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2019年6月7日(金)16:00-17:30開催 場所:キヤノングローバル戦略研究所 会議室

CIGS エネルギー環境セミナー 「近自然か多自然か・自然保護の新時代」

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2019年6月7日に、慶應義塾大学名誉教授 岸 由二氏を招き、CIGSエネルギー環境セミナーを開催しました。

 講演者の岸 由二氏から、自身が指導して実現した鶴見川や三浦市小網代の森等の具体的な自然保護活動の事例、及び生態学理論の紹介を交えて、以下の内容で講演があった。
 「手付かずの自然」として、「安定したもっとも価値ある自然」「交雑しない生物集団」を想定し、それを厳正に守ろうとする考え方がある。だがこれは科学的に妥当な目標ではない。というのは、実際には自然は常に変転を続け、一つの状態に留まることはないからだ。のみならず、変化した自然を手付かずの自然に戻そうとするために、しばしば、何ら機能として問題ない自然を破壊することになる。これは外来種や交雑集団の排除への病的な熱中となって現れる。
 それよりは、絶えず変化する自然生態系をしっかり観察し、災害に強くまた生き物にあふれ豊かな生物多様性を実現するという観点から、必要ならば積極的に人の手を加えながら自然保護をすすめることが望ましい。これが多自然主義の生態系理解である。その中では多くの種が生態系を維持する機能を担うのであり、外来種もその中で役割を担うものだ。海外ではこのような思想が高まっており、日本でも今後同様な展開が期待される。


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(左から岸氏、杉山氏)

開催概要
題目: 「近自然か多自然か・自然保護の新時代」
発表者: 岸 由二(慶應義塾大学名誉教授)
モデレーター: 杉山 大志 (キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)


プログラム
ProgramPDF: 283KB


発表資料
岸 由二氏 発表資料PDF: 13.2MB


講演趣旨
都市化や気候変動による生態系の不可逆的変化に直面し、自然保護は大きな転換期に入った。手付かずの自然こそ保全活動の基準と考える従来の常識に対し、「手付かず」の自然は幻想であり、暮らしの足元に広がる大地の現実を踏まえて、安全・魅力・生物多様性豊かな多自然世界を創造してゆくことこそ未来の方向であるとする主張が力を増している。
自然保護の現場から新時代を展望する。


講師紹介
慶應義塾大学名誉教授。理学博士(生態学)。鶴見川流域・三浦半島小網代等を持ち場として、<流域思考>にもとづく防災・多自然都市再生の理論研究ならびに実践活動を推進。
NPO鶴見川流域ネットワーキング、NPO小網代野外活動調整会議、NPO鶴見川源流ネットワークの代表理事。
著書に『自然へのまなざし』、『流域圏プランニングの時代』(共編著)、『流域地図の作り方』、『奇跡の自然の守りかた』、訳書に『利己的な遺伝子』(ドーキンス)、『足元の自然からはじめよう』(ソベル)、『自然という幻想』(マリス)など。