外交・安保カレンダー(11月7-13日)

今週8日は米大統領選挙の投票日だが、何故か今回の選挙は興奮しない。昨年夏以来、トランプ候補に振り回されてきたためか、どうも気分が高揚しないのだ。そりゃ、そうだろう。トランプが勝てば、どれほど多くの人が落胆することか。その衝撃は予想外だったBREXIT(英国のEU離脱)の比ではなかろう。

一方、ヒラリーが勝っても、状況は変わらない。彼女の勝利は有権者による祝福の結果ではなく、恐らく多くの人にとっては、「トランプ大統領」を阻止するための緊急避難でしかないからだ。この点については今週の産経新聞「World Watch」と週刊新潮のコラムに詳しく書いたので、時間があればお読み頂きたい。

筆者の関心は、大統領選挙の結果以上に、トランプ候補の各州での得票数、各州での知事及び上院・下院議員選挙の結果だ。これら全体を見た上でないと、今回の大統領選挙の結果を正確に分析評価することは難しいからだ。今回は数十年に一度の米国内政地殻変動が起きている可能性があるので要注意だ。

本日、突然NYTから電話インタビューがあった。質問は「今回の大統領選挙を日本はどう見ているか」だったので、筆者はこう答えた。

「米国は国際関与を続けるか、それとも孤立主義的傾向に流れるかの分岐点にいる。勝者が米外交政策コミュニティの主流に近いヒラリーであれば、日本は付き合い方を心得ている。逆にトランプであれば、日本だけでなく、世界中の米国の同盟国に共通する大問題を惹起する。その場合は、日米問題ではなく、米国対同盟国連合の大問題となるだろう。」

「米国民がトランプを選び、トランプ大統領が同盟国を蔑ろにするなら、各同盟国は独自にそれぞれの国益を最大化すべく対応せざるを得なくなる。そのことを米国民は正確に理解する必要がある。今回の選挙は米国の国のあり方を決める選挙となるかもしれない、云々・・・・」

米国民の良識を信じたいところだが、あの英国民ですら、Brexitでは彼らの良識が発揮されなかったではないか。民主主義は短期的に正しい判断を下すことを必ず保証する制度ではない。あくまで、長期的に見て、間違った判断を下す可能性の最小化を保証するだけだ。このことを我々は肝に銘じるべきである。

〇欧州・ロシア
6-8日に中国の李克強・国務院総理が訪露しプーチン大統領と会談する。偶然かどうかは知らないが、7日はロシア革命99周年の記念日だ。9-11日には韓国とカザフスタンの高官が経済協力について話し合う。12日にはモルドバで大統領選挙の第二回投票がある。

〇東アジア・大洋州
8日には財務大臣を団長とするミャンマーの経済使節団が訪日する。9-10日にはかの暴言王ドゥテルテ比大統領がマレーシアを訪問する。10-12日にはインドのモディ首相が訪日する。日印首脳会談では経済と防衛協力について議論されるそうだが、進展は見られるだろうか。

〇中東・アフリカ
7日からモロッコのマラケシュで国連気候変動枠組み条約関連の第22回会合が開かれる。10日からはロシアのメドベージェフ首相がイスラエルとパレスチナを訪問するそうだが、一体何を話すのだろうか。13日にはロシア連邦院(上院)議長がイランを訪問してイラン議会のラリジャニ議長と会談する。これも一体何を話すのか、興味津々だ。

〇南北アメリカ
8日の米国大統領、上院下院議員、知事選挙以外に特記事項なし。

〇インド亜大陸
6日から英国のメイ首相が訪印する。8日にはインドが中国とのテロ対策協力に関する合意に調印する。中印関係でもこうした実務的関係は進んでいるらしい。今週はこのくらいにしておこう。

11月7日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ベルギー・ブリュッセル)
7日 「JETプログラム30周年記念式典及び記念レセプション」等の開催
7-8日 中国の李克強首相がロシア訪問
7-9日 FHC China 2016(中国・上海)
7-11日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
7-18日 国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)(モロッコ・マラケシュ)
8日 中国10月貿易統計発表
8日 米国大統領選挙一般投票、議会・州知事選挙
8日 プエルトリコ議会選挙
8日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
8-9日 WTO、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(スイス・ジュネーブ)
8-15日 JENESYS2016 招へいプログラムの実施(対象国:ASEAN10か国、東ティモール及びインド、テーマ:平和構築交流)
9日 中国10月CPI発表
9日 ブラジル10月IPCA発表
9日 メキシコ10月CPI発表
9日 欧州委員会、秋季経済予測発表
9日 ウクライナ東部紛争調整連絡調整グループ会合(ベラルーシ・ミンスク)
9-11日 香港オプティカル・フェア(香港)
9-11日 VIETWATER 2016(大気汚染制御装置、工業用水処理などの展示会)(ベトナム・ホーチミン)
10日 ブラジル9月月間小売り調査発表
10日 ロシアのメドベージェフ首相がイスラエル訪問
10-12日 香港国際ワイン&スピリッツフェア
10-12日 インドのモディ首相の訪日
11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
11日 EU外相理事会(ブリュッセル)
11-13日 インフォテル(スリランカ・コロンボ)
13日 モルドバ大統領選挙

【来週の予定】
11月14日 中国10月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14-15日 EU外相理事会(ブリュッセル)
14-15日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
14-16日 国際原子力機関理事会(オーストリア・ウィーン)
14-17日 第4回ホームランドセキュリティー&サイバーセキュリティー国際会議(Israel HLS&Cyber 2016)(イスラエル・テルアビブ)
14-18日 シンガポール・フィンテック・フェスティバル
14-18日 ガウク・ドイツ連邦共和国大統領の訪日
14-18日 WFP執行理事会(Second regular session)(イタリア・ローマ)
14-27日 インド国際貿易フェア2016(インド・ニューデリー)
15日 米国10月小売売上高統計発表
15-16日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
16日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
16日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
16日 インド9月鉱工業生産指数発表
16日か17日 ロシア1~10月鉱工業生産指数発表
16-18日 コスモプロフ・アジア(Cosmoprof Asia)2016(香港)
17日 WTO物品貿易理事会(スイス・ジュネーブ)
17日 米国10月CPI発表
17日 ユーロスタット、10月CPI発表
17日 ISS第50次/第51次長期滞在ミッションのためソユーズMS-03を打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール)
17-18日 APEC閣僚会合(ペルー・リマ)
17-18日 国際原子力機関理事会(ウィーン)
17-19日 APEC・CEOサミット/APECビジネス諮問委員会(ABAC)首脳との対話(ペルー・リマ)
18日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
19-20日 APEC首脳会議(リマ)
19-20日 日ロ首脳会談(ペルー・リマで開催のAPEC首脳会議時に)
20日 ハイチ大統領選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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