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2019.05.22

関係改善の兆しが見えない日韓関係

『東亜』 No.622 2019年4月号(一般財団法人 霞山会 刊行)に掲載

国交正常化以来最悪の日韓関係

 最近の日韓関係は「1965年の国交正常化以来最悪」と言われるまでに、その関係悪化の深刻さが両国双方で認識されるようになった。こうした関係悪化の発端となったのは、昨年10月10日から14日の問、韓国・済州島で行われた「2018大韓民国海軍国際観艦式」への参加を予定していた海上自衛隊艦艇が「旭日旗を掲げて参加する」と韓国メディアに報道されたことにより、韓国国内で大きな波紋を呼んだことである。その後、海上自衛隊は同観艦式への艦艇派遣を見送った。旭日旗問題が両国内で尾を引いていた同月末には、韓国国会議員代表団による竹島訪問(10月22日)、大法院による元徴用工への賠償判決(10月30日)、元慰安婦を支援する和解・治癒財団の解散決定(11月21日)といった関係悪化をもたらす出来事が連続した。そして、12月20日午後に起きた海上自衛隊P-1哨戒機に対する韓国海軍駆逐艦「広開土大王(クァンゲドデワン)」からのレーダー照射事件以降、両国の間で非難の応酬が続いたことは記憶に新しいところである。

 さらに、日韓議員連盟会長経験者である文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が、外国メディアによるインタビューの中で、「天皇による謝罪で慰安婦問題が解決する」などと発言したことにより、日本の世論を決定的に悪化させてしまった。2012年8月10日に李明博大統領が予告なく竹島を訪問した後、両国関係が急速に悪化した際に、李大統領が「天皇への謝罪要求」発言をした時を思い起こすかのように、今後しばらくは日韓関係が改善する兆しが見えなくなる決定打となってしまったのである。

 こうした政治レベルでの日韓両国間の争いは、結果として両国国民が相手国に対して不信感を持つに至った。日本側の世論調査(2019年2月16日・17日実施*1)では77.2%が「韓国という国を信頼できない」と回答した一方で、韓国文化観光部が行った世論調査(2019年2月1日~8日実施*2)によれば、69.4%が「日本に好感が持てない」と回答した。

 2000年代に入って以降の日韓関係は、関係悪化と改善を繰り返してきた。関係改善のたびに大きな復元力となったのは、共通の敵である北朝鮮に対する両国の安全保障上の利害一致が大きかったと言える。しかし、2018年年頭からの南北融和の流れによって朝鮮半島を取り巻く安全保障環境は一変した。2019年1月に韓国国防部が発表した「2018国防白書」から、8年ぶりに「北朝鮮軍は我々の敵」という表現が削除された*3。日韓関係改善の糸口となる共通の敵が消滅してしまったことにより、何を契機に両国関係を改善できるのか誰も想像できていない点が致命的である。さらに、韓国側が徴用工問題をどう処理するかによっては、1965年に結ぼれた日韓基本条約に基づく関係が、根底から崩壊する可能性も否定できない状況が続いていることも危機的である。・・・・


脚注(外部のサイトに移動します)
1.「産経・FNN合同世論調査」『産経新聞』2019年2月18日(2019年2月28日閲覧)
2.韓国文化観光部「3.1運動および大韓民国臨時政府樹立100周年国民認識世論調査」2019年2月26日(2019年2月28日閲覧)
3.韓国国防部『2018年国防白書』2019年1月15日、33頁によれば、「我々の軍は大韓民国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力を我々の敵と見なす」と表現が変わった。


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