デュポン・サークル便り(1月20日)

 ワシントンはここのところ、寒暖の差が激しい日々が続いています。半袖でも外出できるのでは?と思うほど暖かい日が続いたかと思うと、気温が急下降して雪が降り公立学校が休校となったり、その逆があったり。体調管理にも一苦労です。

 しかし、このジェットコースターのような日々は、ここ数週間のワシントンの動きそのものです。先週15日(水)、ナンシー・ペロシ下院議長がトランプ大統領弾劾訴追決議に署名し、決議は遂に上院に送られました。この弾劾訴追決議は16日(木)の朝アダム・シフ下院情報委員長により再度読み上げられ、これをもって上院で正式に米国建国史上3度目の大統領弾劾裁判の手続きが開始されることとなりました。

 トランプ大統領弾劾訴追のいわゆる「検事」役を果たす下院からの弾劾裁判マネージャーは計7名となります。その顔ぶれは、

 (1)アダム・シフ下院情報委員長(検事出身)
 (2)ジェフリー・ナドラー下院司法委員長
 (3)ハキーム・ジェフリーズ下院議員(ペロシ下院議長に近いと言われる。弁護士出身)
 (4)ゾウイ・ロフグレン下院議員(議会スタッフとしてニクソン大統領の弾劾決議起草に携わり、クリントン大統領が弾劾された時は下院司法委員会委員を務め、今回の弾劾裁判にマネージャーとして加わることで、第二次世界大戦後の大統領弾劾手続きのすべてに関与することとなった)
 (5)ヴァル・デミングス下院議員(警察官出身)
 (6)ジェイソン・クロウ下院議員(弁護士出身、陸軍でイラク・アフガニスタンに駐留経験あり)
 (7)シルビア・ガルシア下院議員(テキサス州ヒューストンの地方裁判所判事出身)

で、白人、黒人、男性、女性、年齢層も幅広い構成のチームとなりました。

 本格的な弾劾裁判は来週からになりますが、手続きはクリントン大統領の弾劾裁判手続きと全く同じになる旨を、すでにマコーネル共和党上院院内総務が表明済みです。最初は「検事」役となる下院の弾劾マネージャーが冒頭陳述を行うことから始まります。

 今後最も注目されるのは、弾劾裁判に証人を呼ぶか否かであり、この共和党と民主党の間の最大の対立点がどのような決着を見るのかになります。民主党は弾劾手続きに関する共和党との交渉が始まった時から一貫して計4名の証人を呼ぶことを求めており、この4人にはジョン・ボルトン前国家安全保障担当大統領補佐官が含まれています。対する共和党は、証人を呼ぶのであれば、ハンター・バイデン氏(バイデン大統領候補の息子)も呼ぶことを求めており、交渉が暗礁に乗り上げている状態です。

 なぜこれが重要かというと、この対立点が如何に解決されるかは共和党が一枚岩を保てるかどうかのカギを握るからです。弾劾裁判での大統領の罷免には上院の3分の2の議員が賛成票を投じる必要がありますが、弾劾裁判の進め方は過半数の議員の賛成で決まります。現在、少なくともリサ・マカウスキー上院議員、スーザン・コリンズ上院議員、ミット・ロムニー上院議員の3名が、証人を呼ぶことに賛成するか否かについては「冒頭陳述を聞いて決めたい」と態度を保留していて、あと一人、共和党の上院議員が、証人喚問支持に回ると、マコーネル上院院内総務の「証人喚問はせず、速やかに2週間程度で弾劾裁判を終わらせる」という目論見が崩れてしまうのです。

 しかも、CNNは、トランプ大統領の顧問弁護士であるジュリアーニ元NY市長の関係者のレブ・パルナスという人物の重大発言を報じています。この人物が、ヨバノビッチ元駐ウクライナ米大使を更迭し、ウクライナ政府にバイデン大統領候補と息子のハンター・バイデンに対する捜査を行うよう圧力をかけるため、ジュリアーニ氏とともに動いていたことを示す大量の証拠を下院情報委員会に提出したというのです。さらに、会計検査院(GAO,現在はGovernment Accountability Office に正式名称を変更している)がトランプ政権による対ウクライナ軍事援助凍結は「法律を犯した行為」と断じる報告書を発表しました。今後の動きによっては、さらに穏健派共和党上院議員の間に動揺が広がる可能性も排除できなくなっています。

 いずれにせよ、今週、来週の動きで弾劾裁判が速やかに終わるか、大統領選と並行して「ずるずる」と長引くかが決まることになります。今週もトランプ大統領の弾劾裁判をめぐる民主党と共和党のバトル・ロワイヤルからは目が離せません。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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