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2018.12.13

モビリティがもたらす持続可能な開発

日本自動車工業会 jamagazine 2018年11月号に掲載

  • 杉山 大志
  • 研究主幹
    杉山 大志
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

 ラオスに来ている。海岸が無い内陸国である。周囲は中国・タイ・ベトナム・カンボジア・ミャンマーといった新興国に囲まれている。ラオスが発展するためにはこれら諸国との交易が鍵となる。それで高速道路建設や鉄道建設に大きな期待が寄せられ、日本や中国を初めとして多くの国が援助をしている。


クルマ業界のSDGは

 さて昨今の日本では持続可能な開発目標(SDG)がキーワードになっている。ではクルマ業界はどうすれば持続可能な開発に寄与できるか。実は最大の寄与は、クルマの本来の機能であるモビリティそのものであると気づいた。

 ラオスは東南アジアで最も所得水準が低いが、タイプラスワンないしチャイナプラスワンとして、製造業も立地しつつある。工業団地の日本企業を訪ねると、多くの女性労働者が働いていた。これまでは農村で自給自足的な生活をしていたが、今では縫製や電機部品の組み立てに従事している。

 通勤の足は会社が提供するバスであり、朝夕に村々を巡回している。道が未舗装な場合はバスに代えてトラックを使うという。

 ラオスにはまだ産業の広がりが無いので、原材料はタイなどから輸入している。また組み立てが終わった製品は、やはり外国へ出荷している。このためには勿論トラックや鉄道を使う。


「移動の自由」が人権

 人間の基本的人権として自由がある。その中の大事な1つが経済的自由である。人がそれぞれの能力を活かして経済活動を営なむことは、人が人らしく活きるために必要な権利である。

 今回改めて気付いたことは、経済的自由は、実は「移動の自由」に支えられている、ということだ。それは通勤の自由であり物流の自由である。この移動の自由があるからこそ、ラオスは手先の器用な若者を武器にして、世界の製造業ネットワークに参加できる。移動の自由は、国際的な分業も可能にしている。分業は経済成長の源泉である。分業することで、人々はそれぞれが最も得意とする仕事に従事できるからである。


クルマが移動手段を提供

 ラオスの将来は、移動の自由をどこまで確保できるかということに掛かっている。内陸国が発展するためには自動車が欠かせない。自動車業界の使命は、安く信頼できる移動手段を提供し続けることにある。

 もちろん、技術だけの問題ではない。国境での出入国手続きを簡素化したり、関税を引き下げたりすることで、制度面での移動のコストを下げることも重要だ。これは政府の使命である。


安くて信頼のモビリティが

 いま自動車業界には、EVや自動運転等、様々な波が押し寄せている。地球温暖化や大気汚染等への対策も求められている。だがその一方で、安く信頼できるモビリティを確保するという原点こそが、この世界で最も貧しい人々にとっては、相変わらず最重要な課題である。新しいテクノロジーを活用して、これを達成することは出来るだろうか。安く信頼できるモビリティが実現するならば、それだけラオスの人々は豊かになれる。

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