外交・安保カレンダー(2月17日-23日)

 今週もニュースは朝から晩まで新型コロナウイルス関連ばかり。17日月曜日の「ひるおび」では、感染症専門家でもないのに1時間40分も生出演する羽目になった、というか、栄誉を頂いた。先週ハワイから帰国したが、新型ウイルスに関する国民の関心が如何に高いかを改めて思い知った。お蔭さまで、耳学問だが多くのことを学んだ。

 要するに、日本では新型ウイルス感染が新段階に入ったということ。水際作戦は(当然ながら)失敗、今は国内感染が日常化し如何に重篤者の死亡数を減らすかに重点が移っているようだ。ということは、日本でも、中国ほどではないにせよ、社会経済に与える影響が顕在化していくはず。我々も、もっと冷静にならないと・・・・。

 新型ウイルスが中国内政にどの程度悪影響を与えているかについては議論が分かれる。先週中国専門家チームのトップ鐘南山氏が、感染は「2月中頃か下旬に恐らくピークに達する可能性がある」と述べたことに筆者は注目した。ロイターに中国の専門家が公式に述べた以上、「今月中」に「ピークに達する」ことに決まった、と考える。

 そう決まったら、中国政府はそのナラティブ(物語、語り、説明)に従って対外説明を行うはずだ。それが事実かどうかは、この際問題ではない。勿論、鐘南山氏は科学者だから言い回しは慎重だが、筆者は同氏の次の発言が特に気になっている。従来流行のピークは「2月より早い」と予測していた鐘氏の今回の発言は概ね次の通りだ。

(ロイターによれば、今回の予測はモデリングやここ数日の動向、政府の措置に基づく、と前置きした上で)「今月の半ばか下旬に恐らくピークを迎える可能性がある。その後はやや横ばいのような状態になり、それから収まるだろう」、「4月ごろに終息すると望んでいる。」でも、これって、ピーク状態が3月中は続くということではないのかい?

 要するに、中国も流行が3月中に収まりそうもないことは分かっているが、現状をダラダラと続けることもできないので、ここは腹を決めたのではないか。欧米の専門家が言うように今後初夏まで混乱が続いたら、中国の経済と政治は「もたない」からだ。今後も中国政府の公表内容は、こうした観点から批判的に読む必要があるだろう。

 続いて、習近平国家主席の対応ぶりだが、これについてはFinancial Timesが興味深い記事を掲載した。「中国共産党の理論誌『求是』によると、習氏は1月7日に中国の最高意思決定機関である共産党政治局常務委員会の会議でウイルス対策を指示したという。国民が感染拡大の深刻さを伝えられる13日前のことだ」そうだ。

 これが事実なら、従来報じられた時期よりも2週間近く前に、習主席は新型コロナウイルスの感染拡大防止を「指示」していたということになるが、どう考えてもそれはおかしいだろう。本当に「指示」していたなら何故それを公表しないのか。これも、上述の鐘南山氏のコメントと同様、新たなナラティブに基づく情報公開(操作)ということだ。

 「感染が広がった責任は地方政府にある」との従来のナラティブは事実の公開(漏洩)でもう通用しなくなった。されば、「いやいや、共産党中央は1月初旬に既に指示を出していたが、地方政府がそれに従わなかったのだ」という説明に切り替えつつあるということ。でも、これって、日本語では「泥縄」というやつじゃないのかい?

 同主席の国賓訪日の扱いは自然体で良いだろう。少なくとも招待した日本から断る必要はない。今回訪日が実現するなら、是が非でも成功させたい中国は従来以上に「下手に出る」はず。中国の国際的信用を守るため、仮にリップサービスでも、これまで言いたくなかったことも含め、対外的に言わざるを得なくなる可能性が高いからだ。

 仮に、新型肺炎対策を理由に中国から断ってくるならば、それはそれで、当面放っておけば良い。断ったのは中国であって、日本ではないのだから。日本は従来同様、常に優位な立場から、今後とも中国に政策変更を働き掛けていけばよいだけだ。

 米国について一言。筆者はこれまで「もしトランプ政権が二期続いたら、北アメリカはカナダから始まる」という冗談を使ってきたが、その冗談が今や現実となりつつある。先週末千人を超える米司法省元関係者が公開書簡で、大統領の悪名高き盟友の偽証をめぐる裁判で同省求刑内容に干渉したと批判、司法長官に辞任を求めたからだ。

 それにしても米国内政はどうなっていくのか心配だ。焦点は相変わらず米大統領選だが、今週は22日にネバダ州で党員集会、来週29日にはサウスカロライナ州で党員集会・予備選がある。「団栗の背比べ」状態だが、民主党を決定的に分断しかねないブルームバーグ元NY市長が支持率を上げつつある。トランプ氏の高笑いは続く。

〇アジア
 中国といえば、新疆ウイグル自治区の「職業訓練施設」で「教育」される対象は、反政府的言動だけでなく、単に「長い髭を伸ばす」、「頻繁な国際電話」、「パスポート所持」、「子沢山」である者も含まれる、などとCNNが報じている。確か「一人っ子」政策は放棄されたのではなかったのか。中国の問題は新型ウイルスだけではないのだ。

〇欧州・ロシア
 1月16日以来湖北省から旅行中の80歳中国人男性が新型コロナウイルスに感染、パリで治療を受けていたが死亡したそうだ。パリといえば、マクロン大統領推薦のパリ市長候補が「猥褻」動画を暴露され、急遽市長候補を差し替えたという。おうおう、フランスはこの手のスキャンダルには寛容ではなかったのかね。政治は非情なゲームだ。

〇中東
 アフガニスタンでは、米国がターリバーンと「暴力行為を7日間削減する」ことで合意したというのだが、肝心のアフガニスタン大統領選の結果は昨年9月末に行われたのに未だ確定していない。トランプ政権が大統領選挙対策で、前のめりで「米軍撤退」を言えば言うほど、ターリバーンは足元を見る。歴史は繰り返されるだけなのか。
 もう一つ気になるのはシリア内戦の状況だ。トルコからの報道では、「10日にイドリブ県のタフタナーズ軍事基地でトルコ軍車列が攻撃を受けた事件は、シリア軍地上部隊の砲撃ではなく、ロシア軍戦闘機の爆撃によるものだった」そうだ。おいおい、トルコの外交政策は支離滅裂なのか、それとも、シリアそのものが支離滅裂なのか。

〇南北アメリカ
 米国といえば、検疫が長期化していた横浜港の巨大客船からようやく数百人の米国人等が下船・帰国を始めた。米国メディアは、再び米国で二週間隔離されることになった米国人乗客の不満を報じているが、現時点で日本政府を厳しく批判する声は聞かれない。不幸中の幸いなのか。

〇インド亜大陸
 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


3日-22日 APEC第1回高級実務者会合
9日-18日 対日理解促進交流JENESYS2019・「日ASEAN学生会議」の実施
10日-3月13日「国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(アジア及び同周辺地域)」実施(ハノイ)
11日-19日 対日理解促進交流JENESYS・ベトナムの若手行政官らが訪日
12日-21日 対日理解促進交流JENESYS・韓国高校生らが訪日
13日-17日 鈴木外務副大臣がブラジル訪問
15日-21日 日豪若手政治家交流プログラムでオーストラリア若手政治家らが訪日
15日-22日 中谷外務大臣政務官がモロッコ、セネガルを訪問
16日-19日 キャサリン・ポラード国連管理戦略・政策・コンプライアンス局長の訪日
17日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
17日 EU外相理事会(ブリュッセル)
17日 ロシア1月鉱工業生産指数発表
17日 大統領の日(ワシントン誕生日)(ニューヨーク市場は全て休場)
17日 「山田駐ブラジル大使による任国治安情勢講演会」を開催(外務本省)
17日 長征2C(遥感30号-6 A, B, C)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
17日-18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17日-20日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
17日-21日 人権理事会諮問委員会 第24回会合(ジュネーブ)
17日-22日 第7回IAEE アジア・オセアニア会議(オークランド)
17日-22日 ジャヤトマ・ウィクラマナヤケ・ユース担当国連事務総長特使の訪日
17日-23日 対日理解促進交流JENESYS・ベトナム農業農村開発省の若手職員らが来日
17日-3月6日 経済的、社会的及び文化的権利委員会 第67回会合(ニューヨーク)
17日-3月6日 国際海底機構 第26回会合 part1(ナイロビ)
17日-3月13日 平和維持活動特別委員会及びワーキンググループ 実質会期(ニューヨーク)
18日 国連軍縮委員会 organizational session(ニューヨーク)
18日 UNEP 常駐代表委員会 第149回会合(ナイロビ)
18日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
18日-21日 令和元年度中南米大使会議の開催(東京)
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
19日 米民主党の大統領選候補者討論会(ネバダ州)
19日 アリアン5(JCSAT17、GEO-KOMPSAT-2B)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
20日 Special European Council(ブリュッセル)
20日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(教育)(ブリュッセル)
20日 FOMC議事録(FRB)
20日 インド2019年第3四半期GDP発表
20日 中国ASEANの新型肺炎特別外相会議(ビエンチャン)
20日 ソユーズ2.1a(通信衛星Meridian-M9)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
20日-3月1日 ベルリン映画祭
21日 EU 1月CPI発表
21日 ロシア1月雇用統計発表
21日 イラン国会議員選挙
21日-23日 パキスタン・オートパーツ・ショー(PAPS)(カラチ)
21日-24日 米トランプ大統領がインドを訪問
22日 民主党党員集会(ネバダ州)
22日 トーゴ大統領選挙
22日-23日 第1回G20財務相・中央銀行総裁会合(サウジアラビア・リヤド)
23日 ドイツ・ハンブルク州議会選挙


【来週の予定】
24日-25日 米・トランプ大統領がインドを訪問
24日-26日 第76回投資調整委員会(76th Coordinating Committee on Investment)(76 CCI)(ミャンマー)
24日-28日 WFP執行理事会 First regular session(ローマ)
24日-28日 国連開発政策委員会 第22回会合(ニューヨーク)
24日-3月20日 国連人権理事会(ジュネーブ)
25日 ロシア2019年貿易統計発表
25日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
25日 メキシコ2019年第4四半期GDP発表
25日 米民主党の大統領選候補者討論会(サウスカロライナ州)
25日 快舟十一号(吉林一号高分02A、中星一号など)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
26日 メキシコ2019年12月小売・卸売販売指数発表
27日 米国第4四半期および2019年年間GDP発表(改定値)
27日 EU競争担当相理事会(地内市場・産業)(ブリュッセル)
27日 メキシコ1月雇用統計発表
27日-28日 EU競争担当相理事会(研究)(ブリュッセル)
28日 米・個人消費支出1月物価指数(商務省)
28日 メキシコ1月貿易統計発表
28日 ブラジル1月全国家計サンプル調査発表
28日 GSLV(GISAT 1)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
29日 民主党大統領予備選挙(サウスカロライナ州)
29日 スロバキア議会選挙
1日 ギニア国民議会選
1日 タジキスタン下院選挙
1日 ウルグアイ新政権発足


(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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