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2019.03.20

【シリコンバレーに見る自動車業界の「価値破壊」の予兆と「価値創造」への道(2/4)】 リフト(Lyft)のグリーンモードの衝撃

  • 櫛田 健児
  • International Research Fellow
    櫛田 健児
  • [研究分野]
    Political Economy, Information Technology, Politics

<CIGS International Research Fellow 櫛田健児 シリーズ連載>

シリコンバレーに見る自動車業界の「価値破壊」の予兆と「価値創造」への道
1. そもそもウーバーとは(2019年3月20日掲載)
2. リフト(Lyft)のグリーンモードの衝撃(2019年3月20日掲載)
3. テスラの「価値」:競争の土俵を変える(2019年3月22日掲載)
4. オーロラ(Aurora):先陣を切る企業を飛び出した起業家たち(2019年3月22日掲載)



 2019年2月にリフトが衝撃的なサービスを発表した。1月から試験プロジェクトとして、シアトルで「グリーンモード」を行っていると発表したのである。通常と違い、グリーンモードはハイブリッドか電気の「エコカー」を呼んで乗るというものである。これは、電気自動車時代到来の予兆かもしれない。

 私が住むシリコンバレーのスタンフォード大学近郊は、シェッピングモールでテスラの自動車が売れており、かなりの数のテスラが日常的に走っている。BMWの小型電気自動車も人気があり、日産の初代リーフの電気自動車も発売当初から結構見かけた。駐車場の多くは、今では電気自動車用の充電設備が備わっている。

 それでも多くの人にとって、次の自家用車として購入する検討対象にはなっていない。大きな理由は、乗車経験がないからである。わざわざディーラーに行って試乗するほどでもないし、特にテスラは特別商品で値段が高いこともあり、一般家庭のプライマリーや子持ち家庭の二台目の車としては検討されてこなかったのではないかと思う。

 しかし、リフトのグリーンモードにより電気自動車の乗車経験をする人が爆発的に増えるだろう。通常の車を待つのが5分、エコカーなら10分程度であれば、私も一度はエコカーに乗ってみたい。しかも環境に優しく、深刻になりつつある地球温暖化を食い止めるために微力ながら個人で貢献できる。台数が少なく待ち時間が長くても、早めに呼んで待てば良いだけであれば、多くの人は毎回エコカーを選ぶだろう。特に、リフトが試験プロジェクトを行っているシアトルは、環境保護マインドの高い人が多い印象を受ける。

 そうなると「電気自動車(日産リーフなど)は良いじゃないか!」という印象を持つ人が多くなり、次の車は電気自動車にしようかと本気で考えるようになるのではないだろうか。

 リフトのドライバーにとっては、エコカーを運転することで乗客に選んでもらえる確率が高まり、チップを多めにもらえるかもしれない。電気自動車のアーリーアドプターは宣教師のような側面があり、「本当に良いですよ、これは!」と一生懸命広めるタイプの人が多いかもしれない。

 リフトにとっては、大きなウーバーに対抗するためには絶好の策である。ウーバーがリフトを真似して同様のエコカーオプションを始めたら、変化は一気に加速するだろう。

 このようなシナリオ通りには進まないかもしれないが、リフトのグリーンモードにより、既存の自動車業界の価値の多く(ガソリンエンジンで構築した様々な技術的優位性)は奪われてしまう可能性がある。リフトという会社のサービスの話ではなく、このような動きが象徴するものが本質なのである。

 MaaS (Mobility as a Service)という言葉あり、このような形で既存の価値を変えることが本質であるが、既存のプレーヤーは新たな価値をどのようにして作り出せば良いのかまだ見えていない。


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