(東京大学政策研究大学院大学教授)、本田 幸夫(大阪工業大学工学部ロボット工学科教授)
プロジェクトの目的 日本経済社会及び企業活動の活性化に関わる主要分野の批判的検討と提言。
プロジェクトの概要 日本経済社会の長年の課題である少子高齢化問題及び毎年増加する社会保障費に関し、これまで様々な提言がなされてきた。それにもかかわらず、残念なことに、問題解決に至るような道筋になっていないのが現状である。
こうした情勢に鑑み、本プロジェクトは、多面的な形で内外の研究者と共に、研究・情報発信を行うものである。
第一に、世界でも現在問い直されて始めている「新社会契約論」について検討を加える。今後の日本経済社会において、政府、事業団体、地域共同体、そして個人は如何なる形で関わりを持つのか、これについて、社会思想の分野から検討を行う。
第二に、冒頭で述べた通り、世界で最も高齢化の水準が高い日本社会は、経済的には社会保障費の増大、また社会的には高齢者の介護と自立支援に関する最適制度の模索が懸案となっている。これらに関して、本プロジェクトでは、高齢者のための介護・自立支援を、日本のロボット産業の視点から検討を加える。
第三に、日本経済社会に関する国際化問題に関し、特に企業の国際化戦略と人材開発戦略で、海外の研究者の知見を取り入れて、研究・対外発信を行う。
従来の研究活動に引き続き、研究成果の内外への発信を重視する。

東アジアの長期情勢に関する分析・評価

プロジェクトリーダー
プロジェクトメンバー
プロジェクトの目的 2050年までの東アジアにおける大国間の関係の長期的趨勢について、とくに大国間の攻防といわれるような米中間の対立・競争についての戦略的趨勢を中心に、長期的情勢の変化を、より総合的に分析・評価する。こうした研究により、東アジアの長期情勢の特徴を導出するとともに、東アジアの国際関係の安定化の方途を探る。
プロジェクトの概要 (1) 東アジア長期分析研究会
月一回程度の勉強会の場を利用し、東アジアの長期的趨勢について、経済的、政治的、社会的変化およびそれらの変化が中長期的に東アジアの国際関係に与える影響について議論する。
(2) 外国人中国研究者の招聘
年に2~3名程度の外国人中国研究者を月一回程度の研究会の場に招聘し、東アジアの長期的趨勢、特に中国との関係について議論を行う。招聘対象国は韓国・台湾などの近隣国を想定している。

中国の銀行制度改革と資本市場の育成

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 WTO加盟後の集中的な構造改革を経て、中国の銀行業金融機関は融資能力を回復させ、同国の経済発展に大きく貢献してきた。一方、近年は銀行融資や銀行が関与した債券発行に起因する過剰債務問題が、同国の持続可能な安定成長の足かせとなっている面もあり、銀行、企業・個人、政府、それぞれのリスク管理能力の強化が重要な課題となっている。
本研究では、中国の銀行セクターの現状分析と、同国が更なる金融市場化を進める上での課題について、国際比較も交えた検討を行う。特に、国有企業及び地方政府の債務問題解消に向けた取り組みの進展状況を確認するとともに、金融リスクをコントロールするための監督体制等の整備について、日本の経験を踏まえた提言も試みる。
資本配分の効率性を向上させ、また、銀行セクターへのリスク集中を緩和する上でも、資本市場の育成は重要である。資本市場改革の進展状況を確認し、同国ひいてはアジアの資本市場発展に向けた課題について、考察を深める。
プロジェクトの概要 中国経済の持続可能な安定成長にとって重要な資金分配の役割を担う金融システムについて、銀行制度を中心に、これまでの改革の成果と今後の発展に向けた課題を分析・評価する。中国政府の政策発表と公表統計等にアネクドータルな情報を加え、問題を多角的に分析する。主な活動計画は以下の通り。
(1) 中国政府、市場運営機関、個別金融機関等の公表資料と金融統計を収集・整理し、主要金融機関の財務内容及びリスク管理体制整備の現状と課題を評価・分析する。
(2) 地方政府による債券発行の現状を確認し、地場銀行との関係にどのような変化が生じているかを把握する。
(3) シャドーバンキングの行き過ぎ抑制に向けた中央政府の取り組みが、金融セクターにおけるイノベーションに及ぼしている影響を確認し、問題解決の道筋を検討する。
研究の過程において、中間報告の実施やワーキングペーパーの公表を行い、有識者等にコメントを求める。また、適宜のタイミングで中国、東南アジア及び欧米諸国に出張し、金融市場関係者や研究者との意見交換を積極的に行い、研究成果の向上を目指す。

安定成長への円滑な移行を目指す中国における財政の役割

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 中国財政の健全性及び持続可能性について、2016年来取り組んでいる研究を更に進め、国際比較を交えた検討を行う。特に、地方政府債務削減に向けた近年の改革の成果を確認し、中央政府と地方政府の財政上の役割分担のあり方を考察する。
社会保障制度整備の進展状況を確認し、将来設計上の課題について理解を深める。
中国の国家財政の現状把握に努め、リスクの所在について検討を行う。
プロジェクトの概要 中国内外の先行研究のレビューと中国政府公表資料及び同国内外のメディア情報等を丁寧に整理し、同国財政の現状と課題について検討を深める。
(1) 2017年以降、具体的な情報が増えている地方政府債務の削減に向けた動きを整理し、今後の課題について検討する。
(2) 2016年以降取り組んでいる同国社会保障関連支出の将来展望に関する研究を深める。
(3) 中国財政の健全性について、中長期展望を試みる。

中国の国際資本フローの変化

プロジェクトリーダー
プロジェクトの目的 中国の国際資本フローについて、現状を確認し、資本取引規制緩和のペースにつき検討を重ねる。また、同国の対外融資や通貨スワップの現状を分析し、国際金融協力のあり方について、考察を深める。
プロジェクトの概要 国内外の学術研究会に積極的に参加し、多角的な視点から意見交換を重ねる。研究会に討論者として参加した際には、その内容を研究所のホームページ等で公表し、広く情報を提供するとともに、コメントを求める。
中国の研究者等から寄せられる日本の金融自由化に関する質問に答える機会を活用し、中国の金融自由化の道筋について議論を深める。

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