デュポン・サークル便り(12月27日)

 実は先週から日本に(子連れ?)帰省しております。日本に戻ってきてみてわかったのは、1週間離れただけで、ワシントンの動きが全く見えなくなること。毎日欠かさずニュースを見ているにも関わらず、です。もちろん、トランプ大統領が北朝鮮のいわゆる「クリスマス・プレゼント」について何を言ったかなどは報道されているのですが、とにかく、発言の背景が見えません。この数週間ワシントンの最大の関心事であるトランプ大統領の弾劾裁判の行方についても同様。日本で見ることができるのは、トランプ大統領が選挙集会で弾劾裁判は「魔女狩り」だと叫び、逆切れしている映像だけといっても過言ではありません。太平洋を越えてワシントンの動きをフォローし続けることの難しさを実感しています。

 ただ、弾劾裁判の行方が引き続き、ワシントンでの最大関心事であることだけは間違いないようです。先週ペロシ下院議長は、「弾劾裁判の手続きの詳細がわかるまでは、民主党側の裁判の責任者の指名もできないし、弾劾決議を上院に送付することもできない」と表明しました。それ以降、上院では与党共和党のミッチ・マコーネル上院院内総務と、民主党のチャック・シューマー上院院内総務の間でバトルが激化。結局、裁判の手続きについて合意できる見込みがないまま、議会はクリスマス休暇に入ってしまいました。

 弾劾裁判の手続きをめぐる共和党と民主党の最大の対立点は、「裁判で証人喚問をするか」ということ。民主党側は当然、証人喚問を強く求めています。特に、下院で弾劾に向けた調査が行われていた時、ホワイトハウス側の完全拒否で実現しなかったマイク・ポンペイオ国務長官などトランプ政権幹部の証言です。対する共和党側は、証人喚問は必要ないというのが基本的な立場。もし証人喚問するのであれば、当然、今回の疑惑の発端であるバイデン前副大統領も証人に呼ぶべきだとの姿勢です。しかも、弾劾裁判手続きについてマコーネル院内総務は民主党と協議に入る前から、上院共和党は一丸となってトランプ大統領を守ると明言、裁判の方法などについてホワイトハウスと密接協議を重ねていることを公にしています。

 マコーネル院内総務は、万一民主党側と弾劾裁判手続きについて合意できない場合、共和党が多数党であることから、共和党単独で弾劾裁判の手続きを決めることも辞さないといわれています。でも、そのためには現在53名いる共和党上院議員のうち、51名の支持を得る必要があります。つまり、3名造反する議員が出れば、マコーネル院内総務の思惑通りに事は進まないわけです。

 ここで気になるのが、共和党上院議員の中でも、トランプ大統領との距離感が微妙な議員たちの出方です。上院共和党の中には、本音ではトランプ大統領の言動に「げんなり」している議員が多数いるようです。共和党の別名である「Grant Old Party(古き佳き政党)」に象徴されるように、内政問題では穏健な立場、対外的には国際協調主義をよしとする、いわゆる「穏健派」の議員の間で、特にトランプ大統領に対する嫌気感が強いと言われます。亡くなった共和党上院の重鎮、ジョン・マケイン議員がその代表格といえるでしょう。

 それでも、上院共和党はこれまでは一人の造反者も出さないまま、「トランプ大統領擁護」で一枚岩の姿勢を維持してきました。ところが、ここにきて穏健派議員の一人であるアラスカ州選出のリサ・マカウスキー上院議員がインタビューでマコーネル院内総務のあまりにホワイトハウス寄りの立ち位置を批判し、自分が弾劾裁判でどのように投票するかは「まだ決めていない」と表明しました。果たして共和党は「トランプ大統領擁護」一枚岩で弾劾裁判まで進むことができるのか、これが今後の注目ポイントとなるでしょう。

 それにしても、日米の違いは明確です。もし日本の国会が弾劾裁判などという重要案件を抱えていれば、それこそ年末年始休暇返上となるかもしれません。ところが、アメリカの上院はクリスマス休暇に予定どおり入ってしまう。ここにアメリカらしさを感じます。読者の皆様にとって2020年が良い年となりますように。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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