外交・安保カレンダー(5月2日-8日)

 今週最大の事件はやはりUBL(ウサマ・ビン・ラーディン)殺害だ。結論だけ簡単に書こう。
 AQ(アル・カーイダ)とはUBLが指導する国際テロ「組織」ではなく、今や世界各地で起きている反米、反西欧、反イスラム穏健派のイスラム過激主義活動という「現象」を指す言葉になりつつある。
 UBLとその支持者たちのグループは現在何らかの内部的問題に直面し、組織的に弱体化していたはずだ。さもなければ、UBLの居場所に関する極秘情報が米側に漏れ、かつそのことをUBLが殺害されるまで気付かなかったことを説明できない。
 他方、UBLが死んでも、AQという現象は続く。仮に、AQがなくなっても、各地のイスラム過激主義活動は名前を変えて続くだろう。なぜなら、UBLやAQに共鳴するようなイスラム教徒はこれからも無数に増殖する可能性が高いからだ。
 今週以降まず懸念すべきは、UBL殺害に対する報復を口実にした新たなテロの可能性である。各地のAQシンパ組織は、9.11のような大規模なテロを計画する能力はなくても、中規模以下の破壊活動を実行する能力は十分あるからだ。
 次に注目すべきは、AQの指導方針に如何なる変化があるか、更にそうした変化が現在中東で起きている騒乱に如何なる影響を与えるかであろう。AQの攻撃対象が外国か、中東域内諸国となるかは、今後の中東情勢の行方を大きく左右する可能性があると思うからだ。
 続いて気になるのは米・パキスタン関係だ。パキスタン政府がUBL殺害を事前に何処まで知らされていたかは知らないが、形式的には米国による明確な主権侵害である。これでパキスタン国内は大丈夫なのだろうか。大いに気になるところだ。
 最後に、リビア、イエメン情勢も興味深いが、もう一つ忘れてはならないのがパレスチナ内部のファタハとハマースの「和解」の行方だ。第一に両者の和解が本物かどうか、第二に仲介したエジプトの意図は何か、第三にイスラエルの反応は何か。これらをよくよく分析する必要がある。
 筆者の読みが外れていなければ、ネタニヤフ首相は必ずこの流れを「潰し」にかかるはずであり、その際は、何らかの軍事的動きをとる可能性すらある。中東ではこうした動きの方が、リビアやイエメン情勢よりもはるかに重要なのだが...。

 以下は、いつもの通り、今週予想される動きと留意点を取り纏めました。これらは「事前予想」ではなく、あくまで研究者としての「心構え」です(出典は本邦日刊全国紙・通信社、外務省、ジェトロなど、個人の責任で集めたものです)

2日 カナダ下院総選挙
2-6日: IAEA理事会(ウィーン)
3-4日 ASEAN+3財務相会合、非公式東アジアサミット財務相会合(ハノイ)
3-4日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
3-6日 アジア開発銀行年次総会(ベトナム・ハノイ)
3-6日 ブラジル投資サミット2011(サンパウロ)
4日 マダガスカル大統領選挙?
4日 南北朝鮮赤十字会談(板門店)
5日 英国で選挙制度改革についての国民投票
5日 インドネシア11年第1四半期GDP発表
5-6日 アジア開発銀行(ADB)年次総会(ハノイ)
7-8日 ASEAN首脳会議(ジャカルタ)
7-21日 APEC高官会合(米国・モンタナ州ビッグスカイ)
8日 アルバニア地方選挙

【来週の予定】
9-13日 プラスチック産業国際見本市『Brasilplast』(サンパウロ)
10-12日 南アフリカ準備銀行金融政策委員会
10-12日 西アフリカ農業見本市(アクラ)
11日 英国経営者協会(IoD)年次総会
11日 カンヌ国際映画祭(仏)
11-14日 チリ建築見本市「Chile Construye」(サンティアゴ)
11-14日 第4回アルゼンチン家具国際見本市「FIMAR」(コルドバ)
11-14日 第11回乳製品展「MERCOLACTEA 2011」(アルゼンチン・コルドバ州サン・フランシスコ)
11-14日 第14回アジア国際飲食・ホテル・レストランサービス見本市(HOFEX2011)(香港)
11-14日 世界ITショー(ソウル)
11-15日 第6回女性製品展示会「mujer 2011」(ボリビア・サンタクルス)
12日 中国四川省大地震から3年
12-13日 ドイツ学術交流会 ヨーロッパ大学フェア(明治大学)
12-15日 日独整形災害外科学会 第14回日独整形災害外科学会(横浜)
12-15日 二輪車見本市「Feria de las 2 Ruedas」(コロンビア・メデジン)
14-15日 ASEAN・湾岸協力会議(GCC)外相会合(アラブ首長国連邦)
14-16日 サウジ国際水・電力・発電会議・展示会「WEPOWER 2011」(ダンマン)
15日 上海協力機構(SCO)10周年記念首脳会議(カザフスタン・アスタナ)
15-18日 エチオピア建設・建築展(アジスアベバ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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