外交・安保カレンダー(10月31日-11月6日)

早いもので来週8日は米大統領選挙の投票日だ。それにしても長い一年半だった。昨年夏から米国は勿論、世界中がドナルド・トランプという候補者に翻弄されてきたといって過言ではない。あの段階で今日の状況を予測できた人は殆どいない。トランプ自身も予想していなかったのではないか。日本人で予測していたという人がいたら、その人物は嘘つきか自意識過剰に違いない。

という訳で、今年ばかりは筆者も結果を予測するのは止めている。誰もが言いたい結論は一つだろうが、その常識的な予測がことごとく外れてきたからだ。「泡沫候補」が消えず、通常ならレッドカードの暴言が許されたばかりか、支持を広げ、本命が脱落し、遂に前代未聞の大衆迎合主義候補者が米国主要政党の大統領候補にまで上り詰めた。米国の専門家でも読めなかった結末だ。

筆者の今の関心は結果よりも、大統領選挙後の米国内政の動きだ。トランプ候補がコテンパンに負ければ、共和党の既存指導層にも反撃のチャンスがある。トランプ現象という「悪夢」は終わり、共和党再生を呼びかけることも可能だからだ。これに対し、トランプが惜敗すれば、共和党の現指導部は逆に信任を失う。トランプ現象は、文字通り、共和党をtake-over乗っ取るのだ。

ちなみに過去数回の選挙で顕著なのは、投票日が近付くにつれて、両候補の支持率が拮抗したり、劣勢だった候補が逆転したりすることが頻発することだ。これが米国民主主義のバランス感覚なのか、それとも新聞を売り視聴率を高めたい米国マスメディアの商業主義なのかは良く判らない。いずれにせよ、運命の日は、泣いても笑っても、あと一週間。米国有権者の良識を信じたい。


 
〇欧州・ロシア
日本では大きなニュースにならないが、31日からローマ法王がスウェーデンを訪問する。目的は宗教改革500周年を記念してルター派とローマカトリックが共同で式典を挙行するそうだ。500年経ってもカトリックとプロテスタントの蟠りは残っているのか。そういえばポーランド人はプロテスタントを「改革派カトリック」と呼んでいたっけ。

 
〇東アジア・大洋州
ミャンマーのスーチー女史が1日から訪日する。肩書は国家最高顧問だが事実上の元首だ。形式は公式実務訪問賓客であり、滞在中は天皇皇后両陛下が御引見になり、安倍晋三内閣総理大臣が会談し夕食会を催すというから、元首並みの扱い。文句はないが、彼女は大統領になれない。何かがおかしいと思うのだが。

 
〇中東・アフリカ
イラク・モスールの攻防戦は今も続いている。イラク正規軍などがもうすぐ市内に入るとの報道もある。入ったら入ったで地獄が待っているし、入らなければ物事は始まらない。ISは自爆するか、市民を巻き添えにするか、髭を剃って一般市民を装い生き延びようとするかのいずれかだろうが、どれ一つとして悲劇を伴わないものはない。

 
〇南北アメリカ
今週はクリントンのメール疑惑再捜査問題で大騒ぎが続いている。今回は現職のFBI長官が議会の共和党議員に対し再捜査を書簡で通報したというが、確かFBI長官は共和党員だったはず。ここに来て党派対立が再燃したのか、それとも実際に法令違反の嫌疑が深まったのか。この問題も大山鳴動して鼠一匹に終わるのか。
それにしても、このFBI長官の対議会書簡については民主党関係者が批判している。通常の司法手続きなら、投票日の10日前にはこんな動きはしない。こうなると、どこからが司法手続きで、どこからが政治権力闘争なのか分からなくなる。米国でも司法と政治の関係は難しい。今頃、ドゥテルテ大統領が高笑いしているのではないか。

 
〇インド亜大陸
6日から英国首相がインドを初訪問するという。今週はこのくらいにしておこう。


10月31日-11月1日 第5回日英原子力年次対話の開催
31日-11月3日 ロシアのマトビエンコ上院議長が日本訪問
31日-11月4日 ハバナ国際見本市(キューバ・ハバナ)(ジェトロがジャパンブースを設置)
31日-11月9日 オランダのウィレム・アレキサンダー国王陛下及び同王妃陛下がオーストラリアとニュージーランドを訪問
11月1日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
1日 パラオ大統領選挙
1日 H-IIAロケット31号機による静止気象衛星「ひまわり9号」(Himawari-9)の打上げ(種子島)
1-2日 米国FOMC
1-3日 コロンビアのサントス大統領が英国を訪問
1-5日 2016中国国際工業博覧会(中国・上海)
1-5日 アウン・サン・スー・チー・ミャンマー連邦共和国国家最高顧問の訪日
1-10日 バグダッド国際見本市
2日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
2-4日 インドのムカジー大統領がネパールを訪問
2-5日 フード・ウイーク・コリア(Food Week Korea)2016(韓国・ソウル)
3日 ユーロスタット、9月失業率発表
3日か7日 ロシア10月CPI発表
3-4日 EU Arab World Summit(ギリシャ・アテネ)
3-6日 第16回中国西部国際博覧会(中国・成都)
4日 米国9月貿易統計、10月雇用統計発表
4-13日 ラゴス国際見本市(ナイジェリア・ラゴス)
5-9日 第117セッション国際海事機関(IMO)理事会
6日 ブルガリア大統領選挙
6日 ニカラグア総選挙
6-9日 ナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領の訪日

【来週の予定】
11月7日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ベルギー・ブリュッセル)
7-8日 中国の李克強首相がロシア訪問
7-9日 FHC China 2016(中国・上海)
7-18日 国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)(モロッコ・マラケシュ)
8日 中国10月貿易統計発表
8日 米国大統領選挙一般投票、議会・州知事選挙
8日 プエルトリコ議会選挙
8日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ベルギー・ブリュッセル)
8-9日 WTO、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(スイス・ジュネーブ)
9日 中国10月CPI発表
9日 ブラジル10月IPCA発表
9日 メキシコ10月CPI発表
9-11日 香港オプティカル・フェア(香港)
9-11日 VIETWATER 2016(大気汚染制御装置、工業用水処理などの展示会)(ベトナム・ホーチミン)
10日 ブラジル9月月間小売り調査発表
10-12日 香港国際ワイン&スピリッツフェア
10-12日 インドのモディ首相の訪日
11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
11日 EU外相理事会(ベルギー・ブリュッセル)
11-13日 インフォテル(スリランカ・コロンボ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

« 外交・安保カレンダー(10月24-30日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(11月7-13日) »

« 外交・安保カレンダー(10月24-30日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(11月7-13日) »

アーカイブ