外交・安保カレンダー(6月23-29日)

先週後半あたりから、ようやく日本のマスコミでも現下のイラク情勢に関心が集まるようになった。この数日間は中東情勢について各方面から照会や質問を受けている。中東屋の端くれとしては「実に有難い」のだが、日本との関係で質問されるのは「ガソリン価格」の行方ばかり。当然なのだろうが、やはりショックだ。

今も某テレビ局から自宅に戻り、この原稿を書いている。日本の一般視聴者に現在イラクで起きている政治軍事現象を判り易く説明するのは意外に難しい。事実関係の詳細よりも、このスンニ派過激組織ISISという現象がイラクの、中東の、そして世界の情勢にとって何を意味するかを正確に理解する必要があると痛感した。

イラク国内では、皮肉にも、ISIS現象は民主化し弱体化したイラク中央政府の求心力低下の結果だ。また、肥沃な三日月地帯という視点で見れば、百年前に英仏がこの地域を分割したツケが回ってきたということか。グローバルには、米国が中東で戦った十年間にアジアと欧州で中露による「力による現状変更」が顕在化したということ。

当然ながら中東のプレーヤーは、「中東における米国のプレゼンスは低下し、新たな地殻変動の連鎖反応が始まった」と本能的に感じ、米国の足元を見始めている。百年前のオスマントルコ帝国崩壊は今もその余震が続いていると見るべきだ。新たな均衡点に達するまで今後も地殻変動は続くだろう。ISISはその第一幕に過ぎない。

中東はこのくらいにして、筆者が今週注目するのはプーチンのオーストリア訪問だ。歴史的に見ると、ロシアとオーストリアは戦略的な親和性を持っている。両国にとって共通の敵はフランスやトルコであり、ハプスブルグ家とロマノフ家の時代から共通の利益は少なくないのだ。そのオーストリアにプーチンは何をしに行くのか。あのプーチンが無意味な親善訪問などする筈がない。

筆者は、ウクライナ情勢が燻り続ける中で、ロシアは欧州の分断を図っていると見る。欧州は決して一枚岩ではない。ロシアに近ければ近いほど親米になるのは冷戦後の特徴だが、同時に、ロシアから離れれば離れるほど親露となる傾向もある。これからもプーチンの欧州中小国に対する外交からは目が離せない。今週はこのくらいにしておこう。
 
6月23日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
23日 メキシコ5月雇用統計発表
23日 沖縄慰霊の日
23日か24日 ロシア1-4月貿易統計、5月雇用統計発表
23-26日 パラグアイ大統領、訪日
23-27日 国連環境計画(UNEP)国連環境総会第一回会期(ナイロビ)
23-28日 カナダ財務省、英、独、ポーランド訪問
24日 フィリピン大統領、訪日
24日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
24日 米国議会選挙予備選(コロラド州、メリーランド州、ニューヨーク州、オクラホマ州、ユタ州)
24日 ロシア大統領、オーストリア訪問
25日 欧州連合常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
25日 EU米国法相及び内務相会議(アテネ)
25日 米国第1四半期GDP発表
25日 リビア議会選
25日 パレスチナ自治政府大統領、モスクワ訪問
25-27日 インド外相、バングラデシュ訪問
25-28日 台北国際食品見本市、台北国際食品加工機械&製薬機械見本市、台北国際包装工業見本市、台北国際ホテル&レストラン施設用品見本市、台北ハラールフード見本市
25日-7月4日 石原外務大臣政務官、モザンビーク、ギニア、ブルキナファソ訪問
26日 ブラジル5月月間雇用調査発表
26-27日 欧州理事会(ブリュッセル)
26-30日 タジキスタン外相、訪日
26-30日 インド副大統領、訪中
26日-8月1日 多国間海上軍事演習「環太平洋合同演習(リムパック)」開始(米ハワイ)
27日 メキシコ5月貿易統計発表
27-28日 アジア太平洋経済協力(APEC)鉱業担当相会合(北京)
 

【来週の予定】
29日 ラマダン(断食月)開始
29日 リトアニア国民投票
30日-7月2日 アフリカ鉄道会議・展示会「Africa Rail」(ヨハネスブルク)
7月1日 EU統計局(ユーロスタット)、5月失業率発表
1日 イタリアがEU議長国に就任(12月末まで)
1日 台湾月額最低賃金引き上げ実施
1日 ベトナムで改正土地法施行
1日 ノルウェー首相、マラウィ訪問
1-2日 アフリカ港湾会議「Africa Ports&Harbours」(ヨハネスブルク)
1-3日 欧州議会本会議(ストラスブール)
2日 EU統計局(ユーロスタット)、第1四半期GDP成長率発表
3日 米国6月雇用統計、5月貿易統計発表
3日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
4日 米独立記念日(ニューヨーク市場はすべて休場)
4-6日 ブラジルで日本祭り(Festival do Japao)2014(サンパウロ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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