先週末から米国とイランの「言葉の戦争」がエスカレートしている。先々週、米国は「明確なメッセージを送る」ため、空母打撃群と爆撃機部隊を中東に派遣した。先週もサウジアラビアとUAEが複数の原油タンカーに対する「破壊行為」を公表するなど、イランの関与を示唆する報道が続いた。でも、これって、ちょっと異常ではないか。

 同盟国間でも意見は割れた。当初英軍関係者は「イランの脅威増大」を否定していたが、英政府関係者は別の見解を発表している。米国政府内でも、トランプ氏が「戦争は望まない」とする一方で、ボルトン補佐官やポンペイオ国務長官は引き続きイランを厳しく批判している。一体何が起きているのか、一体誰を信じたら良いのか。

 そんな折、先週末トランプ氏は態度を一変させ、「アメリカと戦う気なら、イランは正式に終わりだ」「2度とアメリカを脅迫するな!」などとツイートした。トランプ氏は同日バグダッドにある米大使館付近にロケット砲弾が撃ち込まれたことに激怒したというのだが、おいおい、この程度で"official end of Iran"とはやや大袈裟ではないか。

 報道によればロケット弾は大使館から約1.6キロも離れた地点に着弾したという。米国は「イラク国内でイランの支援を受けるシーア派民兵組織による犯行」との見方を強めているそうだ。でも、それがどうした?米国大使館に近い、昔「グリーンゾーン」と呼ばれた地域に対するロケット砲攻撃なんて日常茶飯事だった。一体何を騒いでいるのか。

 筆者が同地域で勤務したのは15年も前の話だが、当時からイラク国内におけるイランの影響力は圧倒的であり、特に有力なイラク・シーア派武装集団でイランの支援を受けていない組織など殆どないはずだ。米国がイランを脱兎のごとく忌み嫌うのは自由だが、最近の米国による対イラン挑発は現実を超えた誇張の産物ではないのか。

 やはり、ここで求められるのは冷静な視点だろう。今イランが米国と戦争して勝てると思うだろうか。ここでイランが米国の挑発に安易に反応し米国を攻撃すれば、それこそ米国内の反イラン勢力の思う壺ではないか。米国内では、「2003年のイラク核兵器開発疑惑に似ている」との指摘もあるが、今回は明らかにそれ以下の茶番である。

 しかし、イランが中東各地の反米勢力に有形無形の支援を与えていることは否定できない。中にはイランからの強い圧力や説得にもかかわらず、対米攻撃を実行してしまいそうな間抜け集団もいるだろう。されば、米国の反イラン勢力の「ベタな挑発」も案外効果的ということか。それでも、常識的には「今後何も起きない」と考えるべきだ。

〇アジア
 先週末の豪州総選挙で再び主要メディアの予測が外れた。ロイターは、「与党保守連合が予想に反して勝利したため、最大勢力の自由党を率いるモリソン首相の党内基盤は強まり、長期安定政権への道が開けた可能性がある」と報じたが、本当に「奇跡」の勝利だったのか。日米豪の連携維持という点で変化がないことは良かったが・・。

〇欧州・ロシア
 今週23日から26日に欧州議会選挙がある。EU離脱問題を抱える英国の議会とは異なり、その結果が直ちにEUの方向性を変える訳ではなかろう。だが、最大の焦点はEU国際主義と個別主権国家主義との対立であり、その意味で各国「極右」政党の伸びを懸念する向きもある。

 しかし、EU議会の争点は、EU予算、気候変動、難民問題など多岐にわたる。ここで多数を占めたからといって、ただちにEUの政策が急変する可能性は低い。その実態は「たかがEU議会選挙、されどEU議会選挙」、ということなのかもしれない。戦後の欧州の大実験は結局失敗に終わるのか。今回そのヒントを知ることは可能だろう。

〇中東
 中東関係ニュースはイラン絡みのものが圧倒的に多いが、先週米国の中東専門家の友人とゆっくり朝食を共にしてその理由が見えてきた。誤解を恐れずに極論するが、一言で言えば、彼や筆者が慣れ親しんできた古き良き「中東和平プロセス」を中心とする正統派の中東政策はもう永遠に戻ってこないということなのだろう。

 パレスチナ側がPLOとハマースに分裂し、イランがハマースに対する関与・支援を深めたため、中東和平プロセスは事実上頓挫しつつある。本来はパレスチナ問題が中東問題の本質であるべきなのに、分裂と混乱を続けるパレスチナ・アラブ陣営はそうした己の優位を十分生かし切れていない。

 イスラエルの強硬派にとって、西岸ガザの占領を恒久化する最良の方法はイランの脅威を前面に出し、その問題解決に焦点を当てることで、中東和平プロセスを実質的に先送りさせることだ。その意味でクシュナー大統領娘婿のような素人が事実上中東政策の責任者となることは各国強硬派にとって「願ったり叶ったり」なのである。

〇南北アメリカ
 米与党共和党下院議員がロシア疑惑につき「トランプ大統領は弾劾され得る行為に及んだ」とツイッターに投稿したという。ロシア疑惑で共和党議員が大統領弾劾に言及したのは珍しい。この人、よほどトランプが嫌いか、選挙に強いか、もしくはその両方なのだろう。だが、こうした動きが直ちに共和党内で雪崩を起こす可能性は低い。

〇インド亜大陸

 インドの下院総選挙は23日に開票されるが、出口調査ではモディ首相率いる与党が優勢だという。来週はインドを詳しく取り上げることとし、今週はこのくらいにしておこう。



4月29-6月7日 国際法委員会 第71回会合 first part(ジュネーブ)
5月4日ごろ-6月2日ごろ ラマダン(断食)月
5月13-20日 辻外務大臣政務官がメキシコ、キューバ及びチリを訪問
5月13-6月28日 ジュネーブ軍縮会議(CD)second part (ジュネーブ)
5月17-20日 河野外務大臣がタジキスタンを訪問
20日 ウクライナ大統領就任式(遠山総理特使が派遣)
20-21日 OECDフォーラム(パリ)
20-21日 EU環境相理事会 非公式会合(ブカレスト)
20-28日 WHO 世界保健総会 第72回会合(ジュネーブ)
20日-6月17日 第14期第7回ベトナム国会(ハノイ)
21日 OECD世界経済見通し(パリ)
21日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
21日 マラウイ大統領・国民議会総選挙
21日 スペイン新議会の招集
21日 チリ大統領教書発表(バルパライソ)
21-6月21日 国際民間航空機関(ICAO)council phase 第217回会合(モントリオール)
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会 非金融政策(フランクフルト)
22日 メキシコ3月小売・卸売販売指数発表
22日 FOMC議事録(FRB)
22日 PSLV C46(地球観測衛星 Risat-2BR1)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
22-23日 OECD閣僚会議(パリ)
22-23日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
22日か23日 ロシア1-4月鉱工業生産指数発表
23日 インド国会下院議員選挙(総選挙)開票
23日 長征4C(遥感三十三号)打ち上げ(山西省太原衛星発射センター)
23日- ファルコン9(スペースX社スターリンク衛星60機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
23日か24日 ロシア4月雇用統計発表
23-26日 欧州議会選挙
24日 メキシコ第1四半期GDP発表
24日 アイルランド・離婚条件緩和の是非を問う国民投票
25-28日 米国トランプ大統領が訪日
26日 ベルギー連邦議会(下院)選挙、地域議会選挙
26日 ドイツ・ブレーメン州議会選挙
26日 リトアニア・二重国籍の是非を問う国民投票


【来週の予定】
27日 メキシコ4月貿易統計発表
27日 オランダ第二院選挙
27日 マダガスカル国民議会選挙
27日 メモリアルデー(戦没者追悼の日)(ニューヨーク市場は全て休場)
27日 ソユーズ2.1b(GLONASS-M 758)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
27日か28日 ロシア1-3月貿易統計発表
27-28日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
27-29日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会A及び非公式・専門家委員会 第55回会合(ウィーン)
27-31日 第1回国連人間居住計画 総会(ケニア・ナイロビ)
27-31日 ASEAN高級実務者会議(ASEAN SOM)(バンコク)
27-31日 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)第75回会合(バンコク)
28日 EU外相理事会(貿易)(ブリュッセル)
28日 メキシコ4月雇用統計発表
28-29日 イスラエル・スタートアップ会議(イスラエル・テルアビブ)
28-31日 バングラデシュ・ハシナ首相が訪日
29日 ユーラシア経済連合(EEU)首脳会議(カザフスタン・ヌルスルタン)
29日 ナイジェリア大統領就任式
29-30日 WHO執行理事会 第145回会合(ジュネーブ)
30日 ブラジル第1四半期GDP発表
30日 米国第1四半期GDP発表(改定値)
30-6月7日 UNDP、UNFPA、UNOPS執行理事会 年次会合(ニューヨーク)
31日 UNDP、UNFPA、UNOPS、UNICEF、WFP及びUN-Women執行理事会joint meeting(ニューヨーク)
31日 米国4月個人消費支出(PCE) 物価指数発表(商務省)
31日 ブラジル4月全国家計サンプル調査発表
31日 インド第4四半期GDP発表
31日 CIS首脳会議(トルクメニスタン・アシガバード)
31日 米国ポンペオ国務長官が訪独
31日 プロトン(Yamal 601)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
31-6月2日 第18回アジア安全保障会議(シャングリラ会合)(シンガポール)
6月2-6日 ラマダン明け休暇

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年5月22日(水) | [ ]

 先週は米中閣僚級貿易交渉の物別れ、というか事実上の決裂、で大騒ぎだった。何度も同一テーマのコラムを書くのは本意ではないが、今週のJapan Timesと産経新聞のコラムでは再び米中貿易交渉を取り上げた。言いたいことは沢山あるが、詳細はそちらをお読み頂くとして、ここでは米中以外のテーマについて書こう。

 先週筆者が一番注目したのはパキスタンで起きたテロ事件だ。テロといっても今回の対象はキリスト教徒でもユダヤ教徒でもない、どうやら標的は中国人らしいのだ。場所は同国南西部バローチスタン州グワーダルの高級ホテル、武装集団による襲撃事件で5人が死亡したという。グワーダルと聞いてピンとくる人は相当の国際通だ。

 グワーダルといえば、2013年1月30日、パキスタン政府が同港運営権の中国企業への移譲を認可、爾来中国による港湾と関連インフラの整備が進んでいる所だ。いずれはインド洋における中国海軍の拠点の一つになると、インドは勿論、日米豪などの関係国も懸念を深めているいわく付きの港なのである。

 問題はそのグワーダルがバローチスタン州にあることだ。同州は17世紀以降カラート藩王国という独立国家だった。その後イギリスの保護領となり、インド独立の際には独立の道も模索されたようだが、最終的にはパキスタンに併合され現在に至っている。要するに、この地には中央政府の言いなりにならない歴史と気質があるのだ。

 このバローチスタンの分離独立をめざす武装組織が「バローチ解放軍(BLA)」だ。BLAは今回のテロについて「中国人や、他の外国投資家を標的にした」という犯行声明を出している。BLAは2018年11月にもカラチにある中国総領事館を襲撃し、犯行声明を出していた。この組織、なぜそんなに中国人を毛嫌いするのだろうか。

 理由は簡単。中国はグワーダルを起点に新彊ウィグル自治区のカシェガルまで鉄道、高速道路、光ファイバー網、石油・ガスパイプラインなどを敷設した。ところが中国はそのための建材、建設機械から労働者まで全てを中国から持ち込む。これが中国の典型的なやり方なのだが、現地バローチスタンの住民はほとんど裨益しなかったのだ。

 似たような話はアフリカにも、アジアにも山ほどある。パキスタンぐらい中国と親密な国はないと思うだろうが、おっとどっこい、中国はバローチスタンやイスラム教を甘く見たのかもしれない。こんなことを繰り返しても、「一帯一路」政策は各国国民の支持や理解を得られない。どうして中国はこんな簡単なことが分からないのだろうか。

〇アジア
 先週末、中国の劉鶴副首相は先の米中貿易交渉について北京で中国メディアのインタビューに応じ、米国の姿勢に強い不快感を表明したようだ。本邦有力紙は政治局員という高位の要人がこの種のインタビューに応じるのは極めて稀だと報じていた。まあ、それはそうなのだろうが、筆者はこの報道にちょっと違和感を感じた。

 これが7人しかいない政治局常務委員によるインタビューなら確かに異例だろう。だが、劉鶴は副首相ながら、所詮は25人いる政治局員の一人に過ぎない。ここは「インタビューの異例さ」に注目するよりも、「中国が合意を破り、再交渉を求めた」という米国の宣伝に対抗すべく中国なりの「対米情報戦」を仕掛けていると見るべきだろう。

 もう一つ気になるのは18日のオーストラリアの総選挙だ。報道によれば、与党保守連合(自由党・国民党)と最大野党労働党の一進一退の攻防戦が続いているという。最新世論調査によれば保守連合が49%、労働党は51%となり、労働党が僅差で勝利するとの見方も出ている。対中政策に変化があるかどうかが気になるところだ。

〇欧州・ロシア
 先週末、英紙がある世論調査の結果を発表した。それによれば、各政党の支持率は、BREXIT党(ファラージ元UKIP党首の新党)が34%、労働党が21%、自由党が12%で、何とメイ首相率いる保守党はわずか11%だったという。これではメイ首相主導のEU離脱は難しいだろう。23日に予定される欧州議会選挙の結果が気になる。

〇中東
 先々週、米国家安全保障担当大統領補佐官が「イランによる数々の挑発的言動」に対応するため、空母打撃群と爆撃部隊を中東に派遣すると発表、空母派遣によって「米国や同盟国の権益を攻撃すれば容赦なく実力を行使するという、明確なメッセージをイランに送る」と述べたことは先週簡単に触れた。

 これと関係があるか現時点では不明だが、サウジアラビアの産業鉱物資源相はアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ沖合で先週末、何者かによる「破壊行為」があり、原油タンカー2隻が大きな損傷を受けたと発表。UAE当局も同じ海域で商船4隻が攻撃を受けたと述べたが、これって本当にイランの仕業なのか。事実関係を知りたい。

〇南北アメリカ
 米議会下院では相変わらずロシアゲート、モラー特別検察官の報告書、トランプ氏の税金関係資料、トランプ・ジュニアの宣誓証言などについて召喚状(英語でサピーナという)を連発しようとし、ホワイトハウスとの対決姿勢を強めている。この種のニュースを「これでもか、これでもか」と垂れ流すCNNはちょっと食傷気味だ。

〇インド亜大陸

 インドは5月23日まで下院総選挙が続く。今週はこのくらいにしておこう。


4月29-6月7日 国際法委員会第71回会合 first part(ジュネーブ)
5月4日ごろ-6月2日ごろ ラマダン(断食)月
12-16日 リムASEAN事務総長の訪日
12-19日 対日理解促進交流・中国社会科学院青年研究者代表団第1陣の訪日
13日 米・ハンガリー会談(ワシントン)
13日 フィリピン上院(定員の半数)・下院及び地方選
13日 国後島及び択捉島からの患者の受入れ
13日 ソユーズ2.1b(GLONASS-M 758)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
13-14日 EU外相理事会(防衛)(ブリュッセル)
13-15日 欧州経済会議(ポーランド・カトビツェ)
13-17日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)アドバイザリーグループ第52回会合(ウィーン)
13-17日 国際人権理事会人権と多国籍企業等に関する作業部会第23回会合(ジュネーブ)
13-20日 辻外務大臣政務官がメキシコ、キューバ及びチリを訪問
13-6月28日 ジュネーブ軍縮会議(CD)second part(ジューネブ)
14日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
14-17日 令和元年度中東アフリカ大使会議の開催(外務省)
14-17日 スマートアフリカ主催「トランスフォーム・アフリカ2019」(ルワンダ・キガリ)
15日 中国4月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15日 米国4月小売売上高統計発表
15日 フランス・ニュージーランドのSNSテロ利用阻止国際会議(パリ)
16日 G7デジタル担当相会合(パリ)
16日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
16日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
16日 ファルコン9(スペースX社スターリンク衛星複数機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
16-17日 G7健康担当相会合(パリ)
17日 EU4月CPI発表
17日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
17-18日 APEC貿易担当相会合(チリ・バルパライソ)
18日 オーストラリア議会議員選
19日 スイス国民投票


【来週の予定】
20-21日 OECDフォーラム(パリ)
20-21日 EU環境相理事会非公式会合(ブカレスト)
20-28日 WHO 世界保健総会第72回会合(ジュネーブ)
20日-6月17日 第14期第7回ベトナム国会(ハノイ)
21日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
21日 チリ大統領教書発表(バルパライソ)
21日 マラウイ大統領・国民議会総選挙
21日 OECD世界経済見通し(パリ)
21-6月21日 国際民間航空機関(ICAO)council phase 第217回会合(モントリオール)
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会非金融政策(フランクフルト)
22日 メキシコ3月小売・卸売販売指数発表
22日 FOMC議事録(FRB)
22日 PSLV C46(地球観測衛星 Risat-2BR1)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
22-23日 OECD閣僚会議(パリ)
22-23日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
22日か23日 ロシア1-4月鉱工業生産指数発表
23日か24日 ロシア4月雇用統計発
23日 インド国会下院議員選挙(総選挙)開票
23-26日 欧州議会選挙
24日 メキシコ第1四半期GDP発表
24日 アイルランド国民投票
25-28日 米・トランプ大統領が訪日
26日 ベルギー連邦議会(下院)選挙、地域議会選挙
26日 ドイツ・ブレーメン州議会選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年5月14日(火) | [ ]

 先週末、またまた米大統領が驚くべきツイートを行ったので、今回は米中貿易交渉を取り上げたい。「金曜日(10日)に中国産品2000億ドル分に対する関税を10%から25%に」、「他の中国産品3250億ドル分も近く25%の関税を課す」、「対中貿易交渉は続くが、あまりに遅い」とやった。既に、各国の株式市場は軒並み値を下げている。

 米紙は「中国が劉鶴訪米の中止を検討中」、「中国はトランプ氏のツイートに驚いており」「脅迫の下で交渉することを望まない」と報じた。劉鶴副首相は予定通り訪米するかと問われれば、本稿執筆時点でその可能性は低いだろう。トランプ氏の脅迫まがいのツイートは交渉上有効な戦術かと聞かれれば、それは逆効果だと思う。

 一方、現時点で予想される米中合意の概要は、知的財産権保護の強化、自動車や金融分野で市場アクセス拡大、人民元管理の透明性拡大、大豆、天然ガスなど米国産品の大規模購入、クラウドサービス米企業の中国内での独立営業などだが、中国は関税解除の時期と態様に、米国は合意の効果的実施確保措置に関心がある。

 詳細は今週のジャパンタイムスに英語版を、日経ビジネスオンラインに日本語版を寄稿したのでご一読願いたい。要するにトランプ氏の「交渉上の梃子」への過信と中国人の「面子を守る」性格の強さが相まって、米中交渉の先行きは極めて不透明ということ。米中合意は「一時的、限定的、表面的」なものにならざるを得ないだろう。

 もう一つ、重要な動きがある。5日。ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官が「イランによる数々の挑発的言動」に対応するため、空母打撃群と爆撃部隊を中東に派遣すると発表した。同補佐官は空母派遣によって「米国や同盟国の権益を攻撃すれば容赦なく実力を行使するという、明確なメッセージをイランに送る」と述べたそうだ。

 中東に空母打撃軍が派遣されるのは日常茶飯事で、中東問題のプロには何がニュースなのか良くわからないが、ボルトン氏が「米軍は、イランの革命防衛隊であれ通常のイラン軍であれ、いかなる攻撃にも対処する万全の準備を整えている」とわざわざ発表したこと自体、米国が中東での最近のイランの動きを重大視している証拠だ。

 筆者の見立ては簡単。米国は後述するハマスの対イスラエルロケット攻撃の裏にイランがいると見ており、イランに「これ以上のイスラエル攻撃はレッドラインだ」と伝えているのだと思う。イランは、イラクのサダム・フセインなどとは異なり、「力による外交」を正確に理解する国であり、ガザにおけるロケット攻撃は下火になるはずだ。 

〇アジア
 先週4日に北朝鮮が飛翔体を発射、具体的には短距離弾道ミサイルなどのようだ。それにしても、これをミサイルと呼ばないのは理解に苦しむ。大陸間弾道弾や中距離でないとしても、ミサイル以外は考えにくいだろう。それでも米国務長官は「米国や韓国、日本にとって脅威ではなかった」とし、北朝鮮への批判を避けたそうだ。

 同長官は米朝交渉の継続にも意欲を示したようで、「完全で検証可能な非核化に向けた道のりは遠い」が、「我々はまだ前へと進む道があると信じている」とも述べたらしい。米国の対北朝鮮関係は相変わらずのようだ。何の根拠もないが、そろそろ日本も動き始める時期なのだろうな、と思う。

〇欧州・ロシア
 3日、米露首脳電話会談が行われ、米露に加え中国が参加する新たな核軍縮協定の可能性や、北朝鮮の非核化に向けた取り組み、ベネズエラ情勢などについて1時間以上協議したそうだ。米国では特別検察官の報告書の関連で、トランプ氏がロシアの米国大統領選挙介入につきプーチン大統領に抗議しなかったことが批判されている。

 また、両首脳はベネズエラ情勢についても協議、トランプ氏が救援物質の国内搬入を望むと述べたのに対し、プーチン大統領は「ベネズエラの内政に干渉すれば、政治的解決に向けた道は閉ざされる」と伝えたという。少なくとも今回は様々な問題で米露両国首脳がまともな会談を行ったように見える。これって昔は当たり前だったのだが。

〇中東
 5月5日からイスラム教のラマダン月が始まったが、ガザ地区でハマスなどが4日以降、イスラエルに向けてロケット弾600発以上を発射、イスラエル側に4人死者が出た。対するイスラエル軍はハマスなどの軍事関連施設約260カ所を空爆し、民間人を含む23人が死亡したという。

 イスラエル軍は空爆を続けるとしており、被害が拡大する恐れもあると報じられているが、筆者は別の見方をする。ハマースが600発ものロケット弾を何故持っているのか。イランの革命防衛隊の支援がなければあり得ないと考えるのが普通だろう。されば、前述のボルトン発言はイラン経由ハマスへのメッセージである。

〇南北アメリカ
 現在米議会にはロシアゲートのモラー特別検察官に公聴会で宣誓証言させようとする動きがあり注目されている。当初、大統領は特別検察官の証言について「司法省に任せる」としていたが、月曜日になり「証言には反対する」と態度を豹変させたことが再び話題となっている。まあ、トランプ氏の豹変は毎度のことで驚くには当たらないが。

〇インド亜大陸

 インドは今も下院総選挙の真っ最中。今週はこのくらいにしておこう。


4-6日 タイ国王戴冠式(バンコク)
4-17日 エレクトロン(地球低軌道実験衛星)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
4日ごろ-6月2日ごろ ラマダン(断食)月
5-7日 フランシス法王がブルガリアを訪問
6-17日 国際麻薬統制委員会(INCB)第125回会合(ウィーン)
7日 欧州委員会春季経済予測発表
7-8日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
7-8日 ブラジル中央銀行、Copom
7日か8日 ロシア4月CPI発表
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会 非金融政策(フランクフルト)
8日 米中閣僚級貿易協議(ワシントン)
8日 中国4月貿易統計発表(税関総署)
8日 タイ銀行金融政策委員会
8日 南ア国民議会総選挙
8日 ベリーズ・グアテマラとの国境線確定をめぐり国民投票
8日 中国ファーウェイ副会長の米国引き渡しをめぐる審理(カナダ・バンクーバー)
8-12日 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第49回総会(京都市)
9日 中国4月CPI, PPI発表
9日 米国3月貿易統計発表
9日 欧州理事会 非公式会合(ルーマニア・シビウ)
9日 メキシコ4月CPI発表
9日 ブラジル3月月間小売り調査発表
9日 タイ総選挙の公式結果発表
9-10日 G7ジェンダー担当相会合(フランス・パリ)
9-11日 河野外務大臣がロシアを訪問
9-12日 菅官房長官が訪米
10日 インド3月鉱工業生産指数発表
10日 米国4月消費者物価指数(CPI)発表
10日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表
10日 ブラジル4月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
10日 日露外相会談(モスクワ)
10-12日 柔道グランドスラム・バクー(アゼルバイジャン・バクー)
11-12日 G20農業大臣会合(新潟県)
11-19日 メード・イン・ラオスフェア(ビエンチャン)
12日 リトアニア大統領選挙
12日 F1スペインGP決勝(スペイン・バルセロナ)


【来週の予定】
13日 ハンガリー・オルバーン・ヴィクトル首相が訪米(ワシントン)
13日 フィリピン上院(定員の半数)・下院及び地方選
13日 ソユーズ2.1b(GLONASS-M 758)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
13-14日 EU外相理事会(防衛)(ブリュッセル)
13-15日 欧州経済会議(ポーランド・カトビツェ)
13-17日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)アドバイザリーグループ 第52回会合(ウィーン)
13-6月28日 ジュネーブ軍縮会議(CD)second part (ジューネブ)
14日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
14-17日 スマートアフリカ主催「トランスフォーム・アフリカ2019」(ルワンダ・キガリ)
15日 中国4月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15日 米国4月小売売上高統計発表
15日 フランス・ニュージーランドのSNSテロ利用阻止国際会議(パリ)
16日 G7デジタル担当相会合(パリ)
16日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
16日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
16日- ファルコン9(Radarsat C-1, 2, 3)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
16-17日 G7健康担当相会合(パリ)
17日 EU4月CPI発表
17日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
17-18日 APEC貿易担当相会合(チリ・バルパライソ)
18日 オーストラリア議会議員選

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年5月 7日(火) | [ ]

 普通なら、「今週は平成最後の外交・安保カレンダーとなる」なんて書くべきなのか?されば、「来週は令和初の外交・安保カレンダー」と言うべきなのか?確かに新しい時代の始まりはお目出度いが、日本の元号が変わっても国際情勢は変わらない。今週以降も、これまで通り、時々の重要国際問題について淡々と論評していこう。

 先週も国際報道は盛り沢山だったが、筆者が最も関心を持ったニュースはスペイン総選挙とサンディエゴ郊外のシナゴーグでの対ユダヤ教徒銃乱射事件だった。一見無関係の両者は、以下に述べる通り、筆者の頭の中では宗教的理由による人種差別、大量殺人という「同一現象の氷山の一角」にすぎないと思うからだ。

 続いての関心事項は、ウラジオストクでの露朝首脳会談、北京での「一帯一路」国際会議とワシントンでの日米首脳会談という一連の首脳会談だ。東アジア関連の首脳会談が続いたのは決して偶然ではない。先週末はこれらの関連でテレビ出演が続いたが、言い尽くせなかったことも少なくなかった。以下改めてコメントしてみよう。

 まずは露朝首脳会談だが、ある番組では「愛情のない偽装結婚」、他の番組では「愛情のない打算の初デート」とコメントした。露朝両国とも本命は米国だからだ。自国に対する経済制裁を解除してもらいたいのだが、米国は振り向いてもくれない。だから打算のデートをするのだが、露朝ともお互いの窮状を解決できる実力はない。

 そんな首脳会談が成功する訳はない。露大統領は北京での「一帯一路」国際会合に行く途中だし、北朝鮮の委員長も大した成果はなかったらしく日程を切り上げて帰国した。それでもこの初デート、本命米国を含む関係者に対するインパクトはある程度あったから、デートしたこと自体で目的は達成したのではなかろうか。

 続いて日米首脳会談だが、3カ月に3回の日米首脳会談、1カ月に2回の米大統領訪日というスケジュールは文字通り史上初ではないか。外務省入省以来、日米首脳会談といえば、すべてに優先する重大外交案件だったが、これがこうも頻繁に開かれるようになるとは誰が予想しただろう。

 日米首脳の個人的関係の強固さ、直前に開かれた日米2+2会合で確認された同盟関係の深化、ある程度制御可能な貿易交渉など、一昔前の日米関係を知る者にとっては隔世の感がある。しかし、こうした関係が今後も長く続くと思ってはならない。これは様々な要因と偶然が重なった例外的な現象と見た方が良いだろう。

 そうは言っても、やはり冷戦終了後の米国の対外関心事項が、ソ連封じ込めから、中東湾岸紛争・テロとの戦いを経て、現在徐々に対中政策にシフトしていることだけは間違いなかろう。過去20年間、米国が中東で「油を売っている」間に、中国はその勢力圏を大幅に拡大することに成功したが、今後はそうもいかなくなるのか。

〇アジア
 先週の北京での「一帯一路」会議後中国国家主席は記者会見で「オープンでクリーンかつグリーンな開発を支持し、保護貿易主義を拒絶する」「一帯一路構想事業は環境に配慮し、持続可能な財政計画の下で行われる」「今年はより多くの友好国やパートナーが一帯一路構想に加わるというメッセージが明確に示された」と述べたそうだ。

 今回の新参加国はアフリカの赤道ギニア、リベリア、欧州のルクセンブルク、イタリア、キプロス、中南米のジャマイカ、ペルー、バルバドス、中東のイエメンの9か国だったという。確かにイタリアの存在は大きいが、それ以外は比較的小国だった。中国にはお付合いせざるを得ないということなのだろうか。

〇欧州・ロシア
 4月28日、スペイン総選挙が投開票され、現首相率いる中道左派の与党・社会労働党が350議席中123議席獲得で第1党となったものの、中道右派国民党は半減の66議席で大敗、移民受け入れ反対などを掲げる極右政党VOXが24議席を獲得したと伝えられた。このVOXの躍進が曲者なのである。

 こうした動きはハンガリーやポーランドなど東欧諸国で政権を握った「ダークサイド」現象がオーストリアやイタリアを経て、遂にスペインにも波及した可能性を示している。筆者は「スペインよ、お前もか」というより、遂に西欧の脆弱な部分にまで極右政党が台頭してきたのかという危機感を抱くのだが、心配し過ぎだろうか。

 最近は「欧州におけるナショナリズム、ポピュリズムはピークを過ぎ、今は制御可能だ」といった論調もあるが、筆者は懐疑的。東欧はある程度仕方がないし、西欧の比較的安定した諸国で極右政党が台頭しても制御可能だろう。だがスペイン、イタリア、ギリシャなどでは経済情勢が悪化すれば制御不能になることを筆者は懸念するのだ。

〇中東
 今週5月5日からイスラム教のラマダン月が始まる。いわゆる断食月だがずっと飲まず食わずではない。毎日、日の出から日没まで、例えば朝5時半前後から夕方の5時前後までの断食だ。健康に良さそうだが、前後に大量の食事をとることが多く、かえって不健康という指摘もない訳ではない。あまり大きなニュースがないことを祈ろう。

〇南北アメリカ
 サンディエゴ近郊に限らず、ユダヤ教のシナゴーグ(礼拝堂)に対する襲撃がこのところ米国で頻発しているのは、単なる反ユダヤ主義ではなく、より一般的、世界的に宗教的差別主義テロが蔓延する前兆かもしれぬ。こうした事件はニュージーランドで起き、スリランカでも起きた。今後も多くの脆弱なターゲットが狙われるだろう。

〇インド亜大陸

 インドは今も下院総選挙の真っ最中。今週はこのくらいにしておこう。


25日-5月5日 インドネシア国際モーターショー(ジャカルタ)
27日-5月5日 一郡一品(ODOP)フェア(ビエンチャン)
26-29日 河野外務大臣がサウジアラビアを訪問
28-30日 辻外務大臣政務官がニューヨークを訪問
29日 将来の労働に関するASEAN関係労働相特別セッション(シンガポール)
29日 米・3月個人消費支出(PCE)(商務省)
29-5月3日 国連地名専門家会議 First session(ニューヨーク)
29-5月4日 中露海軍合同軍事演習(青島沖)
29-6月7日 国際法委員会 第71回会合 first part(ジュネーブ)
30日 米中閣僚級貿易協議(北京)
30日 スリランカ中央銀行年次報告書(Annual Report)発表
30日 EU3月失業率発表
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
30日 マリ国民議会選
30日 EU1-3月期GDP速報値(EU統計局)
30日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン17号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
30日-5月1日 米国FOMC
30日-5月2日 第5回ASEAN+3の財務相・中央銀行総裁合同会議(フィジー)
30日-5月3日ASEAN-オーストラリア・ニュージーランドFTA関連合同会議(メルボルン)
1日 第15回労働に関する高級実務者会議(タイ)
1日 人的資源開発に関するハイレベル会議(バンコク)
1-2日 米・バー司法長官がロシア疑惑で議会証言(ワシントン)
1-4日 中国労働節休暇
1-5日 アジア開発銀行(ADB)年次総会(フィジー・ナンディ)
2日 英国地方議会選挙
2日 「ウィキリークス」創始者の米国引き渡しに関する審理(ロンドン)
2日 米でキューバ進出企業への訴訟解禁
2日 米国によるイラン産原油禁輸制裁の適用除外期限
2-3日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会 非公式会合(競争力(域内市場・産業))(ブカレスト)
2-3日 国際農業開発機構(IFAD)執行理事会 第126回会合(ローマ)
2-4日 岩屋防衛相がベトナムを訪問
2-4日 2019年ベトナム国際カフェ展(Vietnam Int'l Cafe Show 2019)(ホーチミン)
2-6日 河野外相がアフリカ3カ国(アンゴラ、エチオピア、南スーダン)を訪問
3日 米国4月雇用統計発表
3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
3日 北朝鮮・金正男氏殺害事件のベトナム人女性受刑者釈放(マレーシア)
4日ごろ-6月2日ごろ ラマダン(断食)月
4日 中国の五・四運動から100年
4-6日 タイ国王戴冠式(バンコク)
4-17日 エレクトロン(地球低軌道実験衛星)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
5日 パナマ大統領選挙
5日 北マケドニア大統領選 決選投票
5-6日 G7環境相会合(フランス・メス)
5-7日 フランシス法王がブルガリアを訪問


<6-12日>
7日 欧州委員会春季経済予測発表
7-8日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
7-8日 ブラジル中央銀行、Copom
7日か8日 ロシア4月CPI発表
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会 非金融政策(フランクフルト)
8日 米中閣僚級貿易協議(ワシントン)
8日 中国4月貿易統計発表(税関総署)
8日 タイ銀行金融政策委員会
8日 南ア国民議会総選挙
8日 ベリーズ・グアテマラとの国境線確定をめぐり国民投票
9日 中国4月CPI発表
9日 米国3月貿易統計発表
9日 欧州理事会 非公式会合(ルーマニア・シビウ)
9日 メキシコ4月CPI発表
9日 ブラジル3月月間小売り調査発表
9日 タイ総選挙の公式結果発表
9-10日 G7ジェンダー担当相会合(フランス・パリ)
9-11日 河野外務大臣がロシアを訪問
10日 インド3月鉱工業生産指数発表
10日 米国4月消費者物価指数(CPI)発表
10日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表
10日 ブラジル4月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
10日 日露外相会談(モスクワ)
11-12日 G20農業大臣会合(新潟県)
11-19日 メード・イン・ラオスフェア(ビエンチャン)
12日 リトアニア大統領選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2019年5月 7日(火) | [ ]

 今週は25日に露朝首脳会談、26日に日米首脳会談がある。3カ月に3回も首脳会談をやって何するのかとも言われるが、トランプ氏にはできるだけ多く会って、日本の考え方を伝えることだけでも意味があるだろう。露朝首脳会談は恐らく同床異夢だろうが、お互いに利用価値は高いのだから、失敗だけはないだろう。

 それよりも、筆者にとって今週の最大の関心事は、ロシアゲートを巡るモラー特別検察官の報告書が一部黒塗りながら400ページ以上公開されたことだ。これほど突っ込み所満載の文書はないが、如何せん、分量が多過ぎて筆者も未だ全容を把握するには至っていない。というわけで、ここではさわりだけを各種報道に基づきご紹介しよう。

    ①報告書は「トランプ陣営関係者がロシア政府と大統領選干渉活動について共謀・連携したとは認めない"did not establish that members of the Trump campaign conspired or coordinated with the Russian government in the election interference activities."」が、「トランプ陣営もロシア政府も相手側が利益を得ると信じていた"both the Russian government and the Trump campaign believed the other would be beneficial."」と判断した。

    ②トランプ候補はヒラリー・クリントンのEメールを探すよう側近に求めた"Trump asked campaign aides to find Hillary Clinton's emails"。

    ③報告書は司法妨害について大統領による犯罪を認めなかったが、同時に無罪放免もしなかった"While this report does not conclude that the President committed a crime, it also does not exonerate him"。

    ④大統領の捜査に対する干渉努力は主として部下により拒否されたため成功しなかった"The President's efforts to influence the investigation were mostly unsuccessful, but that is largely because the persons who surrounded the President declined to carry out orders or accede to his requests."。

    ⑤司法妨害については議会による調査が可能である"Congress may apply the obstruction laws to the President's corrupt exercise of the powers of office accords with our constitutional system of checks and balances and the principle that no person is above the law."。 

      ・・・・・まだ続くが、もうこの位で良いだろう。

       要するに結論は「グレー」ということだ。例によってCNNは報告書の結論を「限りなく黒」に、FOXやトランプ陣営は「限りなく白」に仕立て上げようとしている。これからは下院民主党が報告書の一言一句を取り上げ、公聴会を開き、トランプ一族を含め召喚状を発し宣誓証言を求めギリギリ締め上げていくはず。これが来年まで続くのだ。

       一方、大統領弾劾の是非では民主党内が割れている。ここは一気に弾劾裁判を進めるべきとする強硬派に対し、下院議長などは「弾劾は逆効果」と冷ややかだ。今も民主党の大統領候補者数は二桁に上り、バイデン元副大統領も近く出馬を表明するというから、当面民主党内は星雲状態のまま。このままならトランプ氏再選もあり得る。

      〇アジア
       先週北朝鮮の第1外務次官は「ボルトンは17日、第3回首脳会談に先立って核兵器を放棄するための戦略的決定をしたという真の表しがあるべきだの、トランプ大統領が言った『大きな取り引き(ビッグディール)』に対して論議する準備ができているべきだの、などと生意気なことを言った」などと述べたそうだ。凄いことを言うもんだ。

       彼女はハノイ首脳会談が「決裂」した後、深夜の記者会見で世界のメディアに「放心状態」を曝した女性外交官だが、あのボルトンに喧嘩を売るとは良い度胸だ。単なるブラフなのか、それともトランプ氏の足元を見ているのか。少なくとも彼女が失脚していないことだけは確かなようだが、こんなやり方で外交ができるのか、疑問である。

      〇欧州・ロシア
       先週のウクライナ大統領選決選投票の結果、コメディー俳優候補が7割超を得票し、圧勝する見通しとなったそうだ。コメディアンは頭が良くなければ務まらないが、新大統領の政治力は未知数としか言いようがない。ウクライナを巡る情勢はさらに混乱する可能性の方が高いのではないか。ロシアにとっては絶好のチャンスである。

      〇中東
       今週最大のショックはスリランカでの同時多発大規模連続テロ事件の発生だ。日本人を含む多くの外国人も犠牲になった。現時点で犯行声明等はないが、イスラム系である可能性が高いだろう。それにしても卑劣な奴らだ、彼らのテロは最も脆弱なターゲットに対し最も無慈悲な攻撃を平然と行うのが特徴。やはり中東発のテロなのか。

      〇南北アメリカ
       米国はイースター休暇で大きなニュースなし。米国発ニュースで興味深いのは、米国が対イラン原油禁輸制裁の猶予措置を打ち切ると決めたことだ。日中韓、台湾、インドを含む8か国・地域が対象だが、マーケットの予想を裏切る決定だけに、イラン側の強い反発が予想される。イランの強硬派が台頭するかが気になるところだ。

      〇インド亜大陸

       インドは下院総選挙の真っ最中。今週はこのくらいにしておこう。


      8-29日 国連軍縮委員会 年次会合(ニューヨーク)
      16-25日 上海モーターショー開幕(一般公開は18日から)
      18-25日 モスクワ国際映画祭
      21-24日 パキスタン・クレシ外相が来日
      22日 米・2月個人消費支出(PCE)
      22日 森外務審議官とロシア・モルグロフ外務次官との協議の開催(東京)
      22日 エジプト・憲法改正案の是非を問う国民投票
      22-29日 安部首相 欧州および北米訪問
      22-25日 第17回情報通信に関する高級実務者会議(SOMRI)(シンガポール)
      22-26日 薗浦内閣総理大臣補佐官のブルネイ及び東ティモール訪問
      23日 メキシコ3月雇用統計発表
      23日 米下院歳入委が求めるトランプ大統領の納税記録提出期限
      23日 中国・国際観艦式(山東省青島)
      24日か25日 ロシア3月雇用統計発表
      24-25日 第25回ASEAN非公式経済相会議(AEM)(タイ・プーケット)
      24-25日 ベネズエラ・ロペス国防長官がロシアを訪問
      24-27日 APECビジネス諮問委員会(ABAC)会合(インドネシア・ジャカルタ)
      24-28日 第21回ジャカルタ・インターナショナル・ハンディクラフト・トレードフェア(INACRAFT 2019)(ジャカルタ)
      24-29日 二階自民党幹事長の訪中
      25日 露朝首脳会談(ウラジオストク・ルースキー島)
      25日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
      25-26日 ASEAN常任委員会議、ASEAN高級実務者会議(ASEAN SOM)、ASEAN合同諮問会議(プーケット)
      25-26日 シリア和平協議再開(カザフスタン・ヌルスルタン)
      25-26日 英・ウィリアム王子がニュージーランドを訪問
      25-27日 シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議(北京)
      25日-5月5日 インドネシア国際モーターショー(ジャカルタ)
      26日 ASEAN経済高級実務者-欧州貿易担当委員会議(プーケット)
      26日 米国第1四半期GDP発表(速報値)
      26日 メキシコ3月貿易統計発表
      26日 日米首脳会談(ワシントン)
      26日 ロシア中央銀行理事会
      26日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン17号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
      27日 板門店宣言から1年
      27-28日 安倍首相がカナダを訪問
      28日 スペイン総選挙
      28日 ベナン国民議会選挙
      28日 自動車F1アゼルバイジャンGP決勝(バクー)


      <29日-5月5日>
      29日 将来の労働に関するASEAN関係労働相特別セッション(シンガポール)
      29日 米・3月個人消費支出(PCE)(商務省)
      29-5月3日 国連地名専門家会議 First session(ニューヨーク)
      29-6月7日 国際法委員会 第71回会合 first part(ジュネーブ)
      30日 スリランカ中央銀行年次報告書(Annual Report)発表
      30日 EU3月失業率発表
      30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
      30日 マリ国民議会選
      30日 EU・1-3月期GDP速報値(EU統計局)
      30日-5月1日 米国FOMC
      30日-5月2日 第5回ASEAN+3の財務相・中央銀行総裁合同会議(フィジー)
      31日 インド第4四半期GDP発表
      5月1日 中国労働節休暇
      1-5日 アジア開発銀行(ADB)年次総会(フィジー・ナンディ)
      2日 英国地方議会選挙
      3日 米国4月雇用統計発表
      3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
      4日 エレクトロン(地球低軌道実験衛星)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
      5日 パナマ大統領選挙
      5-6日 G7環境相会合(フランス・メス)

      (宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

      2019年4月23日(火) | [ ]

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