デュポン・サークル便り(3月13日)

 新型コロナウイルスの影響がいよいよ本格化してきました。連日、全米各地で新しい症例が報告されるなか、10日(火)に全米サッカーリーグ(MLS)が30日間すべての試合を中止すると決めました。さらに11日(水)には、全米バスケット協会(NBA)が、オクラホマシティでのオクラホマシティ・サンダーとユタ・ジャズの試合開始直前、ユタ・ジャズ所属選手のコロナウイルス感染確認を受けて同試合を中止、その後ほどなくして今季のすべての試合を無期限で中止する旨決定しました。また、NBA選手で感染が報告された選手が2名ともユタ・ジャズ所属であったことから、ユタ・ジャズと過去14日間に試合をしたトロント・ラプターズ、ワシントン・ウィザーズ、オクラホマシティ・サンダーの3チーム全選手とスタッフ全員に対し今後14日間、自己隔離措置をとるよう推奨しました。同じく11日には俳優のトム・ハンクス夫妻が、滞在中のオーストラリアでコロナウイルスに感染していることを公表しました。

 先々週までトランプ大統領は、コロナウイルスについて「大したことはない」の一点張りでした。しかし、先週には自分が会ったり選挙集会で同席した共和党下院議員がコロナウイルス保菌者であることが判明し、もはや他人事のような対応ができなくなってきました。3月11日(水)の夜にはトランプ大統領がようやくコロナウイルスについて大統領執務室から演説を行いましたが、この中で同大統領は

 • 既に米国入国禁止措置の対象となっていた中国及びイランからの渡航に加え、今後30日間、
   イギリスを除く欧州諸国からの米国入国を禁止(米国民・永住権保持者はこの規制の対象外)
 • コロナウイルスの検査にかかる費用の個人負担分を撤廃
 • コロナウイルスの拡散により経営に影響が出ている企業への補助金


などの措置を発表しましたが、特に、イギリスを除く欧州からの米国入国禁止措置については「これだけ国内で感染が拡大している今、全く無意味」などと酷評されています。また、この演説でトランプ大統領は「大部分の国民にとって、コロナウイルスは低リスク」と述べましたが、これは同日議会でアンソニー・ファウチ全米衛生研究所(NIH)全米アレルギー・感染症研究所長が「通常のインフルエンザと比べ、コロナウイルスの致死率は10倍」と証言した内容と矛盾するなど、トランプ大統領の演説は、「ナルシスト的で事実に基づかない」と酷評されているのです。

 コロナウイルスは大統領選挙にも影響を与えています。コロナウイルス拡散により株式市場の暴落などの影響が出ていますが、これは「米国経済を活性化させた」ことを前面に出して再選運動を進めるトランプ大統領にとっては頭痛の種でしょう。また、コロナウイルス保菌者との接触による感染拡散が懸念される中、選挙活動に欠かせない選挙集会や有権者とのふれあいなどのイベントも開催しにくくなっています。更に、前述の通り、トランプ大統領と集会で同席した共和党下院議員2名がコロナウイルスに感染したことが明らかになっているにも拘らず、トランプ大統領自身が検査を受けることを拒んでいることも問題になっています。シークレットサービスにとっては「保菌者が選挙集会でトランプ大統領と握手して、万一大統領がコロナウイルスに感染したら」といった悩ましい問題がありますし、大統領側近も「もし大統領が保菌者となり、選挙集会での握手で有権者に感染させたら」という懸念があると言われています。

 そんな中、先週2日のスーパーチューズデー以降、開票が続いていたカリフォルニア州ではようやく開票が終わり、事前予想どおり、バーニー・サンダース上院議員の同州予備選勝利が確実なものとなりました。とはいえ、3月10日(火)に行われた予備選(スーパーチューズデー2)では、すでにミシガン、ミズーリ、ミシシッピー、アイダホ各州でジョー・バイデン前副大統領の勝利が確定しています。これに対し、サンダース上院議員の勝利が確定しているのはノースダコタ州だけで、開票が続くワシントン州でも、両者は僅差となっています。つまり、サンダースのカリフォルニア州での勝利をもってしてもバイデンの優勢は動かず、いよいよバイデン前副大統領が「本命」となる可能性が強くなってきました。さらに、先週大統領選撤退を発表した左派のウォーレン上院議員が同じ左派のサンダース上院議員を推薦しない可能性があるとの観測も流れ始めました。サンダース議員本人は「大統領選撤退はない」とまだ頑張っていますが、民主党支持者の中には、すでに「トランプVSバイデン」を念頭においたテレビやラジオ広告の構想を練り始めた団体もあると報じられています。数週間前には、党大会直前まで決着しそうにないとすらいわれた民主党側の大統領予備選が、今後一気に終焉を迎えそうな雰囲気すら漂いはじめました。

 つくづく、選挙は水物だと思います。これまでテフロンのような打たれ強さを見せていたトランプ大統領の弱さが今回のコロナウイルス対応で明らかになり始めたことを考えると、今年の大統領選挙は予想以上に接戦となり、4年前以上に面白くなるかもしれません。


(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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