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2018.07.04

消費税率20%以上でないと国債札割れは避けられない

CLINIC BAMBOO 2018年7月号掲載

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 4月18日に出版した『財政破綻後 危機のシナリオ分析』(日本経済新聞出版社)が5月末時点で約1万冊と経済専門書としては異例のベストセラーになっている。

 第1章「人口減少時代の政策決定」の執筆者は、森田朗・津田塾大学総合政策学部教授(前中医協会長)である。私は、第4章「公的医療・介護・福祉は立て直せるか?」を執筆した。本書は、財政破綻が起きたときに、社会・経済システムのうちどの部分を守り、どの部分を切り捨てざるを得ないのかという短期的トリアージ、並びに中長期的に日本がどうなるかを示している。

 International Monetary Fund(IMF=国際通貨基金)によれば、わが国の一般政府(国+地方政府)債務残高のGDPに対する割合は、2017年末時点で236%である。したがって、18年1月号の本稿で述べたとおり、日本の財政はすでに構造的に破綻している。問題は、財政破綻の第2段階である国債札割れ(国債の買い手がいなくなり国の資金繰りが困難になる事態)がいつ発生するかである。国債札割れのトリガー候補には、①大災害の発生で政府機能がマヒ、②石油価格上昇などにより貿易収支・経常収支が赤字転落、③海外金利の上昇、④金融市場から日本政府に財政再建の意志と能力がないと見切られたとき――などがある。

 このうち、④の可能性が高いことを示す出来事が3月にあった。私もパネリストとして参加した経済団体の社会保障フォーラムで、将来の総理候補と期待される自民党議員(37歳、財務省出身)が「消費税率引き上げを言うと選挙に勝てないので言わない」という言葉を何度も繰り返したのである。これに対して私が思わず、「それは政治家に国民に説明する能力がないということだろう」と発言すると、企業経営者の方々がうなずいていた。

 国債札割れを回避しつつ、時間をかけて財政再建を果たすためには、海外からも指摘されているとおり、消費税率を20%以上に引き上げる方針を今すぐにでも決定する必要がある。しかし、5月21日の経済財政諮問会議が公表した将来推計からは、その意思は感じとれない。加えて、安倍政権は東京オリンピック特需が終わった後の景気刺激策のための財政支出拡大を検討し始めた。

 したがって、医療・介護・福祉経営者は、に示したような事態が近未来に起こることを覚悟する必要がある。


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