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2019年11月25日(月)13:00~15:30開催 場所:一橋大学 学術総合センター2階 一橋講堂

CIGS International Symposium 「バイオテクノロジーは食料問題と環境問題を解決するか?:リチャード・ロバーツ(ノーベル賞受賞者)講演会」

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2019年11月25日に、国際シンポジウム「バイオテクノロジーは食料問題と環境問題を解決するか?:リチャード・ロバーツ(ノーベル賞受賞者)講演会」を開催しました。

開催趣旨

 遺伝子組み換え作物(Genetically Modified Organizations, GMOs)は、世界中で20年以上にわたり栽培されてきた。今や世界の耕地面積の13%(=日本の面積の約5倍)でGMOsが栽培され、世界の大豆の8割はGMOsとなっている。しかし、欧州や日本では安全・安心の観点から根強い懸念の声があり、普及が進んでいない。
 本シンポジウムでは、GMOsのうち、特にビタミン強化米(ゴールデンライス)について啓蒙普及活動を行っているノーベル生理学・医学賞受賞者のリチャード・ロバーツ氏を講演者に招き、最新の科学的知見を紹介する。 またGMOsを含めバイオテクノロジーは、地球温暖化対策としても重要技術になる可能性を秘めている。この点について、モデレーターの杉山研究主幹から紹介する。
 パネルディスカッションでは、「食生活ジャーナリストの会」代表の小島正美氏および毎日新聞記者の須田桃子氏を招き、GMOs等のバイオテクノロジーの科学・技術の現状、その研究や普及の進め方、一般の人々の受け止め方、社会的な意思決定の在り方等について、批判的な視点を交えながら討論を行う。


プログラムPDF:307KB

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開催挨拶

  • 福井 俊彦
    キヤノングローバル戦略研究所 理事長
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講演

  • リチャード・ロバーツ(Richard John Roberts)
    ノーベル生理学・医学賞受賞者

    「Why you should support GMOs and golden rice」
    遺伝子組み換え作物、特にビタミンを強化したゴールデンライスが開発途上国の栄養状態を改善し、年間数百万人の死亡を防ぐ可能性があること、しかしながら、反対運動のためにその普及が阻まれている現状について紹介があった。

    発表資料「150 Nobel Laureates support GMOs」(英語)PDF:2.23MB
    発表資料「142人のノーベル賞受賞者 による GMO 支援」(日本語:ノート付)PDF:2.44MB

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  • 杉山 大志
    キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

    「バイオテクノロジーは温暖化対策の鍵となるか」
    温室効果ガス排出の3割は食料供給に関連しているところ、遺伝子工学によってその排出削減が可能になるとの研究の紹介があった。

    発表資料(日本語:ノート付き)PDF:1.27MB

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  • 小島 正美
    「食生活ジャーナリストの会」 代表

    「8項目で見た遺伝子組み換え作物 その歴史と課題」
    これまでの日本における遺伝子組み換え技術を巡る行政・政治・市民運動の経緯について説明があった。

    発表資料(日本語)PDF:1.69MB

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  • 須田 桃子
    毎日新聞 科学環境部記者

    遺伝子組み換え作物やそのビジネスを巡る様々な不安、心配、批判の声を踏まえた質問がなされた。また、東大教授が昨年実施したアンケートの結果から、従来の遺伝子組み換え技術よりも精密なゲノム編集技術を応用した食品を「食べたくない」と言う人が多い一方、技術の意味を「理解している」と答えた人は1割弱で、その中でも技術の特性を正しく理解している人は約半数にとどまったことが紹介された。

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ディスカッション

  • 【モデレーター】
    杉山 大志

    【ディスカッサント】
    リチャード・ロバーツ(Richard John Roberts)
    小島 正美
    須田 桃子

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    講演を受けて、パネルディスカッションおよびフロアとの討論が行われた。

    遺伝子組み換え技術に対する不安・心配・批判として、以下の点が須田氏およびフロアから提示された。
    A)不自然な技術ではないか
    B)長期にわたって食べ続けると害がないと本当に言えるのか
    C)貧しい農民は高価な種や農薬を購入せざるを得なくなり、生活が苦しくなるのではないか
    D)遺伝子組み換え技術とセットで使われる農薬グリホサートは有害なのではないか
    E)遺伝子組み換えされた作物が自然生態系と交雑して自然生態系が損なわれるのではないか
    等。

    これらの批判的な意見に対して、ロバーツ氏から1つ1つ回答がなされた。
    A)遺伝子組み換えは、自然界で起きているランダムな組み換えに対して、精密な組み換えをしているだけであり、不自然ということはない。
    B)すでに20年に亘って遺伝子組み換え作物は育てられていて、多くの動物や人が食べているが、重大な害が起きたということはない。
    C)貧しい農民こそ受益者である。インドの零細な綿農家は遺伝子組み換えをした綿のおかげで生活が向上している。ただし、米国のアグリビジネスが、初めに遺伝子組み換え作物を市場に導入したやり方は適切でなかった。利益の多くを自らが取り、消費者や農家に十分な利益を分配しなかった。これが反感を買い、遺伝子組み換え作物に対する世論を不必要に悪化させてしまった。これは残念な経緯だった。
    D)何に比べて有害かという比較が大事である。グリホサートを用いなければ、もっと有害な農薬を使ったり、病虫害を受けたりするのが現状だ。
    E)遺伝子組み換え技術は、自然界で起きるランダムな組み換えに対して、精密な組み換えをしているだけであり、不自然ということはない。だから、自然生態系のものと交雑しても特段有害ということはない。それでも交雑を避けたいならば、農地の周りに空き地や柵を巡らせるという方法がある。これは通常の農業で行われている。

    まとめると、遺伝子組み換え技術を始めとして、遺伝子工学による食料供給増大や栄養状態改善などの便益については、それを認める意見が多かった。他方で、遺伝子工学について否定的な側面から疑問を持つ聴衆が多く、疑問が提示された。ロバーツ氏からは、それらの批判は科学的根拠が希薄であるとして、1つ1つに反論がなされた。

    *ロバーツ氏の主張について、さらに詳しくは、
    https://www.supportprecisionagriculture.org/
    今回の質疑応答でも幾つか出た、よくある質問(Frequently Asked Question)については、
    https://www.supportprecisionagriculture.org/spafaq.html
    をご参照ください。