DC道場フェロー・レポート(下院編・11月8日)

 ホワイトハウスと言えば、言わずと知れたアメリカ合衆国大統領が執務し、起居する場所であり、日本でいうところの首相官邸・公邸に相当する。ものの本によれば、1792年に初代大統領であるジョージ・ワシントンの手によって礎石が置かれ、2代目以降、つまり彼以外の歴代大統領は全員ここに住み且つ執務しているそうだ。独立戦争の際にイギリス軍に焼き討ちにされたりしながらも、修復を施して使い続けている。この建物の中で、数々の歴史的決断がなされてきたのである。南北戦争時の北軍の司令部が置かれ、数々の世界大戦への参戦が決定され、キューバ危機の回避策が練られ...、数え上げればきりがない。

 第3代大統領のトーマス・ジェファーソンの時代から一般公開されてきたそうだが、2001年9月11日以降、一般公開は中止されたまま現在に至っている。しかし、見学が全くできないというわけではない。国会議員の事務所を介して申し込みをすると、半年ほどかかって許可が降りるそうだ。各種行事とのスケジュール調整を勘案しながら申請者一人一人の審査を行っているので、待機者が異常に増えてしまっているのだろう。私がフェローとして在籍している下院議員事務所が、以前に関係者からの見学依頼を申請していたところ、11月頃には許可が降りそうだということだったので、10月に事務所に来たばかりの私についても追加申請を出してくれていたのである。私の場合は事務所スタッフということで、便乗させてもらえることになったようだ。昔ワシントンDCで働いていた人から、「ホワイトハウスの地下には、大統領が遊ぶための映画館やボウリング場がある」と聞かされていたので、見るのを楽しみにしていたが、残念ながら見学が許可されているのはグランドフロアー(日本でいう1階部分)、1stフロアー(日本でいう2階部分)のみであった。その上の2ndフロア、3rd フロアは、大統領と家族、及びそのゲストとなる人のために使われている。鞄等の手荷物は一切持ち込みが禁止されており、カメラ等の撮影機器も勿論禁止である。カメラ機能の付いた携帯電話は持ち込み可能であるが、使用した場合は取り上げられるらしい。建物の内外にごつい警官が大勢うろうろしているので、敢えてルール違反を犯す気も起きないであろう。

 Visitor Entrance から入っていくと、歴代大統領の肖像画が飾ってあるのが目に入る。最近のファーストレディ達の肖像画を飾るThe Vermeil Roomが左側にあり、右側には大統領が使用した食器(陶器の皿やグラス等)が展示されている。アメリカ合衆国の象徴として使われる鷲の絵が描かれたものが多い。リンカーンの使用したグラスは、キリコ状の模様が施され、意外に可愛らしい。1stフロアに上がると、East Roomに進む。ここはホワイトハウスの中でも一番広い部屋であり、レセプション・セレモニー・記者会見等に使用される。リンカーンやJFKの遺体は、葬儀の前に一旦ここに安置されたそうである。順路に従って進むと、次はThe Green Room、The Blue Room、The Red Roomという並びになっている。これらの部屋は、レセプションや応接に使われている。中でもThe Blue Roomは建物の中心部に位置しており、中央のテラスが半円形にせり出している部分の1stフロア(2階)に相当している。JFKが自分の幼い子供たちと戯れている有名な写真は、このThe Blue Roomであり、昭和50年にフォード大統領が昭和天皇を迎えたのもこの部屋である。その時の写真も、ホワイトハウス内に展示されている。最後に、State Dining Roomという大きな部屋を通る。130人規模での晩餐会開催が、可能であるという。どの部屋も19世紀~20世紀初めの頃の古い家具が大切に保管されており、自分達で国の伝統を作っていくのだという思い入れが十分感じられる。議会図書館について書いたブログに、議会図書館が焼失した後、第3代大統領トーマス・ジェファーソンの個人蔵書を買い取って再出発したと記述したかと思うが、彼がそれだけ大量の書物を収集して勉強に励んだ大きな要因は、ヨーロッパの文明や伝統に対するコンプレックスであったという説がある。そういう視点からホワイトハウスを眺めると、なるほどと思える部分もある。新しい国造りに燃え、フロンティアスピリッツを涵養しながら、同時にヨーロッパへの対抗意識を内に秘めて巨大化してきたアメリカ合衆国であるが、21世紀の今はどのような方向を目指しているのだろうか。

 引率してくれた事務所の同僚が、「ところで日本の総理公邸見学ツアーは、どんな感じだ?」と訊ねてきた。そう言えば、そんなものは無かったなと思いつつそう答えると、「日本人は、自分の国の首相に興味が無いのかな?」と笑っていた。確かに政治に無関心な人は多く、それは選挙の際の投票率の低さにもよく顕れている。普段無関心であるから、選挙の際などに政治について改めて考えようとすると、メディアの報道によって簡単に左右されてしまうのかもしれない。2005年、2009年の総選挙はどちらも、メディアの報道姿勢が有権者の投票行動に大きな影響を及ぼした結果、一方の政党が地滑り的勝利を収めた。民主主義の下での投票行動は、個人の自由な意思に委ねられている。であればこそ、自由投票という権利を行使する前に、日頃から他人の論調に惑わされずに自分はどう考えるのか、自分はどうしたいのか、ということについて真剣でならなければいけないと反省させられた。(了)

(柄山直樹 PAC道場第2期生)

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