先週は珍しく日米欧の識者が一堂に集う国際会議に参加してみた。東京三極フォーラムと名付けられたこの会合、米シンクタンク・ジャーマンマーシャルファンドと東京財団政策研究所との共催だった。場所は在京EU代表部、麻布の高台にある素晴らしい建物だ。この模様は産経新聞とJapanTimesに書いたので御一読願いたい。

 とにかく、この種の集まりに顔を出すのは数年ぶりだが、恥ずかしながら、その間に日米欧関係は大きく様変わりしたようだ。それでも、特に中国について、日米と欧州の間の温度差は決して小さくなかった。しかしながら、というか、だからこそ、日米欧三極連携は極めて重要なのだと改めて痛感させられた。

 今週の筆者の最大関心事は、実は、この三極ファーラムではない。中東で長年恐れていたことが、遂に現実のものになってしまったからだ。サウジの石油施設が10機の無人機に攻撃され、炎上しただけでなく、一時的ながらも、サウジアラビア石油生産量の半分以上に当たる約570万B/Dが止まったのである。

 これでも筆者は中東屋のはしくれ、とても無関心ではいられない。だが、日本を含む西側諸国とサウジアラビアには1-2か月分の原油備蓄があるはず。幸い石油の需給もこのところ逼迫しておらず、ある程度油価が上がれば、米国シェールオイルの生産量も増えるだろう。

 実のところ、石油専門家の間でも意見は割れている。筆者の見立てでは、湾岸地域でこれ以上戦闘が拡大しない限り、今回の事件が世界経済を揺るがす可能性は低いのではないか。逆に言えば、油価は常に「平時にはマーケットで、有事には政治的に決まる」のであり、やはり、今後の米国の軍事的出方がカギになるだろう。

 それではこの無人機攻撃、一体誰の仕業か。今度はイエメンのホーシー派が犯行声明を出したそうだが、これを額面通り信じる輩はいない。イエメンの実情を知れば、いくらイランが支援しているとはいえ、イエメンから何百キロも離れたサウジ内陸の石油施設二か所を無人機で正確に攻撃できるほどの実力があるとは到底思えない。

 この原稿執筆時、トランプ氏は「locked and loaded」とツイートしたらしいが、米国高官から威勢の良い発言は聞かれない。昨日はポンペイオ国務長官がイランの仕業だと名指ししていたのだが・・・。誰もが「恐らく、そうだろうな」とは思うのだが、動かぬ証拠が出せるのか、出たとしても米国が本当に報復するかは疑問、少なくとも未知数だ。

 トランプ氏は恐らく躊躇するのではないか。彼は対イラン攻撃よりも、NYでイラン大統領と「歴史的」な会談をしたいのだろう。ボルトンがいなくなったので、イランは米国からの反撃はないと見たのだろうか。もしそこまで読み切っていたとしたら、流石はイラン、実に手強い。とてもトランプ政権が戦える相手ではない。

〇アジア
 香港デモがまだ続いている。日本の一部メディアでは「香港デモの若者を市民は見放しつつある」といった記事も見られるが、現実とはちょっと乖離がある。デモの参加者は多種多様であり、「市民」が「若者」を「見放す」などといった単純な話ではないからだ。他方、この種の記事を「全くの誤り」だと切り捨てることもできない。

 行政長官は「逃亡犯条例」改正案を「完全撤回」した。これはデモ参加者の5つの要求の一つに過ぎないだろうが、逆に言えば、要求の一つが完全に「受け入れられた」ことも否定できない。筆者の信頼する現地関係者は、一つの「終わりの始まり」が始まっていると見ている。なるほど、ここら辺が「当たらずとも遠からず」かもしれない。

〇欧州・ロシア
 英首相のEU離脱をめぐる迷走が続いている。しかし、欧州全体を見ると、BrexitはEUが抱える数多くの問題の一つに過ぎないことも見えてくる。EUの将来は英国離脱の有無ではなく、仏独枢軸の有無が決定的に重要だ。ドイツの経済状態と国内政治をしっかり見ておく必要がある。

〇中東
 手前味噌だが、三週間前、筆者はこう書いていた。
「もしマクロン大統領が現行の核合意に代わって新たな核合意の締結を目指すなら、ボルトン補佐官はともかく、トランプ氏がこれに乗る可能性はあるだろう。問題は米イラン双方の「強硬派」の出方だ。最悪の場合、こうした動きを潰すため、イスラム革命防衛隊が新たな軍事的挑発を試みる可能性すらある。」

 先週の無人機によるサウジ石油施設攻撃は「米イラン対話」を潰すための革命防衛隊による「新たな軍事的挑発」ではなかったのか。証拠は全くないので、筆者の単なる仮説に過ぎないが、今も筆者の考え方は変わらない。この米イラン対話に最も反対するのはイスラエルの首相なのだが、今同国は選挙中。極めて要注意である。

〇南北アメリカ
 先週、CNNが民主党大統領候補者10人のテレビ討論会を主催した。「まだ10人もいるのか」と見るか、「ようやく10人になった」と見るかは、意見が分かれるだろう。バイデン前副大統領は全体的に優勢、逆にバイデンの年齢などを問題視した若い候補者は墓穴を掘ったようだ。ざっとしか見ていないが、どの候補も魅力的ではない。

〇インド亜大陸

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


9-27日 子どもの権利委員会 第82回会合(ジュネーブ)
9-27日 国連人権理事会 第42回会合(ジュネーブ)
10-22日 フランクフルト国際自動車ショー(一般向け12日から)
13-21日 対日理解促進交流プログラム2019・ASEAN10カ国「青少年スポーツ交流(ラグビー)」を実施(日本)
16日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
16日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
16日 ロシア、トルコ、イランがシリア情勢で首脳会議(アンカラ)
16日 中国8月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日か17日 ロシア1-8月鉱工業生産指数発表
16-19日 欧州議会本会議(ストラスブール)
16-20日 第63回国際原子力機関(IAEA)総会の開催(ウィーン)
16-22日 ボズイット人種差別撤廃委員会委員の訪日
17日 イスラエル大統領総選挙(再選挙)
17-18日 米国FOMC
17-25日 対日理解促進交流プログラム・カンボジアのカヌー・ナショナルチーム・ジュニア代表一行が訪日
17-12月中 国連総会 第74回会合(ニューヨーク)
18日 EU8月CPI発表
18-21日 ニュージーランド・アーデーン首相の訪日
18-21日 VietnamWood - 13th International Woodworking Industry Fair(ホーチミン)
19日 米・第2四半期の経常収支
19日 ファーウェイの略式判決請求の審理(米テキサス州連邦地裁)
20日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
20日 インドのラジナート・シン国防大臣がフランスを訪問
20日 第1回日仏包括的海洋対話の開催(ニューカレドニア・ヌメア)
20日か23日 ロシア1-7月貿易統計発表
21-25日 英国労働党大会(ブライトン)
22日 ポーランド・ドゥダ大統領がイギリスを訪問
22日 米エミー賞発表
22日 自動車F1シンガポールGP決勝
22-24日 EU農水相理事会 非公式会合(ヘルシンキ)


<23-29日>
23日 IAEA理事会(ウィーン)
23日 メキシコ7月小売・卸売販売指数発表
23日 サウジアラビア建国記念日
23日 Astra(NSLSAT1)打ち上げ(アラスカKodiak発射場)
23-26日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
24日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
24-25日 国連SDGs フォーラム(ニューヨーク)
24-25日 日韓経済人会議(ソウル)
24-27日 FHM Food & Hotel Malaysia 2019(クアラルンプール)
24-27日 ワールド・フード・モスクワ(ロシア・モスクワ)
24-30日 第74回国連総会一般討論(米国・ニューヨーク)
24-10月4日 ICAO(国際民間航空機関)総会 第40回会合(モントリオール)
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
25日 メキシコ8月雇用統計発表
25日 ソユーズFG(国際宇宙ステーション第61次及び第62次長期滞在ミッション用ソユーズMS-15)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
26日 ECB一般理事会(フランクフルト)
26日 米国第2四半期GDP発表(確定値)
26日か27日 ロシア8月雇用統計発表
26-27日 EU競争理事会(ブリュッセル)
27日 ブラジル8月全国家計サンプル調査発表
27日 メキシコ8月貿易統計発表
27日 米8月個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
27-10月6日 陸上・世界選手権(ドーハー)
28日 アフガニスタン大統領選
28-10月8日 国民体育大会(茨城県)
29日 オーストリア議会総選挙
29日-10月2日 英国保守党大会(マンチェスター)


(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年9月17日(火) | [ ]

 先週末は珍しく原稿書きが順調で比較的ゆっくりできた。いつもなら日曜日の夜は大抵半徹夜となる。特に、日本語と英語のコラムの締め切りが重なる週は地獄だ。幸い、今週は英語のみなので時間的余裕があった。今週はジョンソン英首相が安倍首相との初の首脳会談で捕鯨問題に「失望」を表明したとの英国の報道を取り上げた。

 これで日曜夜は久し振りに爆睡できるかと思ったら、何と未明に台風15号が千葉県上陸、おかげで月曜朝の会議には出席できなかった。被災地域の方々には心からお見舞いを申し上げたい。それにしても、最近の気象庁の発表内容は決して官僚的でなく、好感を持った。言葉一つで、人をその気にさせる説明の典型例である。

 今週は日本で内閣改造があり、内政的には一部関係者の関心が高まっている。だが、筆者の関心は内政は内政でも、やはり韓国内政の行方だ。先週のワイドショー系番組はテーマが日韓関係ばかりだったが、これには理由がある。とにかく数字が取れるらしいのだ。テレビ局もビジネスだから、当然といえば当然なのだが・・・。

 そうこうしている内に、韓国大統領が例のタマネギ男を法務長官に任命したとの速報が入ってきた。一連の疑惑について韓国検察は妻を在宅起訴し、捜査を拡大しているようだ。多くのメディアは「任命強行は世論の反発を強め、文政権への逆風が強まる可能性がある」と報じているが、それは今後も続く韓国与野党の攻防に過ぎない。

 筆者の関心は、韓国の司法が、真の意味で政治的圧力から独立し、法だけに基づいて司法権を行使できるか、である。文在寅政権から見れば、韓国の検察は保守の巣窟であり、最高裁判所(大審院)の改革(左傾化)に続き、検察にもメス(政治介入)を入れるつもりなのだろう。もし検察が保守の巣窟なら、それはそれで大問題だ。

 しかし、考えてみれば、この世界に真の意味で「政治から完全に独立した司法」など存在しない。どの国にだって完璧な司法などあり得ない。日本でも昔は「指揮権発動」事件があったのだから。問題は独立の程度であり、一般人の常識的な法律感覚から、政治の介入しない公平で中立な司法過程ぐらいは最低限確保してもらいたい。

 その点、韓国はどうなのか。前例の踏襲を重んじる法曹界は一般的に保守的傾向が強いが、だからといって、それが政治的に反「進歩系」、反「リベラル」であるとは限らない。問題は韓国法曹関係者に、法の専門家として、最低限どの程度の「矜持」を求めるのか、である。韓国には日本の「大津事件」のような教訓はあるのだろうか。

〇アジア
 香港デモが続いている。行政長官は「逃亡犯条例」改正案を「完全撤回」したが、この人は政治家として実に「勘が悪い」。何週間も前にこれを言っていれば、デモの勢いは収まっただろうが、今となっては「Too little. Too late」。北京のお偉方も、民主制下でのデモの収拾方法が全く分かっていない。現状は起こるべくして起きている。

〇欧州・ロシア
 英首相のEU離脱が一層迷走している。議会では離脱延期法案が可決され、「合意なき離脱」に突っ走る同首相はこれ対抗して議会解散案を提出したが否決される。解散案再提出を狙う首相だが、実弟の閣僚は辞任するなど、やることなすこと成功しない。このままでは本当に「野垂れ死ぬ」かもしれない。英語では何と言うのだろう。

〇中東
 相変わらず、トランプ政権の外交はお粗末だ。今度は7日に予定されていたアフガニスタンの武装勢力ターリバーンとの秘密会談を急遽取止めたという。トランプ氏がツイートしたものだが、場所はキャンプデービッド山荘の予定だったが、取止めた理由は前々日のカブールでの自動車爆弾事件で米兵一名が死亡したことだそうだ。

 亡くなった米兵には申し訳ないが、アフガニスタンでは自動車爆弾事件など日常茶飯事であり、米兵は他にも多く亡くなっている。なぜ今回だけ取止めるのか。トランプ氏お得意の「思い付き」衝動的決定だとすれば、トランプ外交の迷走は続く。公然の秘密だが、トランプ政権内にも米軍アフガニスタン撤退には賛否両論があるからだ。

 ターリバーン広報官は「1件の爆破を受けて協議から離脱した米政府には成熟と経験が足りない」と批判したそうだ。ターリバーン如きにこう言われるとは、アメリカも地に落ちたというべきだが、米国政府内だけでなく、ターリバーン内部にも米ターリバーン交渉を拒否する勢力がいるのだ。別に驚くべきことではないが・・・。

〇南北アメリカ
 先週末、米国共和党内で2020年大統領候補の指名争いに参戦する3人目の政治家が名乗りを上げたという。よく言えば、勇気のある共和党員、悪く言えば、典型的な売名行為である。しかし、共和党員の間ではトランプ氏の支持率は9割であり、恐らく勝ち目はない。それでもこうした声が上がるだけ米民主主義は健全ということか。

〇インド亜大陸

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


9日 メキシコ8月CPI発表
9日 日本・アラブ経済フォーラム(エジプト・カイロ)
9日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9日 ツバル議会選挙
9日 北朝鮮の建国記念日71周年
9日 国連総会・核兵器の完全廃絶に向けた国際の日に関するハイレベル総会会合(ニューヨーク)
9日 持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議(第8回会合)の開催(外務省)
9日 森外務審議官とロシア・モルグロフ外務次官との協議の開催(東京)
9日か10日 ロシア第2四半期経済活動別GDP統計(速報値)発表
9-10日 UNウィメン執行理事会 第二定例会合(ニューヨーク)
9-13日 IAEA理事会(ウィーン)
9-13日 対日理解促進交流プログラム2019・中国青年代表団が訪日
9-27日 子どもの権利委員会 第82回会合(ジュネーブ)
9-27日 国連人権理事会 第42回会合(ジュネーブ)
10日 中国8月CPI発表、PPI発表
10日 米アップルが報道イベント(カリフォニア)
10-14日 コソボ・サチ大統領が訪日
10-22日 フランクフルト国際自動車ショー(一般向け12日から)
11日 ブラジル7月月間小売り調査発表
11日 メキシコ7月鉱工業生産指数発表
11日 H-IIBロケット8号機打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-12日 IFAD執行理事会 第127回会合(ローマ)
11-12日 「一帯一路サミット(Belt and Road Summit)」(香港)
11-13日 UNICEF執行理事会 第二定例会合(ニューヨーク)
11-14日 Vietnam International Exhibition on Products, Equipment, Supplies for Medical, Pharmaceutical, Hospital & Rehabilitation(ホーチミン)
12日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
12日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
12日 インド7月鉱工業生産指数発表
12日 米国8月消費者物価指数(CPI)発表
12日 米大統領選に向けた第3回民主党候補者討論会(テキサス州ヒューストン)
12-15日 東京ゲームショー2019(一般公開は14日から)(千葉幕張メッセ)
13日 ユーログループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ヘルシンキ)
13日 米国8月小売売上高統計発表
13日 中国中秋節
13-14日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会 非公式会合(ヘルシンキ)
13-15日 17th Franchise & License Expo Indonesia(ジャカルタ)
14日 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)臨時首脳会議(ブルキナファソ・ワガドゥグゥ)
15日 チュニジア大統領選挙


<16-22日>
16-20日 IAEA年次総会(ウィーン)
16日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
16日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
16日 中国8月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日か17日 ロシア1-8月鉱工業生産指数発表
16-19日 欧州議会本会議(ストラスブール)
17-18日 米国FOMC
17日 イスラエル大統領総選挙(再選挙)
17-12月中国連総会 第74回会合(ニューヨーク)
18日 EU8月CPI発表
18-21日 VietnamWood - 13th International Woodworking Industry Fair(ホーチミン)
19日 ファーウェイの略式判決請求の審理(米テキサス州連邦地裁)
20日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
20日 インドのラジナート・シン国防大臣がフランスを訪問
20日か23日 ロシア1-7月貿易統計発表
21-25日 英国労働党大会(ブライトン)
22-24日 EU農水相理事会 非公式会合(ヘルシンキ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年9月10日(火) | [ ]

 先週末はまたまた地獄の出張日程を組んでしまった。金曜日は朝一番でニッポン放送のラジオ生出演。終了後直ちに大阪に向かい、番組二本を録画収録し終わったのが17:00過ぎ。それから東京に戻り、そのまま羽田空港へ。深夜便で香港に向かった。帰国は月曜日早朝羽田着だから香港滞在は48時間未満。ホントよくやるよ、と思う。

 香港は久し振りだが、当然お目当ては民主化要求デモだ。確か先週末が連続で13週目となるはず。立場上、取材記者ではないのでPressと書かれた黄色のジャケットは着れないし、かといって最早外交官ではない。要するに、ただの一般市民の野次馬に限りなく近いのだから、当然あまり危険な所へは行かない、というか、行けない。

 元外務省職員の宮家が「のこのこ」香港にやってきて、万一警察に拘束でもされたら、それこそ笑い者だ。かといって、せっかくのチャンスは無にしたくない。という訳で、今回は湧き上がる好奇心を最大限の自制心で抑えた、というのが正直なところだ。詳細は今週の産経新聞JapanTimesのコラムを読んでほしい。

 今回最も印象深かったのは、最近の香港のデモと、1960年代、70年代の日本の学生運動との違いだった。香港の若者と一緒に行進していると、1969年か70年か忘れたが、高校生なのに鎌倉から東京まで出かけたことを思い出す。怖いもの見たさで、連合赤軍の集会場所である新宿の小さな公園に近付いた。彼らは本当に怖かった。

 当時の東京に比べれば、今の香港のデモはまだまだ非暴力的だ。確かに火炎瓶が飛び、放水車や催涙ガス弾も投入されたが、70年安保の新宿騒動などを目撃した者にとっては、香港のデモなど可愛いものだ。他方、正直なところ、当時の日本の学生運動の参加者には今の香港の若者のような本当の危機感、切迫感はなかったと思う。

 理由は簡単、当時の東京では言論の自由も集会の自由も完全に認められていたからだ。一方、今の香港では一度中国の軍事介入を許したら、今享受している様々な自由など一瞬にして失われる可能性がある。その意味で、香港の若者は真剣そのもの、1970年前後の日本の甘っちょろい学生運動とは全く異なるのだなぁと実感した。

 もう一つ、コラムに書けなかったことを書いておこう。現地の事情通から聞いて初めて納得したのが、香港の財界というか、エリート層のデモに対する対応ぶりだった。日本の学生運動は「反権力、反資本、反大企業」だったが、こちらはちょっと違う。彼らは犯罪人引渡条例の対象が自分たちであることを正確に理解しているようだ。

 勿論、香港の本当の大金持ちはとっくにカナダやアメリカの市民権を得て、既に香港を去っているかもしれないが、それ以外の財界関係者にとって新条例は死活問題なのだろう。なるほど、彼らが若い民主活動家を支援するのも当然だ。正に、百聞は一見に如かず、である。人口750万の都市(国家?)だが、ここの内政は実に奥深い。

〇アジア
 現地からの最新情報によると、香港では2日から新学期が始まった中学生や高校生が授業をボイコットしているそうだ。中高生だけでなく、大学生らによる授業ボイコットやストライキも呼び掛けられている。そう言えば、先週末も、2日からゼネストをやると言っていたっけ。でも、香港はこうした混乱に耐えられるのだろうか。

 2日から中国の国務委員兼外相が訪朝するらしい。これは北朝鮮外務省が主導権を握りつつあることを示すのか、それとも中国の単なるポーズなのか、気になるところだ。常識的にみれば、現時点で中国外交が活発に動きだす可能性は低いと思われるのだが・・・。様々な頭の体操をやっておく必要があることだけは確かだろう。

 もう一つ、スキャンダル疑惑が報じられた韓国大統領側近が2日に会見、娘の不正入学疑惑などをめぐり、「国民に大きな失望を与えた。自身の周辺に厳しくできなかった点を深く反省し、謝罪する」、「国民から機会を与えられれば、必ずやらねばならない使命がある」などと述べ、法相指名は辞退しないらしい。これは見物である。

〇欧州・ロシア
 英首相のEU離脱が更なる波乱を招いている。同首相は与党・保守党内の造反議員を厳正に処分する方針だそうだ。英政界の気の早い向きは、既に総選挙の可能性に言及し始めた。だが、身内すら制御できない首相が総選挙に勝てるのか。厳正処分とは英保守党の更なる縮小を意味するのではないのか。お手並み拝見である。

〇中東
 週末、イスラエル軍がレバノンの武装組織ヒズボラの拠点に砲撃を加えたという。中東専門家は、仏大統領が働き掛けている国連総会での米イラン首脳会談に反対するイスラエルが、米イラン接近を潰すためにイランに近いヒズボラを攻撃した、と分析しているようだが、真相は分からない。中東では「敵の敵もまた敵」かもしれないからだ。

〇南北アメリカ
先週末は米国では「レーバーデイ」週末と呼ばれ、基本的にこの週で米国の夏季休暇は終わる。1日、トランプ政権は中国製家電、衣料品等への制裁関税「第4弾」を発動、中国も報復措置で対抗した。米中貿易戦争は泥沼化しているが、現時点でCNNは、国内政治よりも、巨大ハリケーン「ドリアン」の動向に注目しているようだ。

〇インド亜大陸

 インドの無人月探査機「チャンドラヤーン2号」が月の周回軌道に乗り、7日にも月面着陸を目指すという。インドが月面着陸を成功させれば米国、中国、旧ソ連に続き4カ国目となるそうだ。意外かもしれないが、インドは日本以上に宇宙大国なのだ。今週はこのくらいにしておこう。



7月29-9月13日 ジュネーブ軍縮会議(CD)第3部(ジュネーブ)
26-9月6日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会第53回会合(ウィーン)
26-9月7日北方四島の医師・看護師等に対する研修の実施
26-9月8日 テニス全米オープン
26-11月15日「国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(アフリカ)」の実施
28-9月2日 対日理解促進交流2019・日本の大学生訪韓団(スポーツ交流)
28-9月6日対日理解促進交流2019・日本の大学生訪韓団
28-9月7日 ベネチア国際映画祭
29-9月2日 鈴木外務大臣政務官が東ティモール及び韓国訪問
1-2日 G20労働雇用相会合(愛媛県)
2日 第15回ASEAN環境大臣会合(カンボジア)
2日 第16回ASEAN電子商取引に関する調整委員会(バンコク)
2日 米・レーバーデー(労働者の日)(ニューヨーク市場は全て休場)
2-3日OSCE(欧州安全保障協力機構)・外務省共催の会議「デジタル時代の包括的安全保障」の開催(外務省)
2-4日 中国の王国務委員兼外相が訪朝
2-5日欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2-6日 ASEANエネルギー大臣会合及び関連会議(タイ)
2-6日 APEC中小企業担当相会合(チリ・コンセプシオン)
3日ブラジル7月鉱工業生産指数発表
3-6日 UNDP、UNFPA、UNOPS執行理事会第二定例会合(ニューヨーク)
3-6日 第4回ASEANビジネス諮問委員会および合同ビジネス会議(バンコク)
3-6日中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委(米ポートランド)
3-11日 2019年度中国高校生訪日団第1陣の訪日(日中植林・植樹国際連帯事業)
3-12日 第51回ASEAN経済大臣会議および関連会議(バンコク)
4日 米国7月貿易統計発表
4日 ベージュブック
4日カナダ中央銀行政策金利発表
4-6日 ソウル安保対話(SDD)
4-6日 東方経済フォーラム(滞在中に日ロ首脳会談)(ロシア・ウラジオストク)
4-7日 米・ペンス副大統領がイギリス及びアイルランドを訪問
4-8日 ニュージーランドホームショー(オークランド)
4-10日ローマ法王がモザンビーク、マダガスカル、モーリシャスを訪問
5日か6日 ロシア8月CPI発表
5-7日 15th International Travel Expo Ho Chi Minh City(ホーチミン)
6日 米国8月雇用統計発表
6日 ブラジル8月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
6日 EU第2四半期実質GDP成長率発表
6日 ロシア中央銀行理事会
6日 アマゾン近接諸国の緊急首脳会談(コロンビア・レティシア)
6-11日 ドイツ・家電見本市「IFA」(ベルリン)
7日 インド無人月探査機「チャンドラヤーン2号」が月面着陸予定
8日 中国8月貿易統計発表
8日モスクワ市議選
8日 F1イタリアGP決勝(モッツァ)


<9-15日>
9日 メキシコ8月CPI発表
9日 日本・アラブ経済フォーラム(エジプト・カイロ)
9日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9日 ツバル議会選挙
9日 北朝鮮の建国記念日71周年
9日 国連総会・核兵器の完全廃絶に向けた国際の日に関するハイレベル総会会合(ニューヨーク)
9日か10日 ロシア第2四半期経済活動別GDP統計(速報値)発表
9-10日 UNウィメン執行理事会第二定例会合(ニューヨーク)
9-13日 IAEA理事会(ウィーン)
9-27日子どもの権利委員会第82回会合(ジュネーブ)
9-27日国連人権理事会第42回会合(ジュネーブ)
10日 中国8月CPI発表、PPI発表
10-22日 フランクフルト国際自動車ショー(一般向け12日から)
11日 ブラジル7月月間小売り調査発表
11日 メキシコ7月鉱工業生産指数発表
11日 H-IIBロケット8号機打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-12日 IFAD執行理事会第127回会合(ローマ)
11-12日 「一帯一路サミット(Belt and Road Summit)」(香港)
11-13日 UNICEF執行理事会第二定例会合(ニューヨーク)
11-14日 Vietnam International Exhibition on Products, Equipment, Supplies for Medical, Pharmaceutical, Hospital & Rehabilitation(ホーチミン)
12日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
12日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
12日 インド7月鉱工業生産指数発表
12日 米国8月消費者物価指数(CPI)発表
13日ユーログループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ヘルシンキ)
13日 米国8月小売売上高統計発表
13日 中国中秋節
13-14日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会 非公式会合(ヘルシンキ)
13-15日 17th Franchise & License Expo Indonesia(ジャカルタ)
14日 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)臨時首脳会議(ブルキナファソ・ワガドゥグゥ)
15日 チュニジア大統領選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年9月 3日(火) | [ ]

 26日、今年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)がフランス南西部のリゾート地ビアリッツで3日間の日程を終え閉幕した。ビアリッツとは仏バスク地方にある美しい海辺の町。最近欧州でのG7サミットは風光明媚のリゾートで開かれることが少なくない。場所としては申し分ないのだが、会議の中身はお世辞にも美しいとは言い難い。

 そもそも今回は首脳宣言の採択が見送られたのだが、こうした観測はかなり早い段階から流れていた。逆に言えば、地球温暖化、米中貿易摩擦、国際自由貿易、イラン核問題、ロシアのサミット復帰論などをめぐる米国とそれ以外の首脳の溝は予想以上に深かったのだろう。議長のマクロン仏大統領もほぼお手上げだったようだ。

 外務省現役時代、G7サミットには何度か関与したことがあるが、今回のように発出すべきペーパーができない、というか作れないなんて、ちょっと記憶にない。勿論、特定の問題の個々の表現をめぐり意見が収斂せず、へんてこな文言でお茶を濁すことはよくある。しかし、首脳宣言そのものが出ないなんて話は聞いたことがない。

 そうこうしている内にCNN・USで米仏大統領による共同記者会見の生中継が始まった。雄弁家のマクロン氏は僅か1ページの議事要旨(?)を示しながら、G7の議長として「素晴らしい議論が行われた」などと自画自賛している。一方、その姿を横目で見るトランプ氏の表情は実に不機嫌そうだ。テレビカメラは正直である。

 余程不愉快だったのか。トランプ氏の冒頭発言はサミットのUnityとフランスの偉大さに簡単に触れただけの、実に素っ気ないものだった。質疑応答でもトランプ氏は中国やイランの話ばかり、サミット議論の詳細には触れなかった。逆に言えば、これは今回のG7サミットが成果を挙げなかったことを暗示しているのかもしれない。

 今回のサミットは、今の世界が国際主義、自由でルールに基づく開かれた国際秩序を目指す時代から、一国主義、国家主権を最優先する民族主義的、閉鎖的、差別的傾向を深める時代に移行しつつあるという現実を図らずも象徴しているのか。恐らく、こうした傾向はトランプ氏がいなくなった後も当分続くのだろう。

 ところで、先週日本で最も注目されたのはG7サミットではなく、韓国による日韓GSOMIA終了宣言だった。多くの評論は韓国大統領の判断が如何に間違いかに関するものだったが、筆者は米韓、特に韓国の外交安保専門家たちが今回正論を封印し、敢えて沈黙を守っていたことに注目している。

 何故彼らは沈黙を守るのか。物言えば唇寒しなのか。大統領に逆らうことは政策担当者として、もしくは言論人としての生命を脅かすのか。理由は様々だろうが、今こそ各国の専門家は勇気をもって正論を吐くべきだと思う。GSOMIAについては今週のJapanTimes日経ビジネスに英文、和文でコラムを書いたので、ご一読願いたい。

〇アジア
 香港では反政府デモが長期化しているが、筆者は今週末に香港出張を計画している。何が起きるかわからないが、自分の目で香港の「抗議デモ」の実像を見たいのだ。幸い往復とも夜行便を使えば土日の週末をたっぷり香港で過ごせる。間違いなく強行軍ではあるが、行く価値はありそうだ。体力が持つかどうかだけが気がかりだが・・・。

〇欧州・ロシア
 ジョンソン英首相がG7サミットの際、欧州連合(EU)大統領と会談し、「どのような状況であっても現行期限の10月31日にEUから離脱する」と伝えたそうだ。会談前も両者は、「合意なき離脱となった場合の責任は相手側にある」と言い合ったらしい。しかし、主たる責任が英国にあることは明らかだろう。出ていくのは英国なのだから。

〇中東
 G7の最中、フランスが米国とイランの会談を仲介しようと動いた。G7後の共同記者会見で仏大統領は「今後数週間に米イラン首脳会談をセットしたい」と述べたが、米大統領は「万が一、状況が適切であれば、それに同意するだろうが、その前にイラン側は良いプレーヤーであるべきだ」と述べた。仮定法過去の微妙な言い方である。

 もしマクロン大統領が現行の核合意に代わって新たな核合意の締結を目指すなら、ボルトン補佐官はともかく、トランプ氏がこれに乗る可能性はあるだろう。問題は米イラン双方の「強硬派」の出方だ。最悪の場合、こうした動きを潰すため、イスラム革命防衛隊が新たな軍事的挑発を試みる可能性すらある。今週は要注目だろう。
 
〇南北アメリカ
 これまたG7サミットの最中に、日米両政府が新たな貿易協定締結交渉で大筋合意した。9月下旬に署名を目指すという。日本は米国産農産物にTPP並みの市場開放を約束したらしいが、米国による対日本車追加関税「回避」の確約はなかった。主要マスコミは日米間に「火種が残った」と報じたが、実態はどうなのだろうか。

 トランプ政権のやり方はある意味で一貫している。これまでどの国に対しても追加関税につき「撃ち方止め」を確約した記憶はない。確約すれば梃子がなくなるとでも思っているのか、トンデモナイやり方だ。内々米国から「追加関税なし」の示唆を得ているならともかく、なければパッケージは成立しない。この点は更なる確認が必要だ。

〇インド亜大陸

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。



7月29-9月13日 ジュネーブ軍縮会議(CD)第3部(ジュネーブ)
8月15-30日 APEC閣僚会合(プエルトバラス)
22-26日 中国全人代常務委員会第12回会議(北京)
24-26日 G7首脳会議(フランス・ビアリッツ)
25-28日 ASEANコネクティビティ調整委員会(バンコク)
25日-9月1日 モザンビーク国際見本市(FACIM)(マプト)
26日 安倍首相が内外記者会見(仏ビアリッツ)
26-9月6日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会 第53回会合(ウィーン)
26-9月8日 テニス全米オープン
26-11月15日「国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(アフリカ)」の実施
27日 メキシコ7月貿易統計、雇用統計発
28日 日本、韓国に対する輸出管理の優遇除外措置発動
28-29日 EU外相理事会 非公式会合(防衛)(ヘルシンキ)
28-30日 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)(神奈川県)
28-30日 ジェトロ主催「日本・アフリカビジネスEXPO」(横浜市)(TICAD7公式サイドイベント)
28-9月7日 ベネチア国際映画祭
29日 米国第2四半期GDP発表(改定値)
29日 ブラジル第2四半期GDP発表
29日 北朝鮮の最高人民会議
29日 米宇宙軍が発足
29日 快舟1A(中科院空間科学衛星)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
29-30日 ジェトロ主催「日本・アフリカビジネスフォーラム」(横浜市)(TICAD7公式サイドイベント)
29-30日 EU外相理事会 非公式会合(外交)(ヘルシンキ)
30日 EU7月失業率発表
30日 米・7月PCE物価指数(商務省)
30日 ブラジル7月全国家計サンプル調査発表
30日 インド第1四半期GDP発表
30日 Gaviワクチンアライアンス第3次増資準備会合の開催
30日-9月1日 Islamic Tourism Expo 2019(ジャカルタ)
31日 米・トランプ大統領がポーランドを訪問
9月1日 独のポーランド侵攻80年式典(ワルシャワ)
1日 ドイツ・ブランデンブルク州議会選挙
1日 ドイツ・ザクセン州議会選挙
1日 韓国通常国会開会
1日 F1ベルギーGP決勝(スパフランコルシャン)
1-2日 G20労働雇用相会合(愛媛県)


<9月2-8日>
2日 第15回ASEAN環境相会合(カンボジア)
2日 レーバーデー(労働者の日)(ニューヨーク市場は全て休場)
2-5日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2-6日 APEC中小企業担当相会合(チリ・コンセプシオン)
2-6日 ASEANエネルギー相会合および関連会議(タイ)
3日 ブラジル7月鉱工業生産指数発表
3-6日 UNDP、UNFPA、UNOPS執行理事会 second regular session(ニューヨーク)
3-6日 中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委(米ポートランド)
3-6日 第4回ASEANビジネス諮問委員会および合同ビジネス会議(バンコク)
3-12日 第51回ASEAN経済相会議および関連会議(バンコク)
4日 米国7月貿易統計発表
4日 カナダ中央銀行、政策金利発表
4-7日 米・ペンス副大統領がイギリス及びアイルランドを訪問
4-6日 東方経済フォーラム(EEF)(ロシア・ウラジオストク)
4-8日 ニュージーランド ホームショー(オークランド)
4-10日 ローマ法王がモザンビーク、マダガスカル、モーリシャスを訪問
6-11日 ドイツ・家電見本市「IFA」(ベルリン)
5-7日 15th International Travel Expo Ho Chi Minh City(ホーチミン)
5日か6日 ロシア8月CPI発表
6日 ロシア中央銀行理事会
6日 EU第2四半期実質GDP成長率発表
6日 米国8月雇用統計発表
6日 ブラジル8月IPCA発表
8日 中国8月貿易統計発表
8日 モスクワ市議選
8日 8月中国貿易統計(税関総署)
8日 F1イタリアGP決勝(モッツァ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年8月27日(火) | [ ]

先週はお盆休みだったが、驚いたことに、この時期のメディア出演依頼は例年よりずっと多かった。ニュースは夏枯れで、恐らくトランプ・ネタが最も無難だったのだろう。偶々東京にいた筆者にお声が掛かったということだ。トランプ外交については今週のJapanTimesと産経新聞に英文、和文でコラムを書いたので、ご一読願いたい。

要するに、「トランプ外交」を「トランプ政権」が一体として行う外交活動だと思うから我々は間違えるのだ。トランプ外交には二面性(dichotomy)がある。これを理解しなければ「トランプ流」外交に振り回されるだけだ。それが最近ようやく判ってきた。何を今頃と言われそうだが、なぜもっと早く判らなかったのか悔やんでいるという話である。

それよりも筆者の今週の主要関心事は香港だ。先週末は主催者側発表で170万人がデモに参加したと報じられた。人口700万の香港で170万が参加する?・・・どうしても信じ難い。ここまで来ると、天邪鬼の筆者は、報じられている何もかも、すべてについて懐疑的になってしまう。という訳で、以下はいつもの筆者の勝手な見立だ。

そもそもCNNなどを見ていると、欧米メディアがはしゃぎ過ぎではないかとすら思う。道路上の無数の傘を差したデモ参加者の姿を放映するのだが、それでは隣の道路はどうなのか。ざっと見て数十万人はいたかもしれないが、100万を超えたかは自信がない。勿論それでも、あれだけ大規模なデモとなれば、香港では十分だろうが・・・。

中国は香港に武装警察を投入すると思うか、とよく聞かれる。当然投入する気だろう。香港政庁が腰砕けになって北京が認めない政治的譲歩を重ねたり、香港警察の一部が寝返ってデモ隊に協力したり、何でも良いのだが、要するに中華人民共和国の香港に対する権威が決定的に害されれば、中国は必ず介入する、と筆者は思う。

言い換えれば、中国共産党の統治の正統性が害されれば中国は容赦しない、というか、嫌でも徹底的に弾圧せざるを得ない、というのが実態に近いだろう。流血の事態にでもなれば第二の「天安門事件」だから、良くて対中経済制裁、下手をすれば騒動が中国本土にまで波及する可能性すらある。中国は今頃本当に困っているはずだ。

アメリカのCIAがデモの背後にいるのは本当か、ともよく聞かれるが、恐らくフェイクニュースだ。そもそも米国の外交官がデモ隊と接触するのは当たり前、彼らがCIAの秘密工作員であるはずはない。大使館にいるCIA関係者はあくまで「表」の人々、「裏」の工作員はそんなところに「のこのこ」出ては来ない。それくらい常識だろう。

CIA関与説は中国の常套句。今中国に必要なのは、「外国勢力に扇動された香港の一部の過激派が暴徒となって香港の社会秩序を破壊している」からこそ、中国は「武警を投入せざるを得なかった」という説明(narrative)だ。CIAが全く無関与とは思わないが、世界にはデモ隊を支援する人権擁護派NGOなど無数にあるのだから。

そう考えれば、深圳での武警訓練はTV映像による対デモ隊抑止の行為。中国は本当は「やりたくない」。「やりたくない」からこそ、ああやって何度もデモ隊を威嚇するビデオを流させるのだ。繰り返すが、今の中国には、デモを「放置」しても、「介入」しても、「地獄」しかないのだ。やはり当面香港は中国の「弱点」であり続けるのだろう。

〇アジア
香港では反政府デモが長期化しているが、先週は台湾を巡り大きな動きがあった。トランプ政権が台湾にF-16Vと呼ばれる戦闘機を売却するらしい。F-16Vは最新鋭の第五世代戦闘機ではないが、現有の、1990年代に売却された、古いF-16よりは格段に能力の高い戦闘機だ。当然、中国は猛反発している。
今回のF-16V売却でも、中国人民解放軍空軍の対台湾空軍の戦術的優位は変わらないだろう。中国にとってより重要なことは、現在の米国が(台湾関係法という米国内法でのみ担保されている)台湾への防衛義務を再確認し、それをより実質的なものに戻そうとしている可能性があることだ。タイミング的にも「米国は良くやるよ」と思う。

〇欧州・ロシア
フランスでG7首脳会議があるが、仏大統領はその前にロシア大統領と会談する。いかにもフランスらしいが、ロシアの西欧東欧諸国への内政干渉問題はどう落とし前を付けるのだろう。香港問題あり、北朝鮮あり、米中貿易戦争ありで、G7は機能するのだろうか。トランプ氏の責任は小さくないのだが・・・。
トランプ政権がグリーランドを購入する構想を明らかにしたため、グリーランドを領有するデンマークが猛反発している。勿論、グリーランドは対ロシア戦略上極めて重要な要衝であり、100年前なら実現したかもしれない。しかし、今は21世紀、米国がグリーランドを買うなら、日本もハワイを売れと言えば良いだけの話だ。バカバカしい。
馬鹿馬鹿しいといえば、先週末、英国首相府が「合意なきEU離脱の際の悪影響」についてまとめた極秘文書をすっぱ抜かれ、ちょっとした騒ぎになっている。こんな文章が流出するということは、首相府内部にも、ジョンソン現首相に批判的な向きがいるということなのか。大英帝国の黄昏は、来るところまで来た感じがする。

〇中東
7月4日にジブラルタルで拿捕されたイランのタンカーが解放され8月18日に漸く出港したそうだ。このタンカーは15日に現地裁判所の解放命令を得たが、米国政府が差し押さえを要求していた経緯がある。さすがの米国の威光もジブラルタルの裁判所には届かなかったのだろうか・・・。というか、冗談ではない。そんな米国の無茶苦茶な「差し押さえ」が認められるなら、「何でもあり」ではないか。
中東の他の地域では、アフガニスタンで日常茶飯事のような自爆テロが起きた以外、イランも、サウジも概ね静かである。但し、細かく言えば、ホーシー派がサウジの油田をドローンで攻撃、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の関係もおかしくなりつつあるのだが、これらの話は別途取り上げたい。

〇南北アメリカ
先週一番驚いたのは、2017年のトランプ政権発足当初、短期間ホワイトハウスのCommunications Directorを務めたAnthony Scaramucci氏(仲間内では「ムーチ」と呼ばれるらしい)が突然CNNに登場し、2020年大統領選挙の候補者としてトランプ氏以外の可能性を考えている、などと発言したことだ。
元々このムーチ氏は変わった人物らしく、僅か11日でトランプ氏に解雇されたという武勇伝の持ち主だ。最近では「2020年の大統領選挙でトランプ候補以外の選択肢をトランプ政権元高官たちと共に考える」などと言い出している。殆どマンガとジョークの世界なのだが、これが今のワシントンの実態らしい。エライ時代になったものだ。

〇インド亜大陸

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。



7月29-9月13日 ジュネーブ軍縮会議(CD)第3部(ジュネーブ)
5-20日 米韓合同軍事演習開始
13-24日 鈴木外務大臣政務官がフィジー、ツバル、ソロモン諸島及びカンボジアを訪問
15-30日 APEC閣僚会合(プエルトバラス)
19日 EU7月CPI発表
19日 仏ロ首脳会談(仏南東部ブレガンソン城塞)
19日 長征3B(APStar 6D)打ち上げ(四川省 西昌衛星発射センター)
20-21日 インド・ジャイシャンカル外相がバングラデシュ・ダッカを訪問
20-22日 ザンビア・ルング大統領がインドを訪問
21日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
21日 日中韓外相会談(北京市郊外)
21-23日 エアギター世界選手権(フィンランド中部オウル)
22日 FOMC議事要旨(FRB)
22日 ソユーズ2(国際宇宙ステーション用ソユーズMS-14)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
22日 デルタ4(GPS 3-SV02)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
22-23日 ASEANスマートシティネットワーク年次総会(バンコク)
22-24日 米ジャクソンホール会合(米ワイオミング州ジャクソンホール)
22-26日 中国全人代常務委員会第12回会議(北京)
23日 メキシコ第2四半期GDP発表
23-24日 APEC食料安全保障担当相会合(プエルトバラス)
23日か26日 ロシア7月雇用統計発表
23日か26日 ロシア1-6月貿易統計発表
24日 ナウル議会選
24-26日 G7首脳会議(フランス・ビアリッツ)
25日 マカオ行政長官選
25日 北朝鮮先軍節
25日 埼玉県知事選
25-28日 ASEANコネクティビティ調整委員会(バンコク)
25日-9月1日 モザンビーク国際見本市(FACIM)(マプト)


<8月26日-9月1日>
26-9月6日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会 第53回会合(ウィーン)
27日 メキシコ7月貿易統計、雇用統計発
28-29日 EU外相理事会 非公式会合(防衛)(ヘルシンキ)
28-30日 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)(神奈川県)
28-30日 ジェトロ主催「日本・アフリカビジネスEXPO」(横浜市)(TICAD7公式サイドイベント)
29日 米国第2四半期GDP発表(改定値)
29日 ブラジル第2四半期GDP発表
29-30日 ジェトロ主催「日本・アフリカビジネスフォーラム」(横浜市)(TICAD7公式サイドイベント)
29-30日 EU外相理事会 非公式会合(外交)(ヘルシンキ)
30日 EU7月失業率発表
30日 米・7月PCE物価指数(商務省)
30日 ブラジル7月全国家計サンプル調査発表
30日 インド第1四半期GDP発表
30日-9月1日 Islamic Tourism Expo 2019(ジャカルタ)
9月1日 ドイツ・ブランデンブルク州議会選挙
1日 ドイツ・ザクセン州議会選挙
1日 韓国通常国会開会
1-2日 G20労働雇用相会合(愛媛県)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年8月20日(火) | [ ]

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