デュポン・サークル便り(11月8日)

 毎年11月の第一火曜日は、アメリカでは「選挙の日」に当たる。今年の「選挙の日」は11月5日だった。今年は連邦議会選挙や大統領選挙と重なっていないため、州議会選挙や、各市町村の教育委員会の委員長などの選挙のみとなっている。そのため、投票率の低下を懸念してか、各党とも、「投票所に足を運んでください」という働きかけが活発だった。例えば、私が住んでいるバージニア州では、知事は民主党だが、州議会の過半数は共和党が占めるという、いわゆる「ねじれ現象」が長らく続いていたが、今回の選挙で民主党が州議会の多数党に返り咲く可能性が高かった。バージニア州は大統領選挙の結果を左右する「バトルグラウンド州」の一つでもあるため、この州の議会のどちらが多数党かというのは、来年大統領選挙を控える両党にとって重要だった。

 投票日から一夜明けた11月6日、バージニア州議会は上院も下院も民主党が多数党となることが確定した。現在の同州は民主党のラルフ・ノーサムが知事を務めているため、知事と州議会の上下両院がいずれも民主党が有することとなった。これは民主党にとって1993年以来の快挙だという。

 そのほかにも、共和党が伝統的に強いケンタッキー州で、民主党候補が州知事選に勝利したり、2016年の大統領選で票田として重要視され、2020年も引き続き重要なバトルグラウンド州であるとされるペンシルベニアの郊外の地方自治体の選挙で民主党が優位に立つなど、トランプ氏の不人気が共和党候補の当落を左右する場面が多々見られた。テリー・マコーリフ元バージニア州知事(民主党)は「トランプ氏の名前が投票用紙に乗っているわけではないが、選挙期間を通じて彼のプレゼンスが感じられた今年の選挙だった」と5日の選挙を振り返って評しているが、そのとおりである。

 そんなトランプ大統領は、今年夏のウクライナ大統領との電話会談の中で、2020年の大統領選挙で対立候補となる可能性があるバイデン前副大統領と彼の息子のウクライナの石油ビジネスとのかかわりについて調査を依頼したことが明るみに出てからというもの、米下院が発動した弾劾調査への対応に苦慮している。この1か月ほど、秘密会で証人喚問を行っていた議会は、共和党からの「秘密会での証人喚問では透明性に欠ける」という批判を念頭に置き、来週から公聴会を公開とし、秘密会で行われた証言も、ものによっては事後にその議事録を公開するという戦法に切り替えた。今週、公開公聴会で証言する証人の中は、マリー・イバノビッチ前駐ウクライナ米大使、ビル・テイラー駐ウクライナ米大使、ジョージ・ケント国務次官補代理など、トランプ政権の対ウクライナ政策形成に直接関与した政府高官が名を連ねており、彼らがどのような証言を公開の場で行うかが今から注目されている。

 このような状況を意識してか、トランプ大統領は最近、国内政策だけではなく、外交政策の面でも、彼の支持基盤である共和党右派の琴線に触れるような決定をいくつか下している。最も新しいところでは、米メキシコのメキシコ側の国境地帯の町でモルモン教の米国人が、麻薬カルテル間の抗争に巻きこまれる形で多数殺害されたことに対して「メキシコは麻薬カルテルと戦うために米国の支援を受け入れるべきだ」がツイートしたことや、気候変動に関するパリ協定からの脱退表明などがある。2020年に大統領選が本格的に始動すれば、支持基盤をつなぎとめようと、おそらく、次々と不穏当なツイートを出すだろう。そして好むと好まざるとにかかわらず、トランプ大統領のツイートや記者会見での不規則発言に周囲が振り回される時期が少なくとも2020年11月の大統領選当日まで続くことになる。

(キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員 辰巳由紀)

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