デュポン・サークル便り(1月24日)

 ワシントンの寒暖の激しさは、1月20日号でもお伝えしたところですが、とにかく先週末から今週の中盤までは極寒でした。なんといっても一日の最高気温がゼロ℃すれすれです。最低気温に至っては、一番寒かった22日(水)はマイナス7℃。それでも、我が息子は「学校の中は暖かい」と、冬用ジャケットの下は半袖Tシャツのみ。こういうところにも大量消費社会のアメリカを感じてしまうあたりは、渡米して27年とはいえ、まだまだ私もアメリカになじみ切っていないのでしょうか。

 そして極寒のワシントンで、いよいよ22日(水)、トランプ大統領の弾劾裁判が「検事」役の下院弾劾裁判マネージャーチームのリーダーのアダム・シフ下院情報委員長の冒頭陳述によって幕を開けました。

 1月20日号で民主党側の「検事」チームについてはご紹介しましたが、トランプ大統領の弁護団をまだご紹介できていませんでした。トランプ大統領を弾劾裁判で弁護するという重責を担う弁護団は以下の10名です。

 (1)パット・シッポローネ(ホワイトハウス法律顧問)
 (2)ジェイ・セクロウ(トランプ大統領の個人弁護士、ロバート・ムラー独立検査官による捜査でトランプ大統領を弁護)
 (3)アラン・ダーショウィッツ(ハーバード大学教授、専門は憲法、元フットボール選手で映画俳優のO・J・シンプソン氏の妻殺害疑惑をめぐる裁判で同氏を弁護)
 (4)ケン・スター(ブッシュ(父)政権時の訟務長官(solicitor general、司法省No.4のポスト)、クリントン大統領弾劾裁判の時に独立検察官として一躍有名人に)
 (5)ロバート・レイ(元連邦検事、スター独立検察官の後任として、クリントン大統領の不倫疑惑についての報告書を執筆)
 (6)パム・ボンディ(元フロリダ州司法長官)
 (7)ジェーン・ラスキン(弁護士、元連邦検事)
 (8)エリック・ハーシュマン(過去15年間トランプ大統領の弁護を様々なケースで担当した法律事務所に所属する弁護士、元ニューヨーク州検事)
 (9)パトリック・フィルビン(ホワイトハウス副法律顧問)
 (10)マイク・プープラ(ホワイトハウス副法律顧問)

 白人、黒人、男性、女性と多様なメンバーをそろえた下院弾劾マネージャーチームに対して、トランプ弁護団は全員白人で、女性は二人だけ。パム・ボンディに至っては、「トランン大統領を当選させた女性」といわれるケリーアン・コンウェイ現ホワイトハウス顧問を彷彿とさせるプラチナ・ブロンド。民主党の弾劾裁判マネージャーチームとは見た目だけでも対照的です。

 冒頭陳述の後、早速、下院弾劾裁判マネージャーとトランプ大統領弁護団との間で激しい議論の応酬が始まりました。弾劾裁判初日の昨日は、冒頭陳述、その後の討論を併せてなんと計12時間。夜更けまで議論が続くうちに、下院弾劾マネージャーチームの二番手であるジェフリー・ナドラー下院司法委員長と弁護団の二番手ジェイ・セクロウ氏との議論が激化。「節度がなさすぎる」として、弾劾裁判の裁判官を務めるジョン・ロバーツ最高裁長官から双方がお叱りを受けるという前代未聞の事態まで発生しました。初日からこれではということで、弾劾裁判期間中は、上院議員やロバーツ最高裁長官だけでなく、当然下院弾劾裁判マネージャーやトランプ大統領弁護団にとっても、長い長い一日が続くことになるでしょう。一時はルディ・ジュリアーニ元市長も弁護団に加わるという報道が出ていましたが、あのお騒がせおじさんが弁護団に入っていたら、一体どうなっていたことでしょう。

 トランプ大統領弁護団のリストを見ていて、「ケン・スター」の名前をみた瞬間、私はのけぞってしまいました。実は私にとって、今回のトランプ大統領弾劾裁判は、在米生活27年で2度目の大統領弾劾裁判。前回、クリントン大統領が弾劾された理由は、正式には「宣誓証言での偽証と司法妨害」ですが、偽証の内容は当時ホワイトハウスで研修生(インターン)として働いていていたモニカ・ルインスキーさんという女性との不倫。その時に、クリントン大統領弾劾に結果として結びつく捜査を独立検査官として担当していたのが、まさにこの人なのです。

 当時、スター独立検察官の捜査に基づいて作成された報告書は「スター報告書」と呼ばれ、数百ページ以上ある大作であるにも関わらず、リリースされた瞬間にベストセラー。この時、私は在米日本国大使館専門調査員として働いていたのですが、彼の名前を見た瞬間、当時の記憶が蘇ってきました。まさか、この名前に20年以上たってから再びお目にかかることになるとは...という訳で、弾劾裁判は続きます。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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