外交・安保カレンダー(3月25-31日)

先週はCNNとFox News(FOX)を比較しつつ、今の米国がまるで「一国二制度」のようだと書いた。それを象徴する報道が先週末から再び垂れ流されている。今週はその実態について書こう。発端は3月22日、過去2年ロシアゲートを捜査してきたモラー特別検察官が最終報告書をバー司法長官に提出するとの憶測が流れたことだ。

たまたま日本の自宅でCNN・USを見ていたが、当初CNNは、報告書の内容がトランプ氏に不利と見たのだろうか、この事実をやや興奮気味に報じていた。しかし、その後に「新たな起訴はない」との情報が流れ、更に土曜日も一日、報告書の詳細が明らかにならなかった、CNNは徐々に焦燥感と危機感を深めていったようだ。

これに対し、FOXは大はしゃぎ。トランプ政権の勝利を祝うかのように、大統領の嫌疑は晴れた、ロシアとの共謀などなかった、などと勝ち誇ったように報じ始める。相変わらずCNNとFOXは水と油だ。そうしている内に日本では夜が明けた。司法長官は24日の日曜日午後(日本時間で月曜未明)に報告書の要約を議会に提出した。

4ページの短い書簡だが、内容的にサプライズはほとんどない。特別検察官の捜査では「ロシア政府の米大統領選干渉につきトランプ陣営関係者が同政府と共謀・連携したことは確認できず」「(司法妨害については)大統領が罪を犯したとも、無罪放免になったとも言えない」という内容だから、どちらにも取れる微妙な内容だ。

参考までに原文ではMueller's "investigation did not establish that members of the Trump campaign conspired or coordinated with the Russian government in its election interference activities," and "while this report does not conclude that the president committed a crime, it also does not exonerate him."となる。

この要旨の解釈の仕方もCNNとFOXでまるで違う。その報道合戦のバカバカしさについては今週の産経新聞にコラムを書いたので、時間があればご一読願いたい。内政も大事だが、世界は米国抜きで動いている。米国の連邦議会議員やジャーナリズムの劣化は目を覆うばかり。やっぱり、日本にとっても対岸の火事ではないのだ。

今週は25日に筆者にとっては個人的に注目する大切な行事がある。外務省が今年度の「国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール」と「同全国中学生作文コンテスト」の特賞入選者8名を「奥・井ノ上記念日本青少年国連訪問団」としてニューヨークに派遣するのだ。

この事業は平成13年度に当時外務省国連政策課長であった故・奥克彦大使の発案で始まったそうだ。筆者も奥大使とは個人的に親交があったので、同大使の後任として2004年バグダッドに赴任したことを今でも決して忘れはしない。イラクの平和と復興を願いつつ殉職した奥大使と井ノ上正盛書記官のご冥福を改めて祈りたい。

〇アジア
先週トランプ氏は米財務省が発表した北朝鮮に対する追加的大規模経済制裁を突然「撤回するよう命じた」とツイートし、関係者は大騒ぎになった。同日北朝鮮は開城の南北連絡事務所からの撤退を発表している。2月末の第二回首脳会談から一カ月経ったが、北朝鮮の非核化は一体どうなったのだろうか。

〇欧州・ロシア
英国ではEU離脱に関し新たに国民投票を求める大規模なデモがあり、一部主要紙はメイ首相退陣を求めた。合意なき離脱は米国経済にも悪影響を及ぼすが、米国はロシアゲート一色だ。中国国家主席を迎えたイタリアは、米国などの反対にも拘わらず「一帯一路」構想に正式参加した。大衆迎合的民族主義を掲げる今のイタリア政府には欧米の警告など馬耳東風なのだろう。

〇中東
先週木曜日、トランプ氏はゴラン高原に対するイスラエルの主権を認め、ポンペイオ国務長官は同高原の占領が安保理決議違反ではないと言い切った。エルサレムへの米大使館移転も大事件だったが、イスラエルによるゴラン高原の「支配」は「占領」ではないと言われると、さすがの筆者も「いい加減にしろ」と言いたくなる。国務長官がそんなことを考える根拠は一体何なのか。

〇南北アメリカ
南米ではベネズエラで混乱が続いている。先週木曜日には「暫定」大統領の最側近が家宅捜索の末、銃火器所持の容疑で拘束された。どうやらマドゥロ現大統領は「レッドライン」を越えつつあるようだ。以前トランプ氏は「全ての選択肢がオープン」と発言したが、どうするのか。これで何もしなければ次は「暫定」大統領本人に害が及ぶかもしれない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

3月4-29日 自由権規約人権委員会 第125回会合(ジュネーブ)
11-4月5日 国連総会 第5委員会 再開会期第一部(ニューヨーク)
14-28日 国際労働機関(ILO)理事会及びその委員会 第335回会合(ジュネーブ)
18-29日 国際化学物質安全性カード(ICSC) 第88回会合(ニューヨーク)
19-26日 JENESYS2018・ラオスから高校生や大学生らが訪日
19-28日 対日理解促進交流・日本の大学生らが韓国を訪問
21-28日 台湾総統が南太平洋3カ国のパラオ・ナウル・マーシャル諸島を歴訪
23-29日 山田外務大臣政務官がルワンダ及びマダガスカルを訪問
24-28日 東ティモール・バボ外務・協力大臣が訪日
24-30日 日中植林・植樹国際連帯事業・中国トイレ革命交流団が訪日
25日 日・チュニジア租税条約交渉 第1回
25日 日本の都道府県・オーストラリアの各州間ネットワーク会合の開催
25日 外務省・女性駐日大使の福島県視察を実施
25日 OS-M1(魂鵲一号B(Lingque 1B))打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
25-26日 米イスラエル首脳会談(ワシントン)
25-26日 第16回ASEAN-カナダ対話(カナダ)
25-28日 欧州議会本会議(ストラスブール)
25-28日 薗浦内閣総理大臣補佐官がマレーシアを訪問
25-29日 奧・井ノ上記念日本青少年国連訪問団が国連本部等を訪問
25-4月5日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会 第52回会合(ウィーン)
26日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
26日 EUと仏独中4者会談(パリ)
26-27日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(非公式会合・運輸)(ブカレスト)
26-29日 ボアオ・アジアフォーラム(中国海南省)
27日 米1月貿易収支(商務省)
27日 メキシコ2月貿易統計、雇用統計発表
27日 ボーイング墜落事件で公聴会(ワシントン)
27-28日 ASEAN-米国対話(米国)
28日 米国2018年第4四半期および2018年年間GDP発表(確定値)
28-29日 ライトハイザーUSTR代表らが通商協議のために訪中
29日 第3回持続可能な開発に関するASEAN共同体ビジョン2025とUN2030アジェンダの相互補完の強化に向けた対話
29日 米国2月PCE物価指数発表(商務省)
29日 ブラジル2月全国家計サンプル調査発表
29日 ソユーズST-B(4機の通信衛星O3b)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
30日 スロバキア大統領選挙
30日午前0時 〔中央ヨーロッパ時間(CET)〕英国のEU離脱
30-31日 フランシス法王がモロッコを訪問
31日 ウクライナ大統領選挙
31日 トルコ統一地方選挙
31日 OS M-1(天鎖二号01星(Tianlian 2))打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
31日 欧州各国が夏時間入り
31日 自動車F1バーレーンGP決勝(バーレーン・サキール)
31-4月2日 ブラジル・ボルソナーロ大統領がイスラエルを訪問

【来週の予定】
4月1日 PSLV C45(EMISATと相乗り超小型衛星29機)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
1日 インド人民議会選挙
1日か2日 ロシア2018年経済活動別および需要項目別GDP統計
1-2日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
1-5日 国連貿易開発会議(UNCTAD)eコマース週間(ジュネーブ)
2日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
2日 ユーロスタット、2月失業率発表
3日 中国・劉副首相が訪米
3日 ソロモン諸島国会議員選挙
3-17日 UNESCO 執行理事会 第206回会合(パリ)
4日 NATO設立70年
4日 ソユーズ2.1a(ISS無人補給機プログレスMS-11)打ちあげ(バイコヌール宇宙基地)
4-5日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
5日 中国清明節休暇
5日 米国3月雇用統計発表
5日 CIS外相会議(ロシア・モスクワ)
5日 ソユーズST-B(4機の通信衛星03b)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
5-6日 G7外務・安全保障担当相会合(開催地未定)
5日か8日 ロシア3月CPI発表
6日 モルディブ国民議会
7日 統一地方選・41道府県議選、17政令市議選

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

« 外交・安保カレンダー(3月18-24日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(4月1-7日) »

« 外交・安保カレンダー(3月18-24日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(4月1-7日) »

アーカイブ