外交・安保カレンダー(12月19-25日)

早いもので、今年もあと二週間となってしまった。今週もトランプ次期大統領の驚くべき発言を取り上げざるを得ない。12月2日の台湾総統との電話会談に続き、11日にも対中爆弾発言が再び炸裂した。なぜ「一つの中国」政策に縛られる必要があるのかと疑問を呈したのだ。どうやら、トランプ政権は中国に本気で喧嘩を売る気らしい。

今回のトランプ氏の発言は確信犯であり、米国との関係改善の可能性に関する中国側の希望的観測を事実上無意味にする内容だ。さすがの中国も今回ばかりは黙っていられないのだろう。17日、中国人民解放軍海軍はフィリピン本土に近い南シナ海公海上で米海軍の無人潜水探査機を奪取したという。

中国国防部は、「不審な装置を発見し、船舶の航行と人員の安全に危害が及ぶのを防ぐため識別調査した」と述べた。これはトランプに対する中国側の警告的報復だが、それでも今回の中国側の対応は抑制されたものだった。中国側が直ちに「装置の返還」に言及したことは、米国との決定的対立を望んでいないことを示すものだ。

米中関係はこれからもギクシャクする。今回はその始まりに過ぎないが、より重要な問題は、トランプ政権が「一つの中国」政策を対中交渉材料の一つと捉える可能性があることだ。そのような素人的アプローチは東アジアだけでなく、全世界の米国の同盟国を懸念させるだろう。トランプ大統領はまだ就任すらしていないのに・・・。

〇欧州・ロシア
欧州はもうクリスマス気分らしく、重要日程は殆どない。唯一ロシアでは22日に恒例のプーチン大統領による記者会見がある。トランプ次期大統領、シリア、日露関係などについて如何なる発言をするかに個人的には興味がある。

〇東アジア・大洋州
15-16日の山口と東京での日露首脳会議の結果に「国民の大半はガッカリしている」と与党幹事長が述べ、別の幹部はメディアが期待値を上げ過ぎたという。手応えありと高揚感を隠さなかったのは官邸の方だとマスコミは反駁する。今回だけで領土問題が動くと信じた向きが落胆するのは当然だろう。
しかし、冷静になって考えれば、一回でロシア側が譲歩するなどと期待する方がどうかしている。ある意味で、この問題では戦後の日本の基本的外交戦略のあり方そのものが問われている。戦略環境が激変しかねない東アジアで、日本が戦略的方針転換するか否かが問われるという認識が国民には必要だろう。

〇中東・アフリカ
シリアのアレッポでの戦闘の行方が気になる。ロシアはオバマの米国にどこまで協力するのか。プーチンはトランプとの交渉まで切り札を切らないのか。いや、そもそも、ロシアにはシリア問題を解決するインセンティブがあるのか、疑問に思う時もある。浮かばれないのは、無実のシリア庶民だ。それにしても、何とかならないものか。

〇南北アメリカ
19日に本当の米大統領「選挙」がある。各州で選ばれた大統領「選挙人」が大統領を選ぶのだ。厳密に言えば、彼らには「投票の自由」があるらしい。つまり、万一、数十人の選挙人が「造反」すれば、トランプ大統領就任はなくなる、というのだが・・・。この種の議論は時折聞く話だが、それ以上でも以下でもない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

12月19日 米国大統領選挙選挙人投票
19日 EU環境相理事会(ベルギー・ブリュッセル)
19日 EU・ウクライナ連合評議会第3回会合(ブリュッセル)
19日 外務省が国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題~開発センターの知見を生かして~」を開催
19日 日・リトアニア租税条約交渉の開始(東京)
19日 日本の国連加盟60周年記念行事の開催(東京)
19、21日 WTO、米国に関する貿易政策レビュー(スイス・ジュネーブ)
19-22日 平成28年度中南米大使会議の開催(東京)
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
21日か22日 ロシア1~10月貿易統計発表
22日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
22日か23日 ロシア11月雇用統計発表
23日 メキシコ11月貿易統計・雇用統計発表

【来週の予定】
12月26-27日 安倍首相が米国オバマ大統領とともにハワイを訪問(パールハーバー)
29日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP統計(速報値)発表
31日 ソマリア議会選挙(予定)
12月下旬 サウジアラビア2017年度(暦年)予算発表
12月中 UAE2017年度(暦年)ドバイ首長国政府予算発表
12月中 ラオス第8期第2回国民議会
12月中 黒海経済協力機構外相会合(セルビア・ベオグラード)
12月中 中央経済工作会議(中国・北京)
12月中 第4回北東アジアエネルギー安全保障フォーラム(韓国・ソウル)
12月中 イスラエルのネタニヤフ首相がアゼルバイジャン訪問
<日程未定>
12月12日から2017年3月31日のいつか ダライ・ラマが米次期大統領を訪問
2017年1月1日 マルタ、EU議長国就任
1日 ロシアが2017年のCIS議長国に
1日 アゼルバイジャンで税務の電子監査(e-audit)に関する法律が発効
1-31日 ダッカ国際見本市2017

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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