外交・安保カレンダー(2月4-10日)

今週の中国は春節で4日から10日まで休み。当然筆者の関心は5日の米大統領一般教書だ。昨年の今頃も書いたことだが、この英語でState of the Union addressと呼ばれる演説をなぜ「一般教書」と呼ぶのかは、実はよく分からない。という訳で、今年はもう少し真面目に調べた結果、色々なことが分かったのでご紹介しよう。

憲法上、大統領は議会に出席する権利を持たないが、文書の形でmessageを議会に送付することが認められている。State of the Unionを直訳すれば、「連邦の状態」だが、これが日本では「一般教書」、「年頭教書」などと呼ばれるようになったらしい。通常は「一般教書」の後に「予算教書」も発表されるので、両者を混同しないように。

一般教書が施政方針演説だとすれば、「予算教書」は米大統領が議会に毎年提出する、翌会計年度の予算の編成方針を示す文書だ。中長期的経済見通しなどについても盛り込まれるとされる。予算は議会の特権であり、大統領には予算法案を提出する権限がない。だから大統領は議会に対する要請として「予算教書」を作成するのだ。

調べついでにもう一つ気になることを書こう。トランプ氏は今回の一般教書で、大統領選挙中からの公約であるメキシコ国境での壁の建設に関し、「国家非常事態宣言」を発布する可能性を暗示している。大統領権限で米軍の施設建設費を流用して壁を建設するというのだが、これって、どう考えても滅茶苦茶だろう、と普通なら思う。

そんなことが認められるなら、民主党大統領は法律を作ることなく「非常事態宣言」を発布して「銃規制」を強化することが可能になるのか。それが認められれば、もう議会も行政府もない、民主主義は一体どうなるのか、という議論になるはずだ。でも、実はこれが必ずしも無茶苦茶ではないらしい、という話をしよう。

報道によれば、トランプ氏のこの「暴言」を受け、ホワイトハウス、国土安全保障省、国防総省の法律専門家が既に議論を始めているそうだ。憲法上、大統領はその裁量の範囲内で合衆国が非常事態にあることを宣言することができる。しかし、同宣言によって大統領が壁建設の資金を使うことが法的に認められるかどうかは疑問だ。

例えば、朝鮮戦争の際にトルーマン大統領は非常事態を宣言し米国の鉄鋼業を国有化しようとしたが、当時の米最高裁は大統領にその権限はないと判断したそうだ。他方、合衆国法典第10編の規定によれば、米軍は非常事態の際に国防総省に割り当てられた使途目的自由予算の範囲内で建設計画を実施することが可能だという。

されば、トランプ氏はこの規定を使って米軍に壁を建設させることは不可能ではないとの意見もあるそうだ。最終的には問題は法的ではなく、政治的なのか。それにしても、何と「毎度お騒がせの大統領」なのだろう。

〇東アジア・大洋州
6日にフアウェイ副会長がカナダ・バンクーバーの法廷に出頭する。まだ米国は彼女を起訴しただけで、カナダに犯罪人引き渡しを求めてはいないはずだが、春節中のタイミングには何らかの意味があるのだろうか。一方、2月4~5日、メルケル独首相が公式実務訪問賓客として訪日する。同首相の訪日は5回目だが、どうなることか。

〇欧州・ロシア、中東
3日からローマ法王が中東湾岸地域で初めてアラブ首長国連邦を訪問するという。日本では大ニュースにならないが、欧米では結構大きく報じられている。これまでのキリスト教とイスラム教の関係を考えれば、この訪問は決して儀礼的なものではなく、政治的意味すら持つから要注意だ。
法王は3日夜にアブダビ到着、4日昼に公式歓迎行事、夜には宗教間対話の行事に参加する。アブダビにはフィリピン人メイドなどカトリック教徒が少なくない。これが両宗教の和解に繋がるか気になるところだが、それにしてもなぜアブダビなのだろう。本当はサウジアラビア、メッカ、メディナに行ければ良いのだが、時期尚早なのか。

〇南北アメリカ
カナダが4日にベネズエラに民主化を求める米州諸国でつくる「リマ・グループ」の緊急会合をオタワで開く。暫定大統領就任を宣言したベネズエラのグアイド国会議長の支援方法について議論するそうだが、そんな簡単に行くだろうか。カナダという国はこういう時に常に前向きのイニシャティブをとる傾向がある。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

29-2月5日 対日理解促進交流・インドネシアから若手外交官及び行政官が訪日
3-5日 ローマ法王がアラブ首長国連邦訪問
4日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
4日 日・モロッコ租税条約交渉 第1回会合(東京)
4日 ベネズエラに民主化を求める米州諸国でつくる「リマ・グループ」緊急会合(オタワ)
4-5日 ドイツ・メルケル首相が訪日
4-5日 日・アゼルバイジャン投資協定交渉 第1回会合の開催(アゼルバイジャン・バクー)
4-8日 国際麻薬統制委員会 第124回会合(ウィーン)
4-10日 中国春節休暇
5日 米国2018年12月貿易統計発表
5日 米国大統領一般教書演説
5-6日 ブラジル中央銀行、Copom
5-8日 UNICEF 執行理事会 第一定期会合(ニューヨーク)
5-13日 対日理解促進交流・インドネシア高校生らが訪日(北海道)
6日 欧州委員会冬季経済予測
6日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
6日 タイ銀行金融政策委員会
6日 フィリピン・ミンダナオ島でイスラム自治政府樹立の法律をめぐる住民投票(2回目)
6日 フアウェイ副会長が出廷(カナダ・バンクーバー)
6日 アリアン5(通信衛星Hellas-Sat 4等)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
6日か7日 ロシア1月CPI発表
6-7日 EU地域委員会(CoR)本会議 第133回会合(ブリュッセル)
7日 EU司法・内務相理事会 非公式会合(内務)(ブカレスト)
7日 メキシコ1月CPI発表
7日 2018年11月の米貿易収支(政府閉鎖による発表延期分)(商務省)
7日 ベネズエラ情勢の平和的解決に向けた中立国・機関による国際会議(モンテビデオ)
7-8日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
7-17日 ベルリン国際映画祭
8日 EU司法・内務相理事会 非公式会合(司法)(ブカレスト)
8日 ブラジル1月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
8日 ロシア中央銀行理事会
8日 朝鮮人民軍創建日(建軍節)
10日 スイスで都市開発の凍結を問う国民投票
10日 第61回米グラミー賞授賞式(ロサンゼルス)

【来週の予定】
11日 ユーログループ(ブリュッセル)
11日 メキシコ2018年12月鉱工業生産指数発表
11-14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
11-16日 ASEAN作業委員会(Working committee)(タイ・バンコク)
11-16日 ASEAN金融統合高級レベル委員会(Senior Level Committee on ASEAN Financial Integration)(バンコク)
11-16日 ASEAN財務・中央銀行次長作業グループ会議(Finance and Central Bank Deputies'Working Group Meeting)(バンコク)
12日EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
12日 ニュージーランド2019年議会開会
12日 マレーシアのナジブ前首相の初公判(クアラルンプール)
12-13日 UN ウィメン執行理事会 第一定期会合(ニューヨーク)
13日 米国1月消費者物価指数(CPI)発表
13日 ブラジル2018年12月月間小売り調査発表
13日 金正男殺害から2年
13-14日 中東の平和・安定に関する閣僚級国際会議(ワルシャワ)
13-14日 北大西洋条約機構(NATO)国防相理事会(ブリュッセル)
14日 UN軍縮委員会 組織会合(ニューヨーク)
14日 中国1月貿易統計発表
14日 18年10-12月期のユーロ圏域内GDP改定値(EU統計局)
14-15日 ロシア投資フォーラム(ロシア・ソチ)
14-15日 国際農業開発基金(IFAD)総務会 第42回会合(ローマ)
14-18日 サウジ・ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がパキスタンを訪問
15日 EU教育・青少年・文化・スポーツ理事会(ブリュッセル)
15日 中国1月CPI、PPI発表
15日 米国1月小売売上高統計発表
15日か18日 ロシア1月鉱工業生産指数発表
15-17日 ミュンヘン安全保障会議(独ミュンヘン)
15-17日 オーストリア・クルツ首相の訪日
16日 ナイジェリア大統領及び総選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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