本文へスキップ

2018.06.07

【数字は語る】トランプ政権が打ち出した貿易・投資規制の不確実性-円安持続に黄信号か

週刊ダイヤモンド 2018年5月12日に掲載

  • 須田 美矢子
  • 特別顧問
    須田 美矢子

 米トランプ政権は、国家安全保障への悪影響や中国の不公正な取引慣行を根拠に貿易・投資規制を打ち出した。

 しかし、鉄鋼製品などへの関税賦課を国家安全保障のためとするのは無理があるし、不公正な取引阻止のために持ち出した米通商法301条は、WTO(世界貿易機関)協定に抵触する可能性がある。そもそも超大国の米国が貿易で不公平な扱いを受け続けてきたとは到底思えず、勝手な判断で貿易制限をすれば報復を招き、貿易戦争になりかねない。

 中国にも知的財産権の侵害や重要な技術の移転強要などの問題がある。公平な取引を促すには米中の2国間ではなく、日米欧が一緒に中国に対峙する方が効果的だ。

 トランプ大統領の不公平の判断基準が、2国間の貿易収支不均衡にあるのも問題だ。昨年の米国の貿易赤字7962億ドルの半分弱が対中国で、対日は688億ドルだが、それは主にマクロの経済政策や経済状況とミクロの比較優位構造による。米政権は大型減税と歳出増を決めたが、完全雇用下では需要増は海外に向かい、経常収支・貿易収支の赤字拡大が予想される。米国の利上げも資本流入をもたらし赤字拡大に寄与する。

 相手国の中国は、米国の制裁に対して報復関税を課し、今後も報復を示唆する一方で、金融市場を開放し、外資の知的財産権の保護・取り締まりを強めるとしている。ただ製造業を高付加価値化する計画(「中国製造2025」)に向けて、基幹部門の国有企業改革は望めないし、独立した司法制度もない中で中国の知的財産権侵害への懸念は、簡単には拭えない。

 このように考えると、米中間選挙の劣勢予想もあって、トランプ大統領の中国や日本などへの批判はやみそうもない。貿易・投資規制をめぐる不確実性で市場変動は大きくなり、不安心理を高めよう。また、米国の財政金融政策による金利上昇はドル高要因だが、日本の黒字批判が想定される中、円は実質で見て過去20年の平均から約25%円安との米外為報告書の指摘もある。持続的な円安は想定しづらく、日本の物価目標達成は遠のきかねない。

役員室から > 「須田 美矢子」 その他のコラム

須田 美矢子 その他のコラムをもっと見る

役員室からトップへ戻る