デュポン・サークル便り(5月1日)

 日本では、全国の都道府県を対象に発令された緊急事態宣言が当初の期限の5月6日を越えて続く可能性が濃厚になってきましたね。日本の友人から「今年のGW(ゴールデン・ウィーク)はGWでも『我慢ウィーク』です」というメールが来てはっとしました。例年、この季節は国会休会中のため、ワシントンにはわんさかと国会議員の訪米団が押し寄せるのですが、今年はそれもなく、静かなGWになります。

 アメリカでは、4月30日に迎える、連邦政府によるソーシャル・ディスタンシングなどに関するガイドラインをトランプ大統領が延長するかどうかが注目されていました。ところが、蓋を開けてみると、大きな発表もないままに、期限の4月30日は過ぎていき、少なくとも、連邦政府が出していたガイドラインは静かに期限切れとなりました。これで、トランプ政権は今後、4月16日にコロナウイルス対策ブリーフィングで発表された段階的規制緩和に向けたガイドラインの「オープニング・アップ・アメリカ・アゲイン」にコロナ対策の軸足を戻すことがほぼ確実となりました。

 一方、先週から段階的に外出自粛令の緩和を始めた州でコロナウイルス患者が再び爆発的に増えないという保証はなく、段階的緩和がスムーズにいくかどうかはまだまだ不透明です。すでに、カリフォルニア州では、外出禁止令が続く中、例外的に公共のビーチや州立公園を再びオープンにしたところ、どっと人が押し寄せたたため、再びビーチも公園も閉鎖を余儀なくされるなど、段階的緩和を進めるにあたっては、様々な問題が出てきそうな予感がします。トランプ大統領の思惑通りにアメリカ全体で経済・社会活動が再開される保証はどこにもありません。

 アメリカがまだまだコロナウイルスで緊張しているなか、このままだとコロナウイルスがあっても待ったなしでやってくるのが11月の大統領・議会選挙です。今年は大統領選挙も行われるため、連邦議会選挙の方はそれほど関心を集めていませんが、実は、今年の上院議員選挙は、共和党が多数党の座を維持できるかどうかを占う上で極めて重要な選挙なのです。

 仮に選挙後、民主党が上院でも過半数を握り、多数党の座に返り咲く場合、トランプ大統領が再選されても、2期目の政権運営は多難なものになります。また、バイデン政権が誕生した場合には、大統領府、上下両院とも民主党のコントロール下に置かれることになります。どちらにしても、議会共和党にとっては肩身の狭いシナリオになるわけですが、なんと、その上院議員選挙で、共和党が過半数を維持できない可能性が、コロナウイルス対応が長期化するにつれてどんどん高くなってきています。

 日本でも、「政治評論家」の肩書を持つ方はかなりの数いらっしゃいます。アメリカでも、選挙動向分析などをする、いわゆる「政治アナリスト」は星の数ほどいますが、「この人がこう言うなら」という信頼感を以って分析が読まれる人はごくごく少数です。そんな限られた政治アナリストの一人であるチャーリー・クック氏の最新の分析によると、アラバマ州、ミシガン州、アリゾナ州、コロラド州、メイン州、ノースカロライナ州、ジョージア州、アイオワ州、モンタナ州で民主党が共和党の現職から議席を奪う可能性がこの1か月で俄然高くなったということです。その原因はただ一つ。トランプ大統領の記者ブリーフィングでの言動があまりに稚拙過ぎて、大統領を弁護し続ける「共和党」離れが議会選挙レベルで顕著になっているということです。そんな共和党議員の心配はどこ吹く風、今週はペンス大統領が、コロナウイルス患者を治療する医療現場にサプライズ視察に出かけたのは良いのですが、その際トランプ政権が推奨している「マスク着用」をペンス副大統領が励行していなかったことで集中砲火を浴びました。さらに、中国政府がコロナウイルス拡散を防ぐ最大限の努力をしなかったとして、トランプ政権は中国に対し経済制裁などを含めた強硬な措置を検討しているなどと報道されるなど、まだまだトランプ政権のコロナ対策をめぐるエピソードの話題には事欠きません。

 そのような中、民主党側は着々とバイデン前副大統領を軸に、本選挙を睨んだ動きが進んでいます。すでにヒラリー・クリントン元国務長官はバイデン氏推薦を発表しましたし、4月30日にバイデン陣営は副大統領を選ぶ委員会を発足させると発表しました。ドッド上院議員(コネチカット州選出)、ロチェスター下院議員(デラウエア州選出)、ガルチェッティ・ロサンゼルス市長、ホーガン元ホワイトハウス法律顧問(オバマ政権期の副大統領法律顧問)の男女2名ずつ計4名のメンバーで同委員会が正式に発足したことにより、これまでは噂の範囲内でしかなかった副大統領候補選びが一気に加速することになります。バーニー・サンダース上院議員が大統領選挙からの撤退を宣言、バイデン前副大統領支持を表明して以降、急速に候補者一本化の動きが進んできた民主党側の動きを見て、焦りが出てきたのでしょうか、最近では、トランプ大統領がトランプ陣営の選挙対策本部長に怒りを爆発させた、といった記事も見られるようになりました。

 コロナに選挙、在宅勤務が続くワシントンでも、話題だけは事欠きません。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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