F35プログラム、カナダで炎上中?!

 4月3日付のディフェンス・ニュースで、カナダのF35調達プログラムについて興味深い記事があると、とある人が教えてくれた。ディフェンス・ニュースとは、国防情報専門紙で、通信社の記事を転載しただけの記事もあるが、各国の兵器開発や調達に関する情報が非常によくカバーされている。ハードコピーは週刊だが、ウェブ版は毎日更新されており、世界の国防産業関係者にとって必読の新聞と言っても過言ではない。
 教えてもらった3日付AFP通信の記事「カナダの監査監、F-35プログラムを厳しく批判(Canada Auditor General Blasts F-35 Program)」を読むと、カナダのF35調達プログラムが相当こじれているようだ。カナダは1997年以来、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、トルコなどと共に米国主導のF35戦闘機開発に参加してきており、このプログラムを最も熱心に支持してきた国だ。2010年には、F35戦闘機を65機導入することも決定している。
 そのカナダで、会計監査監が「国防省はF35調達プログラムのコストについて議会に対して、誤解を招くような情報を提供してきた」という報告書を出したという。この記事によれば、マイケル・ファーガソン会計監査監は、国防省は「F35導入ありき」であったため、節目節目の決定に際して、必要な承認を得ずに、書類も揃わない状態で調達プロセスを進めた、と断じ、「国防省は議会に対して調達コストについての完全な情報を提供しなかったし、意思決定権者に対してプログラムが直面しているリスクについて十分に情報提供しなかった」報告書に記したという。
 特に調達コストについてファーガソン監査監は国防省は「最も楽観的なシナリオだけが提供された」と厳しく批判しているようだ。カナダの国防省は調達コスト見積もりを機体(90億ドル)とメンテナンス(70億ドル)の総額160億ドルとしたようだが、監査監の見積もりでは、250億ドル以上かかる見込みで、この報告書の内容に対して野党は強く反発し、首相を非難。野党からの追求や世論の反発をかわすため、政府は、戦闘機購入予算の上限を、一機あたり90億ドルという当初の見積もり額で凍結し、調達の主管を国防省から公共事業(Public Works)省に移管することを表明した。さらに、公共事業大臣は公正な手続き(due process)、監査、透明性が適用されない限り、次世代戦闘機購入はしないというステートメントまで出したという。
 この記事でとりわけ興味深かったのは、1997年からF35開発プログラムに参加し、2010年の段階でF35の導入を決めたカナダでさえ、第一号機の納入予定は2019年だったということだ。ちなみに、米国防省は、昨年12月31日の時点では、航空自衛隊が導入を決めた米空軍が使用するF35A、海兵隊、海軍が使用するF35Bそれぞれについて、量産の目安となる初期運用能力(initial operating capability)達成宣言が出せる時期について「現時点では未定」という評価を議会に提出した報告書の中で下している。
 カナダのように初期段階から開発に参加しているわけでもなく、導入決定もカナダに遅れをとった日本が本当に2017年度末までに最初の4機の納入を受けることができるのか?実際の調達費用についても、量産に入る前の機体を購入する場合、どう考えても単価は割高になるだろう。しかも、経済の低迷を受け、イタリアはF35の購入機数を当初予定していた130機から90機前後まで減らすことを決め、イギリスも購入機数について再検討している。米軍も、現在予定している機数が本当に取得できるかは、今後の国防予算環境を考えると不透明だ。その結果、調達費用が当初見積もりを遥かに上回る額となってしまった場合、伸びが期待できない防衛予算の中で日本はどのように対応するのか。オランダ向けのF 35の一号機が試験段階に入ったとは言え、日本のF35取得の道のりにはまだまだ不安材料が多い。

(辰巳由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)

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