デュポン・サークル便り(5月15日)

 日本では、緊急事態宣言が早くも39県で予定を2週間以上前倒しして解除されました。残る8都道府県についても5月21日に再び判断するとのこと。外出自粛規制緩和とは程遠い毎日を送っているバージニア州からみると「本当に大丈夫なんだろうか?」と心配になります。いわゆる「日本型」対応が第2次感染爆発を起こさないことを祈るのみです。

 こちらアメリカでは、トランプ政権のコロナ対策の軸足が、段階的規制緩和に向けたガイドラインである「オープニング・アップ・アメリカ・アゲイン」に完全に移る一方で、おひざ元のワシントンDC、バージニア州北部の各郡、メリーランド州の各郡はまだまだ段階的規制緩和に慎重です。ワシントンDCでは当初、5月15日が期限だったstay-at-home行政命令が6月7日まで延長されました。バージニア州では5月15日から州のほとんどの場所で段階的規制緩和の第1段階が始まるものの、ワシントンDCと隣接するバージニア州北部では5月29日まで現在の規制が維持されることが決まりました。しかも、この話題に関してはトランプ政権の「顔」となったアンソニー・ファウチ博士が、5月12日に連邦議会上院で行われたコロナウイルス対策に関する公聴会で、「コロナウイルスワクチンの開発は、今年の秋に学校が新年度を迎える前には間に合わない」との見解を示したことで再び不安が広がっており、それに伴い、トランプ政権の経済活動再開に軸足を移した対応に対する批判も再び出てきています。

 さらに、先週末以降、ホワイトハウスのスタッフの間でもコロナウイルス感染が広がっていることが次々と発覚。5月7日にトランプ大統領の執事(valet)の一人がコロナウイルス検査で陽性になったことが判明したかと思えば、その翌日の5月8日にはペンス副大統領の報道官であるケイティ・ミラー女史がコロナウイルスに感染したことが明らかになりました。このような事態を受けて、トランプ大統領は「毎日、コロナウイルス検査を受ける」と宣言。ですが、そもそもマスク着用に後ろ向きだったトランプ大統領やペンス副大統領への風当たりが強かったところで出てきたのがこのニュースです。当然、トランプ大統領、ペンス副大統領への風当たりはさらに強くなっています。

 そんな中、先週のマイケル・フリン元国家安全保障担当大統領補佐官の訴追見送りに引き続き、今週も2016年大統領選挙へのロシア政府による介入疑惑について仰天ニュースがありました。2016年大統領選挙でトランプ大統領の選挙陣営の責任者だったポール・マナフォート氏は、本疑惑に関する証拠隠滅やFBI捜査官の取り調べに対して虚偽の証言を行ったことなどで懲役7年の判決を受け服役中だったのですが、71歳という高齢であることに加え、コロナウイルスに感染すると重症化しやすい既住症があることを理由に5月13日の出所が許可されたのです。今後は残っている懲役期間を「自宅軟禁」で過ごすのですが、それでも刑務所で刑期を務めるのとは天と地の差。「彼、マジで得したよね」的な論調がメディアではすでに漂っています。

 望ましくないこととはいえ、ワシントンではコロナウイルス対策はすっかり「政争の具」と化した感があります。これからは大統領選に向けて、ますますこの流れは強くなるでしょう。ということは、これと同時に、情報操作が行われる可能性も高くなるということ。ソーシャルメディアやインターネットで情報過多になる今日この頃ですが、冷静さを失わないようにしたいものです。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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