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2018.09.10

医療介護費のGDP比上昇は必定-経済全体が回る制度設計が重要だ

CLINIC BAMBOO 2018年9月号掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 本年6月、OECD(経済開発協力機構:加盟国数36)が医療介護費のGDPに対する割合の2017年推計値を発表した。のとおり、わが国の同割合は17年に10.7%で第6位にある。これは、かつての「OECD諸国のなかでGDP比が英国と同じように低いので公費をもっと投入すべき」という主張の根拠がなくなったことを意味するものの、高齢化率が世界一であることを考慮すると、医療介護制度全体の運営は相対的にうまくやっていると評価できる水準である。

 しかしながら、1月の本コラムで示したように、日本の一般政府(国と地方政府)債務残高のGDP比は200%を超えており、19年10月に消費税率を8%から10%に引き上げることを織り込んでも、IMF(国際通貨基金)は23年時点で230%(米国は117%)と予測している。

 加えて、前号で述べたように、安倍政権は、骨太の方針で数字の辻褄合わせもできない状況にあり、財政再建の道筋を示すことを放棄した感がある。これは、医療介護費の公費財源が赤字国債に大きく依存する異常事態が今後も続き、現在の医療介護制度を維持することが不可能であることを意味する。

 ではなぜ、医療介護費のGDP比が17.2%にある米国経済が絶好調なのであろうか。それには3つの理由がある。

 第1に、経済全体の生産性向上により医療介護費増加を吸収できている。ちなみに、米国企業の人件費増加要因のうち医療介護費が占める割合は10%程度にすぎない。第2に、米国には約500の大規模非営利ホールディング医療介護事業体があり、医療介護サービス産業の生産性向上力が高い。これらは、全米どこでも地域最大の雇用主であり、専門人材生涯教育の場になっている。第3に、民間保険と公的保険に加入者一人ひとりが給付と負担のバランスを選択できる仕組みを組み込んでいる(6月号コラム参照)。

 そもそも、医療介護費のGDP比に理論的な最適値、あるいは上限など存在しない。なぜなら、この割合は、その国の人々がさまざまな財・サービスがあるなかで医療介護を選択した結果だからである。医学の発達、平均寿命の延び、高齢化、所得水準向上などを背景にGDP比が上昇するのは当然である。日本国民に問われているのは、医療介護費が増加しても経済全体が回るような制度設計なのである。


表 医療介護費のGDP比の国際比較                                 (単位:%)
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出所:OECD Spending on Health: Latest Trends June 2018

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