外交・安保カレンダー(2月25-3月3日)

今週はベトナムで第二回米朝首脳会談が予定されているが、正直言って首脳会談にはあまり期待していない。今回も北朝鮮の「非核化」、すなわち北朝鮮が現在保有するものだけでなく、全ての核兵器・運搬手段を含む核兵器開発プログラムそのものを廃棄することについて北朝鮮が譲歩する可能性は極めて低いと考えるからだ。

しかし、「それでは身も蓋もない。何かコメントせよ」、とお叱りを受けそうなので、今回はもう少し大局的見地から、なぜ北朝鮮が核開発を止めないのか、なぜ韓国が北との関係改善を急ぐのか、について考えてみたい。これから述べることが正しければ、米国の大統領が誰であれ、こうした歴史的潮流を止めることはできないだろう。

何故そう考えるようになったのか。視点を変えて、北朝鮮と韓国の立場で考えれば、全てが合点がいく。筆者の仮説はこうだ。


● 1990-91年のソ連崩壊は北朝鮮の金日成と金正日にとって建国後最大のショックだったに違いない。ソ連の次は北朝鮮だと一時は確信したのではなかろうか。


● 北朝鮮がこの状況下で生き延びるためには核兵器を保有するしかない。1994年以降の核兵器開発は北朝鮮生き残りのための金正日の確信犯的行動である。


● 朝鮮半島の歴史は周辺の強国への半従属の歴史だった。半島で強大な独立国家が栄えたことは稀で、多くは最も強大な隣国との冊封関係で生き延びてきた。


● こうした歴史を知れば、北朝鮮の「主体思想」なるものも、朝鮮民族の「他に依存せず、自らの歴史の主体となりたい」という願望の一側面であることが判るだろう。


● 韓国の文大統領は確かに左翼だが、彼も左派のナショナリストだと考えれば合点がいく。彼は韓国が米国の影響下にあることが耐えられないのだろうと思う。


● 北朝鮮だって同じ。中国やソ連の影響下にあることへの不満は小さくない。中朝は基本的に相互不信であり、最近の関係改善はあくまで戦術的なものだろう。


● 21世紀に入り、こうした南北朝鮮の歴史的願望が叶う可能性が出て来た。しかも、北朝鮮は核兵器開発に漸く成功し最低限の対米、対中抑止力まで手に入れた。


● 一方、米国にトランプ政権が誕生し、半島からの米軍撤退の可能性が出てきた。韓国では文在寅・左派ナショナリスト政権が誕生し、南北に共通言語が戻った。


● 今回の平和攻勢は、最終的にどちらが生き残るかは別にして、南北が戦術的に協力して朝鮮半島への周辺大国の影響力を減らす南北共同のシナリオではないか。


● 文在寅にとって北朝鮮の核は当面気にならない。彼は北が韓国に対し核兵器を使うことはないと信じ切っているだろうからだ。これでは「非核化」が進むはずはない。


● しかし、こうした南北共同シナリオはいずれ破綻する。南北朝鮮には中国や米国の意図を挫くだけの十分な国力・政治力がないからだ。


● 現下の状況はトランプ政権が続く限り変わらないだろうが、トランプ氏が政治の舞台から退場すれば、南北共同シナリオのモメンタムは失われるだろう。


● それが数カ月後か、二年後か、もしくは六年後かは判らない。だが、文在寅政権が続く限り、こうした南北共同シナリオに沿って動き、日韓関係は更に悪化するだろう。


今週は国内移動中につきこのくらいにしておこう。

2月11日-3月8日 平和維持活動特別委員会及び作業部会 実質会期(ニューヨーク) 
18-3月8日 経済的、社会的、文化的権利委員会 第65回会合(ジュネーブ)
18-3月15日 国際民間航空機関(ICAO) Council phase 第216回会合(モントリオール)
19-26日 対日理解促進交流・「日ASEAN学生会議」参加者の大学生らが訪日
19-28日 第25回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合(バリ)
19-28日 対日理解促進交流・韓国の大学生らが訪日
22-27日 薗浦内閣総理大臣補佐官が米国ワシントンD.C.を訪問
23-28日 辻外務大臣政務官が米国およびスイスを訪問
23-3月1日 平成30年度日豪若手政治家交流・豪議員団が訪日
24-25日 EU・アラブ連盟首脳会議(エジプト)
24-26日 ベトナム・グエン・フー・チョン書記長兼国家主席がラオスとカンボジア外遊
24-27日 パキスタン・クレーシ外務大臣が訪日
25日 米・ペンス副大統領がコロンビアを訪問
25日 メキシコ2018年第4四半期GDP発表
25日 イギリス領ヴァージン諸島の議会選挙
25日か26日 ロシア2018年貿易統計発表
25-26日 平成30年度エネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議を開催
25-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
25-3月1日 国連世界食糧計画(WFP)執行理事会 first regular session(ローマ)
25-3月3日 対日理解促進交流・中国青年公益事業交流団が訪日
25-3月15日 国際海底機構(ISA)総会 first part (キングストン)
25-3月22日 国連人権理事会 第40回会合(ジュネーブ)
26日 メキシコ2018年12月小売・卸売販売指数発
27日 メキシコ1月貿易統計、雇用統計発表
27日 ブラジル1月全国家計サンプル調査発表
27日 ソユーズST-B(OneWeb衛星10機)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
27日 アルメニア首相がイランを訪問
27-28日 米朝首脳会談(ハノイ)
28日 ブラジル2018年第4四半期GDP発表
28日 米国2018年第4四半期および2018年年間GDP発表(改定値)
28日 リビア・新憲法を巡って国民投票
28-3月1日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
3月1日 EU1月失業率発表
1日 米・PCE物価指数(商務省)
1日 米中貿易協議の交渉期限
1日 朝鮮「三・一独立運動」から100年
2日 ファルコン9(SpaceX社 有人型ドラゴン デモミッション1)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)
2-3日 外務省及び在ロシア連邦日本国大使館が「地域の魅力海外発信支援事業」を開催(モスクワ)
3日 第13期全国人民政治協商会議第2回全体会議(北京)
3日 エストニア議会選挙
3日 東京マラソン

【来週の予定】
4日 欧州議会委員会会議
4-8日 国際原子力機関(IAEA) 理事会(ウィーン)
4-29日 自由権規約人権委員会 第125回会合(ジュネーブ)
5日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
5日 第13期全国人民代表大会第2回全体会議(北京)
5日 ミクロネシア連邦・連邦議会選及び住民投票
5日 元トランプ選対本部議長のマナフォート被告の判決(本連邦地裁)
5-7日 スリランカビジネス投資会議2019開催
6日 米・ベージュブック(FRB)
6日か7日 ロシア2月CPI発表
7日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
7日 米国1月貿易統計発表
7日 メキシコ2月CPI発表
7日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
7日 EU2018年第4四半期実質GDP成長率発表
7-8日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
7-8日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
8日 中国2月貿易統計発表
8日 米国2月雇用統計発表
9日 ヴェガ(PRISMA)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
10日 マダガスカル・国民議会選
10日 ギニアビサウ・国家人民会議選
10日 米・夏時間入り

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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