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2018.12.25

【数字は語る】対外短期借り入れも多額-日銀に求められる金融安定化の視点

週刊ダイヤモンド 2018年12月22日に掲載

  • 須田 美矢子
  • 特別顧問
    須田 美矢子

 米連邦準備制度理事会(FRB)の金融安定報告書が11月末に初めて公表され、主要中央銀行による報告書が出そろった。どの報告書も金融システムは総じて安定的との評価だが、民間・政府債務の積み上がりや一部の資産価格の高止まりなど、脆弱な点が部分的に見られるとの指摘もある。下振れリスクもほぼ共通で、米国の金融引き締め、米中の通商摩擦、英国の欧州連合離脱、イタリアの財政問題、地政学的問題などが挙げられている。

 もっとも、報告書からは強い警戒心は読み取れない。例えばFRBは資金繰りリスクを取り上げているが、そのリスクは小さいとしている。金融危機の教訓から金融機関にある程度の流動資産の保有が義務付けられたため、ショックに見舞われても資金繰りリスクの顕現化は回避できるとの見立てだ。

 ただ、日本では、この見方は楽観的過ぎるかもしれない。現に、邦銀の対外資産に海外からのショックが加わると、市場のリスク回避姿勢が強まり、円高や資産の価格下落を引き起こす可能性がある。外貨調達コストが上昇し、邦銀をはじめ企業収益の低下につながる。

 流動資産の保有に関する規制にしても、一部の金融機関に導入されただけで、万全ではない。日本の債権・債務残高を長短期別に見てみると、6月末で短期の対外純債務が188兆円、長期の純資産が233兆円。日本全体で見れば、「短期借り・長期貸し」を行っていることになり、脆弱性は否めない。なんらかのショックで短期借り換えに問題が生じると、高金利での借り換えを余儀なくされたり、長期の資産を相当低い価格で売却する必要に迫られるためだ。

 しかもここ数年、短期の対外純債務は増えている。外貨建てだけを取り上げると、長期資産が突出しておりバランスを欠いている。フィンテックなどの動きもあり、想定外のところで資金繰りリスクが顕現化する可能性もある。

 日本では、今後も異例の金融緩和の継続が想定されており、資産・負債残高のゆがみが拡大する傾向にある。日本銀行には、物価の安定とともに、金融の安定化をより重視した政策を望みたい。

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