外交・安保カレンダー(4月25日-5月1日)

今週の原稿は25日深夜ソウルのホテルで書いている。北九州市での講演の後、そのまま福岡空港から仁川に飛んだ。今回の韓国出張では当地の有力シンクタンク・アサン研究所の年次総会に参加する。米国のアジア村の連中が大勢集まるが、同時に中国に配慮した議題も取り上げられる。やれやれ、相変わらずだ。

空港からタクシーで夜のソウルに入る。ここも東京と同じ、夜遅くまで皆楽しそうに飲んでいる。米有力紙香港特派員の友人からメールで、「北朝鮮はいつ核実験をすると思うか、実行した場合、韓国はどう対応するか」と聞いてきた。タクシーの中で「恐らく何もしないだろう」と呟いた。とにかく危機感が感じられないのだ。

光輝く夜のソウルの街並みを見るたびに、この国はもう小さな戦争はできないだろうと確信する。海軍の哨戒艇が撃沈されようが、国境近くの島が砲撃されようが、韓国は全面戦争などする気はない、いや、できないのだ。当然だろう、1950年代とは異なり、今の韓国には失うものが多過ぎるのだから・・・。

前回はワシントンのSE(南東)地区が再開発され白人が移り住んだ話をしたが、昔住んでいたアフリカ系貧困層住人はもうそこには住めない。米国の貧富の格差の拡大を象徴する場所だが、ふと韓国ソウルにもそのような場所があるのではないかと思うようになった。

米国のダークサイドは、トランプの支持者、すなわち白人・男性・ブルーカラー・低学歴層が中心だと以前書いたが、ソウルにもLower Middle Class(中産階級の下)から下層階級の中に、米国の脱落組と同様「怒っている」人々がいるのではないかと推測した。その怒りの矛先が今回の総選挙で朴大統領に向かったのだろうか。ソウルの友人たちにそっと聞いてみよう。


〇欧州・ロシア 
25日にオバマ大統領がロンドンからドイツに入る。同大統領は米アトランティック誌の最新号でサウジや英国に厳しいコメントをしたと報じられた。例えば、サウジを同盟国と扱うことを明らかに不快に感じていたとか、リビア・シリアでの外交的失敗は英首相の指導力不足にも原因があると考えた、といった具合だ。
何故そんなことをサウジや英国訪問の前にわざわざ言うのだろう。事実ならば、サウジ王族や英国政界が猛反発しても不思議ではない。サウジや英国は米国の友人ではなかったのか。一方で、メルケル首相は「オバマ大統領が尊敬する数少ない首脳の一人」だそうだ。やはり、オバマ大統領は「外交音痴」なのかもしれない。

〇東アジア・大洋州
気になるのは北朝鮮の核実験の噂だが、五月の連休が近づき、東アジアでは日中を中心に外交的動きがある。28日にはロシア外相が訪中する。28日から自民党の二階代議士が中国と韓国を訪問する。韓国では日中韓三極フォーラムがあり、中国外相が参加するかもしれないという。29日には安倍首相が一連の欧州外遊を開始する。30日には岸田外相が訪中する。皆さま、お忙しいことです。

〇中東・アフリカ
中東ではあまり大きな動きがないが、トルコ、シリア、イラクなどではニュースにもならない小さなテロや戦闘が起きている。イラク軍・治安部隊はチクリス川沿いではヒート付近で、ユーフラテス川沿いではサマッラ付近でISと激戦を続けているが、最も驚くべきはシーア派ミリシアの台頭だ。
イラク中部のスンニー地域で戦うイラク正規軍にはシーア派ミリシアが同行している、というか一緒に戦っているのだ。これと同様に、北部ではクルド系のペシュメルガがイラク正規軍の代わりに事実上地域の治安を維持している。要するに、どこもかしこも、自前の武装勢力でないと信用できない、ということなのか。
これでは、仮にイラクの正規軍がモースルのISを掃討できたとしても、その後にシーア派がイラク中部で勢力を拡大するのだとすれば、イラク内政問題はちっとも解決しない。イラク各宗派の連中は、このようなモグラ叩きをいつまで続けるつもりなのか。彼らが部族主義を克服できる日は本当に来るのだろうか。絶望的になる。

〇アメリカ両大陸
米大統領選予備選挙がコネティカット、メリーランド、ペンシルベニアなど5州で行われる。最近はトランプが共和党の代議員の過半数を占めるか否かに関心が集中しているが、数字は怖い。トランプは仮に過半数に達しなくても、限りなくそれに近い数字を取る可能性が高いからだ。おい、共和党、一体どうするんだ?もう手遅れだぞ。

〇インド亜大陸は特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

4月25日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
25日 国連のパン・ギムン事務総長がアゼルバイジャン・アルメニア・ジョージア訪問
25-26日 ウズベキスタンのカリモフ大統領がロシア訪問
25-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
25-28日 旅行関連見本市「アラビアン・トラベル・マーケット」(UAE・ドバイ)
25-26日 第11回日本・シンガポール・シンポジウム(東京)
25-29日 米国のオバマ大統領がフランス・イギリス・イタリア・ドイツの首脳との会合のため、ドイツ訪問
26日 米国大統領予備選挙(コネティカット、デラウェア、メリーランド、ペンシルベニア、ロードアイランド州)
26日 メキシコ3月貿易統計発表
26-27日 日中韓3カ国環境相会合(静岡県静岡市)
26-27日 米国FOMC
26-27日 ブラジル中銀、Copom
26-27日 イランのデフガーン国防相がロシア訪問
27日 英国第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
27日 メキシコ3月雇用統計発表
27日 オーストラリア第1四半期消費者物価指数発表
27-29日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
27-30日 マラケシュ航空ショー(モロッコ・マラケシュ)
28日 ドイツ3月労働市場統計発表
28日 米国第1四半期GDP(速報値)発表
28-29日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
29日 ユーロスタット、3月失業率発表
29日 ロシア中銀理事会
29日 フランス第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
29-30日 G7情報通信相会合(香川県高松市)
下旬 ブラジル3月月間雇用調査発表
4~5月 インドのタミル・ナドゥ、西ベンガル、ケララ各州議会選挙(予定)
5月1-2日 G7エネルギー相会合(福岡県北九州市)

【来週の予定】
5月2日 中国メーデー休暇
3日 米大統領予備選挙(インディアナ州)
3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
4日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
4日 米国3月貿易統計発表
5日 ウェールズ国会議員選挙
5日 スコットランド議会選挙
5日 北アイルランド議会選挙
5-9日 ASEAN高級実務者会合(SOM)(ラオス・ルアンパバン)
6日 米国4月雇用統計発表
6日 ブラジル4月IPCA発表
6日か10日 ロシア4月CPI発表
8日 中国4月貿易統計発表

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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