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2020.06.01

大恐慌時や戦後に学ぶ

読売新聞朝刊(2020年5月20日)に掲載

 今回の経済の落ち込みがどの程度になるか分からないが、経済の急激な収縮に見舞われた大恐慌時の米国や、第2次世界大戦後の日本に学ぶべき点がある。

 大恐慌の出発点は、1929年の米株価の大暴落だが、当初は実体経済はそこまで縮小していなかった。金融政策を重視する「マネタリスト」の総帥として知られるミルトン・フリードマンは、中央銀行による金融の引き締めが危機を深刻化させたと主張した。米連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ元議長がさらに研究を深め、「(当時の金融引き締めによる)金融市場の混乱で、資金が必要なところに行き渡らなくなり、総需要が抑制されることで、恐慌の規模を深めた」と指摘した。

 こうした知見を踏まえると、景気を一段と悪化させないためにも、金融システムを守ることが重要だ。企業の資金繰り支援はそのためにも必要になる。金融機関の経営がいよいよ危ないとなれば、日本銀行が金融市場に資金を供給したり、政府が財政資金により資本を注入したりすることも選捉肢になるだろう。

 経済政策ではまた、需要と供給のバランスをみることが大事だ。教訓になるのが戦後の日本の経済運営だ。

 当時の吉田茂内閣で大蔵大臣を務めた石橋湛山は、石炭や鉄鋼などの基礎的な物資の生産に資源や資金を優先的に投入する「傾斜生産」方式を進めた。供給を回復させるためには、有効な対策だった。

 ただ、生産が十分に伸びる前に財政拡大などの需要刺激策をとってしまった。このためモノ不足が深刻となり、1944年からの5年間で物価は約90倍という激しいインフレに見舞われた。

 今回の政府の経済対策を見ると、まずは生活や企業の維持に全力を挙げている点は評価できる。

 一方で需要刺激策が早くも予算に組まれているのは必ずしも妥当ではないと思う。今は抑え込まれている需要がどれくらいあるか、世界的なサプライチェーン(供給網)がどの程度の打撃を受けているかなどを見極めながら、経済対策をきめ細かく考えていく方が良かった。


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