外交・安保カレンダー(10月7日-13日)

 先週末は岡山県倉敷市にいた。市内の瀬戸内海に近い林という丘に五流尊瀧院(ゴリュウソンリュウイン)という修験道の寺院がある。天台修験系の一宗派である「修験道」の総本山だが、何と同寺院は筆者のご先祖様が800年守ってきたお寺だ。

 歴史書によれば、修験道の祖「役行者」は699年に京を追われたが、その後5人の弟子達が701年に寺院を建造、その中心が尊瀧院だった。時は流れ、1221年の承久の乱で後鳥羽上皇の皇子・覚仁親王と頼仁親王が倉敷の地に流れ着いた。

 その頼仁親王が当時衰退していた五流の寺院と十二社権現宮を再興し現代に至っている。という訳で、当院の歴代管長は頼仁親王の子孫であるらしい。この五流尊瀧院が筆者の直系の実家なのだから、当然重要行事には参加する義務がある。

 10月5日に恒例の熊野大権現大祭があった。今回が1319回目だという。山伏が行例を組み、独特の問答を経て境内に入り、採燈大護摩供の後、熱い石の上を歩く「火渡り」で締める。外交安保と関係がない?確かに、でも事実なのだから、ご容赦を。

 本題に入ろう。筆者がこの伝統行事を見ていた頃、香港では再びデモが激化した。こともあろうに、香港政府が植民地時代の古い「緊急状況規則条例」を持ち出してデモ隊のマスク着用を禁止する「覆面禁止法」を施行したからだ。

 案の定、結果は逆効果となった。5日午後のデモ行進では参加者の大部分がマスク着用だったという。それにしても、林鄭月娥行政長官は政治音痴ではないか?彼女は「極端な暴力こそが覆面禁止法を制定した理由だ」と開き直ったそうだ。

 逃亡犯条例の撤回という一定の達成感から、デモの勢いが徐々に失われ始めた香港に、再び火と油を注いだのだから、もう驚くしかない。彼女というよりも、彼女の裏にいる政治参謀や北京政府の意向だったのであれば、この政治判断は間違いである。

 この香港の惨状を見てJapan Times紙に筆者が書いたのが「Simple, serious and fatal mistakes in politics」というコラムだ。世界各地で「勢いと偶然と判断ミス」による間違った政治判断がまかり通っていると書いた。時間があればご一読願いたい。

〇アジア
 NBA(米プロバスケットボール)の関係者が香港のデモを応援する内容をツイッターに投稿、中国のファンや企業パートナーから非難が相次いだため、話が大きくなった。NBAが「中国の多くの友人やファンの感情を深く害したことは遺憾」としたからだ。
 これに対し、連邦議員の一部は「中国は経済力を盾に、米国にいる米国人の発言を検閲している」、「NBAは金のために中国に謝罪している」などと非難したそうだ。スポーツと政治、永遠の問題だが、皆さんはどちらが正しいと思いますか。

〇欧州・ロシア
 冒頭ご紹介した英語コラムにも書いたが、英首相はEU離脱に関する新提案なるものを発表した。一見良く出来ているようだが、読めば読むほど、殆ど実行不可能な内容ではないかと危惧する。これが黄昏の大英帝国の断末魔なのか。

〇中東
 遂に米軍がシリアから本格的に撤退を始めた。ということは、これまで対ISIS戦を一緒に戦ってきたクルド勢力を米国が見捨てるということだ。米軍は去るから良いだろうが、残されたクルド勢力はトルコに虐殺されるに決まっている。こんなこと、戦争を始める前から分かっていたことだ。米国に騙すつもりはなかったのか、騙されたクルドが悪いのか。ならば、そもそも、なぜクルド勢力を利用したのか。本当に胸が痛む。

〇南北アメリカ
トランプ政権がまた窮地に陥っている。といっても、こんなこと既に年中行事化しつつあり、一々驚いている暇はない。今回の特徴は、遂に下院民主党が大統領弾劾のための調査を本格化させつつあることだ。しかし、トランプ陣営もエゲツナさでは誰にも負けない。このままではトランプ氏以上にはバイデン元副大統領が傷付くだろう。トランプ氏の本音はバイデン以外の女性候補ではなかろうか。まだ大統領選でトランプ氏が再選される可能性は十分あると見る。

〇インド亜大陸

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


1-7日 中国国慶節
3-11月8日 国連総会 第一委員会 第74回会合(ニューヨーク)
3-11月15日 国連総会 第四委員会 第74回会合(ニューヨーク)
4-8日 中谷外務大臣政務官がチュニジアを訪問
7-8日 欧州議会委員会会合(ブリュッセル)
7-8日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルク)
7-8日 米中次官級貿易協議(ワシントン)
7-9日 EU地域委員会(CoR)本会議 136回会合(ルクセンブルク)
7-11日 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 執行委員会 第70回会合(ジュネーブ)
7-12日 国連世界観光機関(UNWTO)総会 第23回会合(サン)
7-11月20日 国連総会 第六委員会 第74回会合(ニューヨーク)
7-11月27日 国連総会 第二委員会 第74回会合(ニューヨーク)
7-12月5日 第14期2019年第3回マレーシア国会会期
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
8-9日 オランダ・ルッテ首相がニュージーランドを訪問
8-11日 海洋プラスチックごみ対策に関する20カ国・地域(G20)事務レベル会合(国連大学ウ・タント国際会議場)
8-11日 WTOパブリックフォーラム(スイス・ジュネーブ)
8-16日 対日理解促進交流プログラム2019・映画・芸術に関心のあるミャンマー青少年が訪日
9日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルク)
9日 ブラジル9月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
9日 メキシコ9月CPI発表
9日 プロトンM(Eutelsat5 West B、MEV1)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
9-10日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
9-23日 UNESCO 執行理事会 第207回会合(パリ)
10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
10日 ブラジル8月月間小売り調査発表
10日 FOMC議事要旨(FRB)
10日 米国9月消費者物価指数(CPI)発表(労働省)
10日 朝鮮労働党創建74周年
10日 ノーベル文学賞発表
10日 ペガサスXL(電離層探査ICON)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
10-11日 米中閣僚級貿易協議が再開(ワシントン)
11日 国連環境計画(UNEP)常駐代表委員会第147回会合(ナイロビ)
11日 CIS首脳会議(トルクメニスタン・アシガバード)
11日 ASEAN第7回RCEP閣僚会議(バンコク)
11日 メキシコ8月鉱工業生産指数発表
11日 ノーベル平和賞発表
12日 長征3B(TJSW-4)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
13日 ポーランド議会総選挙
13日 F1日本決勝(三重・鈴鹿サーキット)


【来週の予定】
14日 中国9月貿易統計発表
14日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
14日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
14日 コロンブス・デー(為替、債券市場が休場。株式、商品市場が通常取引。)
14-20日 IMF、世界銀行年次総会と関連会合(ワシントン)
14-15日 欧州農水相委員会(ルクセンブルク)
14-15日 APEC財務相会合(チリ・サンティアゴ)
14-11月8日 国連人権委員会 第127回会合(ジュネーブ)
15日 欧州一般問題理事会(ルクセンブルク)
15日 中国9月CPI発表、 PPI発表
15日 モザンビーク国民議会選挙、大統領選挙
15日 米、対中関税第1-3弾の上乗せ税率を30%へ引き上げ(1日から延期)
15日 エレクトロン('As The Crow Files')打ち上げ(ニュージーランド・マヒア半島)
15-16日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
16日 EU9月CPI発表
16日 米国9月小売売上高統計発表
16日 ロシア1-9月鉱工業生産指数発表
16日 ベージュブック(FRB)
17日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
17日 ジブラルタル議会選
17-18日 欧州理事会(ブリュッセル)
17-18日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する(TRIPS)協定理事会(ジュネーブ)
18日 IMF・世銀の年次総会本会議(ワシントン)
18日 中国・7-9月期GDP(国家統計局)
19日 英離脱延期法が定めるEUとの離脱案合意期限
19日 ココス諸島 自治体(Council)選
19-20日 G20保健相会合(岡山県)
20日 ボリビア大統領選挙
20日 スイス議会総選挙
20日 スイス住民投票

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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