デュポン・サークル便り(3月2日)

 コロナウイルスの影響が、アメリカでもジワジワと出始めています。すでにワシントン州でコロナウイルスによる死者2名が確認されていますが、2月29日にトランプ大統領は記者会見でイタリアや韓国への渡航禁止やイランからの入国拒否などの措置を発表しました。このような政府の動きに伴ってアメリカの航空会社も軒並み、アジア行きの便をキャンセルするか減便する措置を取り始めています。週末はブリュッセルに会議で出張していたのですが、出張に使用したユナイテッド航空のウェブサイトでオンラインチェックインをした際、すでに「過去14日間に中国大陸に渡航していましたか」という質問事項が手続きの中に含まれていました。地元のスーパーでも、携帯用の消毒液は軒並み売り切れです。日本はまだ渡航禁止勧告や入国拒否の対象にはなっていませんが、この1,2週間が山場になりそうな気配です。

 コロナウイルスで国内が俄然あわただしくなる中、大統領選挙でも先週は週末にかけて大きな動きがありました。アイオワ州やネバダ州の党員集会で低迷、ニューハンプシャー州の予備選でも票が伸び悩み、予備選にとどまれるかどうかという崖っぷちに立たされていたジョー・バイデン前副大統領が、2月29日にサウスカロライナ州で行われた予備選でなんと、48.4%の得票率を獲得、2位のバーニー・サンダース上院議員を30ポイント近く引き離す、ぶっちぎりの圧勝をしたことで俄然、息を吹き返したのです。その一方で、アイオワ州党員集会、続くニューハンプシャー州予備選で立て続けに善戦、一時はサンダース上院議員と並んで予備選の2トップとなっていたピート・ブディジェッジ氏が、速くも3月1日夜に、大統領選から撤退することを発表しました。

 ブディジェッジ氏のこの決断は、「え、もう辞めちゃうの?」と驚く反応がある一方で、将来の自分の政治家としてのキャリアを考え、かつ、民主党が目指す「11月の本選でトランプ大統領に勝利する」という目標を考えると、今の時点で潔く予備選撤退を決めたのは賢明な判断だったのでは、と評価する声も多いようです。その一方で、これまで行われたすべての党員集会と予備選でぱっとした成績が残せていないにも拘わらず、予備選から撤退する気配を見せないエリザベス・ウォーレン上院議員やエイミー・クロウブシャー上院議員への風当たりが少しずつ強くなってきました。

 大統領選予備選挙は早くも3月3日(火)に次の山場を迎えます。「スーパーチューズデー」と呼ばれるこの日は、大票田のカリフォルニア州やテキサス州などを含む合計14州で予備選が行われますが、この日の結果次第で、これまでなんとか頑張って選挙戦を続けてきた大統領候補が予備選からの撤退を余儀なくされ、一気に民主党の中で候補が絞られてくる可能性が高くなります。焦点はサウスカロライナ州の予備選で突如息を吹き返したバイデン前副大統領がどれだけの結果を残せるか、サンダース上院議員が既に優勢が伝えられるカリフォルニア州以外でどれだけの結果を出せるか、また、これまでもっぱらテレビやラジオの広告に頼ってきたツケが出て、過去2回参加した大統領候補討論会では全く良いところがないマイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長がそれなりの成績を残せるのかどうか、といったあたりになるでしょう。

 こうした中、俄然メディアが注目し始めたのが、全国でいまだに絶大な人気を誇るバラク・オバマ前大統領が、いったいどの候補者を支持するのかということ。1日付のCNN報道などによれば、オバマ大統領は予備選の時点で特定の候補者への支持を表明することには消極的だということで、むしろ、いまだに高い人気を持つ自分の立場を最大限活用して、予備選で勝ち上がってきた候補を民主党一丸となって支持するように活動することを望んでいるとか。とはいえ、2016年大統領選では、当時現職大統領だったオバマ氏が党の結束を党大会で呼びかけたにも関わらず、最後までサンダース上院議員支持者の間でヒラリー・クリントン元国務長官に対する感情的しこりが残ったと言われています。さて、オバマ前大統領は今回、「反トランプ」で迷走する民主党を再び結束させることができるでしょうか。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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