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2013.11.12

ワーキング・ペーパー(13-007E) 「Laffer Curves in Japan」

本稿はワーキング・ペーパーです

 日本の政府総債務のGDP比は世界最大であり、その値は2013年末には240%を超えると推計されている。財政健全化は中長期的な経済成長を目的とする政府にとって重要なテーマのひとつであり、安倍政権は2014年4月からの消費税増税とそれによる景気後退を緩和するために法人税減税を予定している。

 しかしながら、税率増加は必ずしも税収増加を意味しない。税率の上昇は直接的にはもちろん税収増加をもたらす効果を持つが、高すぎる税率は労働者の労働意欲や投資意欲をそぎ、結果として経済が低迷し、総税収が減少する可能性が考えられるからである。「ラッファー曲線」とは、1974年のビジネスディナー中にウォールストリート・ジャーナルの記者であるアーサー・ラッファー氏が述べたとされる "There are always two tax rates that yield the same revenues(同じ税収をもたらす税率は二つ存在する)"という言葉に由来する経済学用語である。横軸に税率、縦軸に総税収を取ると、そのグラフは逆U字型をするというのがラッファー氏の主張である。

 本稿では、消費税・労働税・資本税の3つの税金を標準的な新古典派成長モデルに導入し、それぞれの税に対するラッファー曲線の推計を行った。その結果、労働税および資本税は上記のような逆U字型のラッファー曲線が得られるが、消費税は税率をあげるほど税収を増やすことができることが分かった。また、大東文化大学の郡司大志准教授と法政大学の宮崎憲治教授による研究で推計された日本の労働と資本に対する平均限界税率を用いると、日本では労働税はラッファー曲線において税収を最大化する税率よりも20~30%低い水準にあり、増税の余地を十分に残しているのに対して、資本税はラッファー曲線において税収を最大化する税率よりも高くなっている、または最大化水準よりはわずかに低いものの増税の余地がほとんどないことが明らかになった。この高すぎる資本税の問題は、他国の研究ではデンマークとスウェーデンで見られる傾向と同じである。また、将来の消費税率がより高くなると想定される場合には、ラッファー曲線において税収を最大化する税率は低下し、現実の資本税が高すぎるのではないかという問題はより深刻なものとなることが分かった。

 上記に加えて、本稿では以下の2つの実験を行った。第一に、消費税水準を所与として税収を最大にするような労働税・資本税の組み合わせを考えると、労働税を上げつつも、資本税は下げることが望ましいという結果が得られた。また、政府の税収を所与として、経済厚生を最大化するような消費税・労働税・資本税の組み合わせを考えると、労働税・資本税をゼロにして消費税で収入をまかなうのが最も望ましい政策であることも分かった。




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