外交・安保カレンダー(11月25日-12月1日)

 先週末は日韓GSOMIAで大きな動きがあった。一週間前、筆者は「あと数日内に文大統領が8月末の決定を撤回する度量があれば、多くの日本人は同大統領を見直すかもしれない。だが、恐らくそれは無理だと思う」と書いた。では筆者は文大統領を見直しただろうか?答えはやはり否である。まずはその理由から始めよう。

 韓国政府の決断直後、当初は詳細が不明だったせいか、GSOMIAを「条件付きで延長」するなどと報じられた。その後は「失効回避」「終了猶予」「破棄凍結」などと表現が二転三転。正確には同協定の「対日終了通告の効力を条件付きで停止する」のだという。されば、文大統領は「8月末の決定」を「撤回」した訳ではなさそうだ。

 法匪的に解釈すれば、「対日終了通告」という決定自体は「撤回しない」が、その通告の「効力」を「中断させる」ということか。要するに、GSOMIA「終了の通告」は今も生きているが、残り時間6時間の時点で韓国はストップウォッチを止め、終了通告の効力を中断させている。但し、その気になればいつでもカウントを再開する気だろう。

 随分回りくどい言い方だが、元官僚の筆者にはとても分かりやすい表現。日米韓の外交交渉担当者が秘術を尽くしたかどうかは知らないが、長い交渉の末にまとめた一種の芸術作品的取引だろう。GSOMIA交渉については今週のJapan Timesと産経新聞に英語と日本語でコラムを書いたので、御一読頂ければ幸いである。

 もう一つの焦点は相変わらずワシントンでの大統領弾劾の動きだ。実は先々週からキヤノングローバル戦略研究所の辰巳主任研究員が「デュポン・サークル便り」というニュースレターを書いている。大統領弾劾のプロセスは複雑で、日本ではあまり詳しく報じられていない。ワシントンの動きを詳しく知りたいなら、超お勧めである!

〇アジア
 香港の区議選で民主派候補が圧勝した。民主派は全452議席の80%を超す380議席以上を獲得して圧勝、親中派はおよそ60議席に終わったという。これで香港の民主化が進む?いやいや、むしろ逆ではないか。これは勝ち過ぎだとすらと思う。筆者が習近平氏なら、これ以上の民主化要求には絶対に応じないと決めるだろう。
 
〇欧州・ロシア
 今週はローマ教皇が訪日している。ローマ・カトリックというと、筆者には特別の思いがある。中学高校がイエズス会だったからだけではない。ワシントン在勤中にアメリカでのカトリック教徒のイメージを知ったからだ。アメリカはプロテスタントの国だから、大統領よりもローマ教皇に忠誠を誓うカトリック教徒には偏見や差別が今もあるらしい。
 幸いなことに、日本ではそのような偏見差別はない。23日に来日、長崎と広島を24日に訪問、25日午前には天皇陛下と会見、午後は総理と会談する。ローマ教皇が日本にいるという意味の真の大きさを日本人が実感するのは難しいだろうが、何せ38年ぶりの教皇の訪日だ、成功を祈りたい。

〇中東
 先週、イスラエルの検察が収賄などの罪でネタニヤフ首相を起訴した。現職首相の起訴は初めてだが、同氏については様々な噂があったので別に驚かない。問題はこれでイスラエル内政にポスト・ネタニヤフの時代が来るか否かだが、野党の組閣工作は暗礁に乗り上げているので、もしかするとまた総選挙があるかもしれない。

〇南北アメリカ
 本日吉崎達彦氏から面白い話を聞いた。米下院での大統領弾劾手続きは順調に進めばクリスマスまでに完了する。上院で弾劾裁判が始まるのは来年1月初旬以降となり、大統領選予備選と重なってくる可能性が高い。現在出馬を予定しているサンダース、ウォーレン、ハリスなどは皆上院議員だが、どうするつもりなのだろうか。
 それ以上に深刻なのは民主党の候補者のお粗末さだ。マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は24日、米大統領選挙の民主党候補者指名争いに出馬すると正式に表明したそうだ。彼は今77歳、市長としての実績もあり、トランプとは違った億万長者だが、おいおい、他に候補者はいないのかよ。これではトランプに勝てない。

〇インド亜大陸

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


10月7日-11月27日 国連総会 第二委員会 第74回会合(ニューヨーク)
10月7日-12月5日 第14期2019年第3回マレーシア国会会期
11月1日-12月27日 外務省と在中日本国大使館が中国各地で「地域の魅力海外発信支援事業」を開催
11日-12月6日 拷問禁止委員会 第68回会合(ジュネーブ)
12日-27日ユネスコ総会 第40回会合(パリ)
14日-27日 第39回インド国際貿易フェア(ニューデリー)
18日-12月1日 米・ロサンゼルス自動車ショー(一般公開は22日から)
18日-29日 ICAO council phase 第218回会合(モントリオール)
19日-26日 ローマ教皇がタイと日本を訪問
19日-26日 対日理解促進交流2019・インドの高校生と大学生らが訪日
22日-23日 G20愛知・名古屋外務大臣会合
22日-26日 中国・王毅国務委員兼外交部長が訪日
23日-30日 2019年度中国大学生友好交流訪日団が訪日(日中植林・植樹国際連帯事業)
25日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
25日 メキシコ第3四半期GDP発表
25日 日・セルビア租税条約交渉の開始(第1回)(東京)
25日 安倍首相がローマ教皇と会談
25日 日中外相会談、日中の人的・文化的交流に関する閣僚級対話
25日-27日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)第53回会合(ウィーン)
25日-27日 第21回日本・スペイン・シンポジウム開催(バレンシア州カステジョン市)
25日-27日 尾身外務大臣政務官がノルウェーを訪問
25日-28日 欧州議会本会議(ストラスブール)
25日-12月3日 対日理解促進交流2019・タイの高校生らが訪日(テーマ:科学技術)
25日-12月5日 国際海事機関(IMO)総会 第31回会合(ロンドン)
26日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
26日 ロシア10月雇用統計発表
26日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
27日 米国第3四半期GDP発表(改定値)
27日 ベージュブック(FRB)
27日 ナミビア大統領選挙・国民議会選挙及び国民投票
27日 PSLV C47(地球観測衛星Carttsat-3等)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
27日-28日 駐日各国大使の地方(福島県)視察
27日-28日 天皇、皇后両陛下が奈良、京都訪問
27日-29日 Jakarta Smart Living Expo 2019(ジャカルタ)
27日-29日 The 8th International Plastics & Rubber Technologies & Materials Exhibition for Vietnam(ホーチミン)
28日 米・10月消費支出(PCE)物価指数(商務省)
28日 エレクトロン("Running out of finger"ロケットラボ社)打ち上げ(ニュージーランド・マヒア半島)
28日-29日 EU競争理事会(ブリュッセル)
29日 ユネスコ 執行理事会 第208回会合(パリ)
29日 米・感謝祭(ニューヨーク市場は全て休場)
29日 スリランカ・ラージャパクス大統領がインドを訪問
29日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
29日 EU10月失業率発表
29日 インド第2四半期GDP発表
29日 西アフリカ協商理事会首脳会議(トーゴ・ロメ)
30日 日印外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)(インド・デリー)
30日 ドナルド・トゥスク欧州理事会常任議長任期終了
12月1日 ミシェル・シャルル欧州理事会新常任議長就任
1日 福岡国際マラソン
1日 ソユーズ2.1a(ISS無人補給機プログレスMS-13)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
1日-4日 英・ウィリアム王子がクウェートとオマーンを訪問
1日-5日 IWA Water and Development Congress & Exhibition(コロンボ)

<12月2-8日>
2日-3日 EU 運輸・通信 ・ エネルギー 理事会(運輸及び通信)(ブリュッセル)
2日-3日 EU 司法・内務相理事会(ブリュッセル)
2日-4日 トランプがNATO首脳会議のためにイギリスを訪問
2日-5日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2日-6日 FAO理事会 第163回会合(ローマ)
3日 ブラジル第3四半期GDP発表
3日-5日 第31回税関調整委員会〔31st Meeting of the Coordinating Committee on Customs(CCC)〕(ラオス)
4日 NATO首脳会議(ロンドン)
4日 ユーログループ(ブリュッセル)
4日 欧州連合地域委員会(CoR) 第137回会合(ブリュッセル)
4日 EU運輸・通信・エネルギー理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
4日 カナダ中央銀行政策金利発表
4日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
4日-7日 Manufacturing Indonesia 2019(ジャカルタ)
4日-7日 HARDWARE & HANDTOOLS EXHIBITION IN VIETNAM(ホーチミン)
5日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
5日 米国10月貿易統計発表
5日 EU第3四半期実質GDP成長率発表
5日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン19号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
5日-6日 OPEC総会(オーストリア・ウィーン)
6日 国際海事機関(IMO)理事会 第123回会合(ロンドン)
6日 ロシア11月CPI発表
6日 米国11月雇用統計発表
6日 ブラジル11月IPCA発表
6日 ドミニカ議会議員選
8日 中国11月貿易統計発表



(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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