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2019年3月19日(火)16:00~17:30開催 場所:キヤノングローバル戦略研究所 会議室

CIGS エネルギー環境セミナー 「中国における大気汚染対策の『大躍進』-脱石炭化の光と陰」

 キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)は2019年3月19日に、九州大学大学院 経済学研究院の堀井伸浩准教授を招き、CIGSエネルギー環境セミナーを開催しました。

講演者の堀井伸浩准教授より、詳細な統計データおよび現地ヒアリングに基づき、以下の講演が行われた。

・中国の脱石炭化を進めてきた一因である環境規制の効果は、これまで相当の効果を上げてきた。2013年までの規制は、石炭をクリーンで持続可能に利用するシステムの導入を促すもので望ましいものであった。
・しかし2013年以降は、直接的に石炭の利用そのものを制限する措置がPM2.5対策として推進されてきた。2013年を画期として、大気汚染対策の内容が変化。強大な中央政府の権力構造にポピュリズムの暴走が加わって、経済性度外視の環境「大躍進」が展開した。
・政策は環境基準の目標達成だけを求めるべきで、手段(石炭ボイラーの淘汰などをどうするか)は企業に判断させるべきである。2017年の経済性を度外視した環境対策の急進展は社会に高いコストを強いたもので、持続可能性に懸念がある。
・石炭から電気へのエネルギー転換(煤改電)による室内汚染問題の解決には、一定の合理性がありそうだ。しかし、そのためには、電気料金を低く抑えることを目指すべきである。そうすると、再エネに前のめりになりすぎるのではなく、しっかりと対策を施した石炭火力をフルに使って、電気料金を低くする方が合理的である。しかし、現実の対応は、石炭火力についての投資は年々低下傾向であり、再エネが優先されるために出力も抑制される結果、発電コストは上昇傾向が明瞭である。
・科学的な全体整合性のある政策が望まれる。

この講演を受けて、参加者との間で活発な質疑応答が行われた。


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(左から堀井氏、杉山氏)

開催概要
題目: 「中国における大気汚染対策の『大躍進』-脱石炭化の光と陰」
発表者: 堀井 伸浩(九州大学大学院経済学研究院 准教授)
モデレーター: 杉山 大志 (キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)


プログラム
ProgramPDF: 154KB


発表資料
堀井 伸浩 発表資料PDF: 1.30MB


講演趣旨
習近平政権の大気汚染対策は「冬でも北京で青空」を実現した。成果は明瞭だが、裏にある莫大なコストは注目されない。近年の大気汚染対策を50年代の「大躍進」になぞらえるのは不謹慎かもしれないが、強大な中央がポピュリズムで政策を推し進め、地方は自己保身で暴走、経済性を度外視した政策が大々的に展開された点では同様の構図が見て取れる。
本セミナーでは近年の大気汚染対策について、環境統計から全体を俯瞰した上で、現場で何が起こっていたのかを報告する。特に主要エネルギーである石炭の利用抑制によって生じたコストに注目し、政策の評価と今後の展望を試みる。


講師紹介
1971年大阪生まれ。1996年慶應義塾大学法学研究科修士課程修了。アジア経済研究所研究員を経て、2007年より現職。
主要著作:
①堀井伸浩編『中国の持続可能な成長-資源・環境制約の克服は可能か?』日本貿易振興機構アジア経済研究所、2010年
②堀井伸浩編『アジアの環境問題:政治・経済・社会からの視点』花書院、2015年
③Horii, N. "Energy system reforms for the reduction of coal dependency", (Akihisa Mori eds., China's Climate-Energy Policy: Domestic and International Impacts), Routledge, 2017, Chapter 4, pp. 55-74。