外交・安保カレンダー(1月27日-2月2日)

 前回簡単に触れた中国発の「新型肺炎」が今週遂にoutbreakの域に達した。武漢市在住邦人の「救出」のため、日本政府は民間チャーター機派遣を発表した。当然の措置だが、実現は容易ではなかっただろう。国内に住む外国人の保護は第一義的に受け入れ国の責任だからだ。今や中国も面子など構っていられない、ということか。

 先週も書いた通り、2002-3年に広東省からSARSが大流行した際、筆者は北京在勤中だった。思った通り、今回も中国政府の対応は「当初患者数を過少報告し、その後爆発的増大に至る」というパターンを踏襲した。この種のウイルスの完全封じ込めが不可能なことは十分理解する。それにしても、中国の対応はあまりにお粗末なのだ。

 このことを今週のJapanTimesと産経新聞の和英コラムに書いた。英語版の題はWhat goes up must come down、日本語版は「驕る中国は久しからず」とした。英語版は「スピニングホイール」という筆者お気に入りの曲から取った。意味は「紬車」、人生を「上に登れば必ず下に降りる」糸車に例えた含蓄の歌である。

 中国はSARSの教訓を本当に学んだのか。なぜ今回も事実の開示が遅れたのか。中国の対外関係はどうなるか。今週はこれらについて言いたいことを言わせてもらった。筆者のSARSに関する教訓は、①中国の公式公表数は十倍にする、②官僚は責任を回避する、③彼らは何でも食べる、④被害より面子が大事の4点である。

 先にも述べた通り、新型ウイルスを完全に封じ込めるのは難しい。だから中国の医療関係者の献身的な努力は評価する。しかし、中国政府はいつまでこんなことを繰り返すのか。世界第二の経済を誇り、米国に追い付き追い越そうとする中国だが、決して驕ってはいけない。世の中はWhat goes up must come downだからである。

 もう一つ気になるニュースがある。The New York Timesなどによるとボルトン前大統領補佐官は「ウクライナ疑惑」について3月に出版する暴露本で、「トランプ氏は、ウクライナへの軍事支援の凍結解除を、バイデン前米副大統領への調査の取引条件にしていた」と書いているそうだ。おいおい、何をやっているんだか!

 トランプ氏側の主張を真っ向から否定する内容だが、どうも筆者は気に入らない。あのボルトンも人の子か、自著が売れるよう「情報を小出し」にしているとしか思えないからだ。本当に信念があるなら、堂々と米議会で証言すればよい。それをせず、著書の発売日3月17日を見据え「話題作り」に専念する姿は醜態としか言いようがない。

〇アジア
 日本のマスコミでは中国発の新型肺炎関連ニュース以外に目ぼしいものはないが、一つ気になったのが韓国発の小さな記事だった。文在寅政権による「検察改革」と称した検察の組織改編が強引ともいえる形で進められているというのだ。1月2日に就任した新法相は早速8日に32人の検察幹部を交代させたという。
 更に1月23日には2月3日付で759人もの検事を一斉に異動させるそうだ。これにより、現検事総長の側近の多くが左遷されるらしい。文政権は本気で検察と戦うようだが、これで彼の政治的将来は逆に危うくなるのではないか。退任後の大統領の末路というジンクスが繰り返されないことの方が韓国のためになると思うのだが・・・。

〇欧州・ロシア
 恐らく欧州にとって今週最大のニュースはアウシュビッツ強制収容所解放75年周年だろう。27日には追悼式典が開かれたが、多くの欧州首脳が参加を見送ったという。足元で広がる極右・反ユダヤ主義に恐れをなしたか、それとも単に多忙だったのか。理由は不明だが、欧州の人種差別の歴史が風化しつつあることだけは間違いない。

〇中東
 先週末、バグダッドの米国大使館にロケット弾が少なくとも3発着弾し、負傷者が出たそうだ。1発は大使館のカフェテリア、残り2発は別の場所に落ちたというが、それがどうした?と筆者は思う。今更こんなことを言っても仕方がないが、筆者がバグダッドのグリーンゾーン内にいた2004年冬春、ロケット弾攻撃なんて日常茶飯事だった。
 イラクの外国人嫌いは有名、米国大使館がこれまで静かだったのが不思議なくらいだ。勿論、イラン人に対してもイラク人は良い感情を持っていないはず。米大使館を狙っているのは親イランのシーア派ミリシアだろう。米イラン間の非正規戦、代理戦争が再開されただけの話。これからもこの種の戦争は米軍がイラクを撤退するまで続く。

〇南北アメリカ
 今週もCNNはbreaking newsとして米大統領弾劾裁判を連日報じている。ちょっと待てよ、一体このニュースのどこが「速報(breaking news)」なのか。我が家にはFOX Newsチャンネルがないので、今はネットで見ているが、Foxの方がまだバランスが取れていると思う。皆そんなにトランプが嫌いなのか?理解できないではないが。

〇インド亜大陸
 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


20日-28日 対日理解促進交流2019・インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、ネパール、モルディブ及びアフガニスタンの高校生及び大学生らが訪日
20日-2月2日 テニス全豪オープン(メルボルン)
21日-29日 対日理解促進交流2019・ASEAN招へい第17陣(ブルネイ高校生・大学生)訪日
21日-29日 対日理解促進交流2019・ASEAN招へい第17陣(ミャンマーの柔道若手競技経験者)が訪日
22日-29日 MIRAI2019 第4グループ「中央アジア・コーカサス地域」若手法律実務家を招へい
23日-31日 対日理解促進交流2019・ASEAN招へい第19陣(カンボジアの若手政治関係者)が訪日
24日-27日 ブラジル・ボルソナーロ大統領がインドを訪問
24日-30日 中国春節休暇
26日-2月1日 令和元年度中央アジア実務者招へい(観光分野)の実施
27日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
27日 メキシコ2019年11月小売・卸売販売指数発表
27日 アウシュビッツ強制収容所解放75年式典(ポーランド南部)
27日 H-IIAロケット41号機(情報収集衛星光学7号機)打ち上げ(種子島宇宙センター大型ロケット発射場)
27日 ファルコン9(スペースX社スターリンク衛星4 60機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
27日-28日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
27日-30日 アラブ・ヘルス2020(ドバイ)
28日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
28日 メキシコ2019年12月貿易統計発表
28日 イスラエル・ネタニヤフ首相と野党指導者ガッツ元軍参謀総長がトランプ米大統領と面会(ワシントン)
28日-29日 米国FOMC
29日 EU欧州議会、英国のEU離脱案を承認採決
29日-30日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
29日-31日 国連軍縮諮問委員会 第73回会合(ジュネーブ)
30日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
30日 EU2019年12月失業率発表
30日 米国2019年第4四半期および2019年年間GDP発表(速報値)
31日 EU2019年第四半期GDP速報値(EU統計局)
31日 米国2019年12月PCE物価指数(商務省)
31日 ブラジル2019年12月鉱工業生産指数発表
31日 ブラジル2019年12月全国家計サンプル調査発表
31日午後11時 英国がEUを離脱
31日「羽田駐フィリピン大使及び石井駐インドネシア大使による任国治安情勢講演会」開催
2月1日 インド2020年度政府予算案発表
1日 EU英国間の離脱協定が発効した場合、英国のEU離脱移行期間開始
2日 京都市長選


【来週の予定】
3日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
3日 米大統領選アイオワ州党員集会(アイオワ州)
3日-6日 UNDP/UNFPA/UNOPS執行理事会 First regular session(ニューヨーク)
3日-7日 国際麻薬統制委員会 第127回会合(ウィーン)
3日-22日 APEC第1回高級実務者会合
4日 米国大統領一般教書演説
4日 ブラジル2019年12月鉱工業生産指数発表
4日-5日 ブラジル中央銀行、Copom
5日 米国2019年12月貿易統計発表
5日 ソユーズ2.1b(ロシア航法測位衛星GLONASS-M 760)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
6日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
6日 アトラスV(ESAの太陽観測衛星Solar Orbiter)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
6日-7日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する(TRIPS)協定理事会(スイス・ジュネーブ)
7日 米国1月雇用統計発表
7日 中国1月貿易統計
7日 メキシコ1月CPI発表
7日 ロシア中央銀行理事会
7日 米民主党の大統領選候補者討論会(ニューハンプシャー州)
8日 アイルランド下院議員選
8日 ソユーズ2.1b(ワンウェブ衛星#2 30機)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
9日 アゼルバイジャン早期議会選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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