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2020.05.29

命も経済も守るための「新型ケインズ政策」、感染症対策を公共事業にせよ

週刊ダイヤモンド第108巻21号(2020年5月23日発行)に掲載

  • 小黒 一正
  • 主任研究員
    小黒 一正
  • [研究分野]
    マクロ経済
3 カ月分 ― 資本金1000万~5000万円の中小企業が保有する現預金は運営コストの何カ月分か
出所:財務省

 新型コロナウイルスは、二つのルートで人命を脅威に晒す。一つは重症化による死、もう一つは外出制限や営業自粛の長期化による経済的死だ。緊急事態宣言が解除されても、感染が再び拡大し、医療崩壊を防ぐために自粛が再開される可能性もある。新型コロナウイルス対策の「出口」とは、「命」か「経済」かの二項対立ではなく、徹底した検査により、人々が安心して社会生活を送れるようになる「命も経済も守る出口戦略」ではないか。

 2020年版の中小企業白書は、「宿泊業・飲食サービス業では、今後半年間で資金繰り難が深刻化する可能性」を指摘。また、18年度の法人企業統計調査によると、資本金1000万~5000万円の中小企業が保有する現預金は運営コストの約3カ月分しかない。

 大規模な連鎖倒産を回避するには、残り半年程度がタイムリミットだ。感染の再拡大リスクもあり、それまでに、全国民が1~2週間に1度PCR検査や承認申請中の抗原検査を受けられる体制を整備し、出口戦略として、継続的に陰性の者は安心して外出や仕事を再開できる環境整備が必要だ。

 5月初旬の報道によれば、既に米国は5月中に検査を200万件/週に拡大する目標を掲げ、フランスは、5月11日以降、ロックダウンの制限緩和を行い、1週間に70万件の検査を目指す。わが国でも、地域や職種を選別しながら、まずは1日5万件からでも検査を行い、検査件数や検査体制を抜本的かつ段階的に拡充し、安心して自由に経済活動ができる人々を増やすのが重要であろう。

 1日35万件の検査の場合、3カ月で国民の約25%、6カ月で約50%が1回の検査を受けられるが、1日1000万~2000万件の検査なら国民は1~2週間に1回の検査が受けられる。ハーバード大学も1日2000万件の提言をした。数兆円の予算が必要だが、政府は、明確な出口戦略を定め、感染症対策(検査や隔離)を公共事業の一種に位置付けて民間も利用しながら、「新型ケインズ政策」による経済再生も検討してはどうか。検査人材の確保や備品生産を含め、新たな雇用も創出できよう。


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