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2020.05.20

温暖化の「科学」は決着したのか 議論を封殺する風潮に異議あり

「月刊エネルギーフォーラム(2020年4月号)」に掲載

  • 杉山 大志
  • 研究主幹
    杉山 大志
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

 いま日本では、次の「物語」が共有されている。「地球温暖化が起きている。このままだと生態系は破壊され、災害が増大し、人間生活は大きな悪影響を受ける。温暖化の原因は化石燃料を燃やすことで発生するCO2であり、2050年までのCO2排出量実質ゼロが必要。温暖化対策は待ったなしの状態である」と。メディアは、物語がいったん出来上がると、それに沿って取材をする。つまり物語に合うエピソードだけを拾い集めてそれを強化するという「確証バイアス」がある。

 さらに、行政・政治が強く関与した科学は大きくゆがむことがある。旧石器時代の遺跡が捏造された「ゴッドハンド事件」が最悪の例だ。地球温暖化の「科学」は「明らか」とする意見が声高に言われるが、本当に大丈夫なのだろうか。

 本稿では、 50年までのゼロエミッションなどの極端な対策が必要という意見を温暖化「脅威論」。温暖化自体は否定しないが、そこまで極端な対策は不要との意見を「懐疑論」とし、その是非を論じていく。


米国の半分が懐疑論。科学者も議会で証言

 米国の世論は日本とは全く異なり、脅威論と懐疑論のバランスが拮抗している。①温暖化は党派的な問題で、共和党支持者は懐疑論であること、②既存の権威や学説に挑戦する科学的態度が尊重されること、③これらを反映してバランスが拮抗した報道がなされていること―といった理由からだ。

 米国の調査機関ピューリサーチセンターが、米国の福祉にとって何が重要な脅威かを聞いた調査結果がある。注目されるのは「気候変動」について、民主党支持者の84%が重要な脅威と答える一方、共和党ではわずか27%にとどまることである。米国政治は党派で大きく分かれているにせよ、ほかの問題ではここまで開きが無い。気候変動こそが、もっとも党派間で意見が対立する問題となっている。

 日本で脅威論を否定するとバカ扱いされる傾向にあるが、米国では違う。共和党支持者がここまで脅威論を否定するのは、科学に無知だからではなく、十分に知識を持った上で否定していると見る方が妥当であろう。

 米国では、多くの科学者が議会で脅威論を真っ向から否定しており、特に有名なのはアラバマ大のジョン・クリスティである。彼は地球規模の気温測定の第一人者で、「UAH」の略号で知られる重要な気温データセットを40年間構築、発表し続けてきた。その彼が17年の議会証言で用いたのが次頁の図である。データはそれぞれ、①IPCC(気候変動に関する政府間パネル)で用いた気候モデルによる熱帯の空の温度上昇予測の平均(周囲の細い線はさまざまなモデルによる予測)、②気球による観測、③リモートセンシングによる衛星観測、④②③などの観測データを総合的に再分析した推計値―となっている。


2020401sugiyama01.jpg ※クリックでオリジナル画像表示
クリスティが米国議会証言で用いたデータ

 この図を用いてクリスティは、熱帯の空の温度上昇は予想されたほど起きず、気候モデルはいずれも大外れだったと断じた。その主張を詳しく論じることはほかの機会に譲るが、指摘したいのは、「日本の議会・政府・大手メディアは、このような意見をきちんと聞いているか。このような図を見て、検討したことがあるか」ということである。こうした脅威論への強力な反対意見を、ほとんどの人は知らないのではなかろうか。


メディアも日本と大違い。脅威論と懐疑論が拮抗

 米国はメディアも日本と異なる。科学雑誌ネイチャーに最近載った論文で、脅威論と懐疑論の報道件数を比較したものがある。結果は、科学論文の件数は脅威論が圧倒的多数ながら、報道件数は拮抗し、むしろ懐疑論の方がやや多い、というものだった。この論文の著者は「脅威論が負けているのは危険な状況だから、脅威論者はメディアにもっと出る努力をすべし」と結論付けている。

 しかし筆者はむしろ別のことを読み取った。脅威論には、各国の行政機関や国際機関がスポンサーとなりお金を出しているから、論文の件数も多くなる。にもかかわらず、メディアにおいて両者が拮抗している状況は驚きである。

 共和党系メディアが受け皿となり、懐疑論を報じている。例えば、ウォール・ストリート・ジャーナルは「極端な脅威論はフェイクであり冷静な技術開発が重要」、フォーブスは「山火事は温暖化のせいではない」といった記事を掲載し、テレビではFOXニュースがそうした報道をする。このため世論には全体としてバランス感覚があり、脅威論にも懐疑論にも耳を傾けている。

 懐疑論を支持する論点はほかにも提示されている。「気候モデルの温度上昇は結果を見ながらチューニングされている」「気候モデルは自然変動を表現できていないので予言能力もない」「台風やハリケーンは強くも多くもなっていない」「農業では、技術進歩による生産性向上が、温暖化によるわずかな悪影響をはるかに上回ってきた」「シロクマは絶滅すると言われてきたが、かえって増えてきた」「山火事は増えていない。温暖化で増大もしていない」「水害による死者は防災の向上で激減し、温暖化による影響は見られない」「温暖化による海面上昇は地盤沈下や地震による自然変動に比べわずかであった」「気象庁の温暖化の計測には4割も都市熱が混入し、本当の温暖化は6割程度」「IPCCの『最悪シナリオ』の排出量は多すぎる。シェールガスなどの技術進歩で、現実には3℃までしか上昇しない」など、あらゆる項目にわたる。

 データに基づいた検証は本連載の次回以降に譲る。もしこれらの主張の多くが是であれば、 50年ゼロエミにすべしという脅威論はそれだけ説得力を失う。


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