外交・安保カレンダー(6月20-26日)

今週の焦点は、やはりBrexit(英国のEU離脱)の是非に関するイギリス国民投票の行方だろう。改めて英国には二面性があることが分かった。あの冷静沈着で理性的な英国紳士と、破壊的な暴動が珍しくないあの英国サッカーファン。一体どちらがUnited Kingdomなのか。恐らく答えは「両方とも英国的」ということだろう。

理性で考えればEU離脱はあまりにリスクが大きい。離脱派は口を開けば、EUは加盟国の主権を制限する非民主的組織だ、不法移民を入れて公共サービスを劣化させるな、EU分担金は高過ぎる、貿易ルールは不公平、規制は不必要、官僚組織は非効率と主張する。要するに英国は欧州の言う通りにはならないという感情論だ。

これに対し、残留派は正論で反論する。国際組織である以上、EUに一定の制約があるのは当然、EU加盟維持はそうした短所を超える利益がある、残留すれば英国経済は繁栄を続け、英国の国際的影響力は続き、安全保障は確保され、雇用と対英投資は増えるので、英企業のリスクは減るという。理性では十分理解可能なのだが・・・。

それでも、人口6500万もいる自由民主主義国家で、有権者の過半数に理性的な判断をしてもらうことが如何に難しいことか。特に、貧富の差が拡大し、社会的不公平が顕在化する中で、負け組が夢を持たなくなった社会で、人々に冷静な判断を求めることは容易ではない。これは英国だけの問題ではなくなりつつある。


〇欧州・ロシア 
イギリスが国民投票を行う23日にフランスでは最近の労働法改正に反対するデモが計画されているという。24日にはベルギーの労組もゼネストを計画しているそうだ。一体欧州は如何なる方向に進む(または退く)のだろうか。英国民の決断は、如何なるものであれ、欧州大陸にも波及するだろう。

〇東アジア・大洋州
中国の習近平国家主席が18-22日にセルビア、ポーランドを訪問した後、23-24日にウズベキスタンで開かれる上海協力機構首脳会議に出席する。この首脳会議は中露の主導権争いが見物なのだが、ここで「一帯一路」が如何に語られるかに興味がある。露の対中央アジア影響力は強く、中国の思う通りにはならないと思うのだが。
もう一つ中国関連で興味深いのは、25-26日にAIIBが最初の年次総会を開き、投資案件を発表するというニュースだ。最初とはいえ、いやむしろ、最初が肝心だからこそ、どの程度の規模の優良案件がいくつあるかが気になるところだ。

〇中東・アフリカ
イラク政府はファルージャを奪還したと大騒ぎでいるが、そのバグダッドではシーア派内部の亀裂が深まりつつあり、およそ中央政府の統治機構が機能しているとは言い難い。そもそも、ファルージャに入った部隊の多くがシーア派主体なら、イスラム国を放逐しても、問題は残る。イラク国内の「モグラ叩き」ゲームは当面終わらないだろう。

〇アメリカ両大陸
民主党ではクリントンとサンダースが会談するなど、党内結束の可能性が見えてきた。時間はかかるだろうが、少なくとも分裂は回避できそうな兆しがある。これに比べれば、共和党はまだ星雲状態だ。トランプが「自分のやり方でやる」と言い出したということは、誰も鈴を付けられなくなるということ。本来なら、ここら辺で沈没していくはずなのだが・・・。今年ばかりは実に読みが難しい。

〇インド亜大陸 
インドとパキスタンの首脳がウズベクの上海協力機構首脳会議に参加するが、両者が会談するかどうかも気になるところだ。今週はこのくらいにしておこう。


6月20日-21日 ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)とASEAN事務総長との対話(ジャカルタ)
20日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
20日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
20日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
20日 ユンケル欧州委員会委員長がギリシャを訪問
21日 イスラエルのルーベン・リヴリン大統領が欧州理事会を訪問
21日か22日 ロシア1~4月貿易統計発表
21-22日 日中(山東省)高齢者産業交流会(中国・煙台)
21-23日 OECD閣僚理事会(メキシコ・カンクン)
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
22日 南ア5月CPI発表
22-23日 欧州議会本会議(ストラスブール)
22-24日 アジア欧州会合(ASEM)第7回文化相会合(韓国・光州)
22-25日 食品見本市「FOOD TAIPEI 2016」(台湾)
23日 ECB一般理事会(フランクフルト)
23日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
23日か24日 ロシア5月雇用統計発表
23日 英国でEU残留・離脱を問う国民投票
23-24日 上海協力機構首脳会議(ウズベキスタン・タシケント)
24日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
24日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
26日 スペイン議会再選挙
26日 拡張パナマ運河供用開始
26-28日 世界経済フォーラムサマーダボス会議(中国・天津)

【来週の予定】
6月27日 メキシコ5月貿易統計発表
27日 香港5月貿易統計発表
27-28日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
27-28日 UN-Women執行委員会年次総会(ニューヨーク)
28日 メキシコ5月雇用統計発表
28日 米国第1四半期GDP(確定値)発表
28-29日 欧州理事会(ブリュッセル)
28-30日 国連工業開発機関(UNIDO)第4回グリーン産業会議(韓国・蔚山)
28日-7月8日 第40回ダルエスサラーム国際見本市(サバサバ展示会)(タンザニア)
29日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
29-30日 G20エネルギー相会合(北京)
30日 ドイツ5月労働市場統計発表
30日 モンゴル国家大会議選挙
30日 アイスランド大統領選挙
6月下旬 ブラジル5月月間雇用調査発表
6月下旬 アメリカのバイデン副大統領がアイルランドを訪問
6月中 台湾の蔡英文総統がパナマとパラグアイを訪問
6月中 シンガポールのリー首相がミャンマーを訪問
6月中 世界銀行、世界経済見通し発表
6月中 国連工業開発機関(UNIDO)第4回グリーン産業会議(韓国・蔚山)
6月中 アジア欧州会合(ASEM)第7回文化相会合(韓国・光州)
6月中 欧州復興開発銀行(EBRD)のチャクラバルティ総裁がアゼルバイジャン訪問
6月中 ロシア・プーチン大統領が中国訪問
6月中 ロシア・ナルィシキン下院議長が日本訪問
6月中 シンガポールのイスワラン貿易産業大臣がスリランカを訪問
7月1日 香港特別行政区設立記念日
1日 スロバキアがEU議長国に就任(2016年12月まで)
1日 黒海経済協力機構外相会合(ソチ)
1日 ベラルーシが1万分の1のデノミを実施
1日 ユーロスタット、5月失業率発表
1日 イタリア新選挙制度施行
1日 ブラジル5月鉱工業生産指数発表
1日 第11回太平洋同盟首脳会議(チリ・プエルトバラス)
1日か4日 ロシア第1四半期需要項目別GDP統計(速報値)発表
2日 オーストラリア総選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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