トンデモもないことを年の初めに考え始めた。以下はあくまで一つの仮説に過ぎないのだが、敢えて言おう。過去数年間に世界各地で起きている様々な事象は、もしかしたら、1970年代に主要国間で合意されていた戦略的均衡点を40余年ぶりで再考するよう求める動きの一環ではないのか、というのが今の筆者の素朴な疑問だ。

1970年代に世界で起きた事象のうち、戦略的に見て最大のものは1972年の米中・日中国交正常化と1978年の中東和平問題に関するキャンプ・デービッド合意(CDA)である。前者は台湾と「一つの中国」に関する、後者はイスラエルのパレスチナ占領に関する、主要国間の国際政治的妥協の産物だった。

CDAはイスラエルにとって、米中国交正常化は中国にとって、それぞれ理想的な国際情勢の永続化を保証した。だが、結果論ではあるが、それによって爾後、イスラエルはエジプト・ヨルダンとの平和条約の下で西岸での入植地の拡大を、中国は改革開放により得た経済力を背景に周辺海洋での自己主張の拡大を、それぞれ実現した。

今見直しが進んでいるのは、これら40年前の国際政治的均衡点の妥当性ではないのか。イスラエルはCDAの下で、中国は「一つの中国」政策の下で、それぞれ勢力を拡大したが、その前に両国はすべきことがあるのではないか。これまでどの国も正面から問題提起できなかったこれらの点を提起したのは他ならぬ米国だった。

米国の政策が間違っているのではない。むしろ、こうした傾向は、過去40年間に誰もが疑わなかった歴史的均衡点が、国際情勢の変化に伴い、見直しを迫られつつあることを示しているのではないか。そうだとすれば、イスラエルや中国が如何に足掻こうとも、いずれ国際情勢は新たな均衡点に向かって動き始めるのではないか。

このことを、オバマ政権の対イスラエル政策とトランプ次期政権の対中政策が示しているならば、今後中東とアジアで情勢が流動化する可能性がある。40年前に始まった「現状」を維持するためには一体何が必要なのか。国際社会は今、その判断を求められているのだが、果たして我々にその余裕はあるのだろうか。大いに疑問だ。

〇欧州・ロシア
少なくとも欧州に以上のような危機感は感じ取れない。11日には欧州中銀の会議があり、12日にはギリシャに関するユーロ諸国の会合が予定されているが、東方キリスト教会のクリスマス(7日)が終わらないと、欧州は動き出さないのかもしれない。15日にフランスがパレスチナ問題の国際会議を主催するのが救いである。

〇東アジア・大洋州
12日に日本の首相がフィリピンを訪問する一方、同日からベトナム共産党のトップが訪中する。ほぼ同時に、日本の経産大臣も訪露する。それぞれ、やるべきことをすべく、水面下での話し合いが続きそうだ。

〇中東・アフリカ
イランのラフサンジャニ元大統領が亡くなった。それで何かが急に大きく変わることはないだろうが、1978年からイランを見ている者にとっては、一つの時代が終わったという感慨を禁じ得ない。今週は高村元外相が総理特使として、そのイランを訪問する。これから、イランをめぐる動きは徐々に活発化していくだろう。

〇南北アメリカ
トランプ外交チームについて良からぬ噂が伝わってくる。特に気になるのは、国防長官とトランプ側近たちとの国防省幹部人事に関する軋轢だ。報道がすべて正しい訳ではなく、しかも、この種の噂は4年ごとに繰り返される種類のものだが、今回は閣僚レベルに経験豊富なプロがいない分、より深刻かもしれない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。



1月9日 ユーロスタット、11月失業率発表
9日 北米国際自動車ショー開幕(報道陣向け公開は10日まで、一般公開は14~22日)(デトロイト)
9-11日 岸外務副大臣の国連安全保障理事会公開討論出席(ニューヨーク)
9-11日 第11回日中韓自由貿易協定交渉会合(首席代表・局長/局次長会合)の開催(北京)
9-12日 欧州議会委員会会議(ベルギー・ブリュッセル)
9-12日 金田勝年法相がドイツを訪問
9-12日 ルワンダのカガメ大統領がインドを訪問
9-13日 投資サミット「バイブラント・グジャラート」(インド・ガンディナガル)
9-13日 滝沢外務大臣政務官のフランス、モナコ、ポルトガル訪問
9-14日 スリランカのサマラウィーラ外相が英国を訪問
9-16日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」米国大学生(日本語弁論大会成績優秀者)の訪日
9-16日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」米国大学生(ビジネススクール)の訪日
9-19日 武井外務大臣政務官のベリーズ、メキシコ、バングラデシュ、インド訪問
9-20日 平成28年度スポーツ外交推進事業「Sport for Tomorrow」で外務省がサウジアラビアへ空手指導者を派遣
9-27日 国際民間航空機関(ICAO)第210回Committee Phase
10日 ブラジル11月月間小売り調査発表
10日 ニカラグア新大統領就任式(マナグア)
10日 中国2016年12月CPI発表
10日か11日 ロシア2016年12月CPI発表
10-11日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
10-12日 高村総理特使のイラン・イスラム共和国訪問
10-12日 ニュージーランドのイングリッシュ首相が欧州連合(EU)を訪問
10-12日 ケニアのケニヤッタ大統領がインドを訪問
10-13日 モンドラーネ・モザンビーク外務協力副大臣の訪日
11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
11日 ブラジル12月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
12日 ドイツのメルケル首相がルクセンブルクを訪問
12-13日 安倍首相がフィリピンを訪問
13日 米国12月小売売上高統計発表
13-14日 第27回アフリカ・フランス首脳会議(マリ)
15日 「Middle East peace conference」開催(パリ)

【来週の予定】
1月16日 EU外相理事会(ブリュッセル)
16日 キング牧師生誕記念日でニューヨーク市場休場
16-17日 アジア金融フォーラム(香港)
16-19日 ファッション・ウイーク(秋/冬)(香港)
16-19日 世界未来エネルギーサミット(WFES2017)(UAE・アブダビ)
16-19日 欧州議会本会議(ストラスブール)
16-20日 ASEAN Tourism Meetings 2017
17-20日 世界経済フォーラム年次会合(スイス・ダボス)
18日 ユーロスタット、12月CPI発表
18日 南ア2016年12月CPI発表
18日 香港施政報告発表
18日 米国12月消費者物価指数(CPI)発表
18日 カナダ中央銀行、政策金利、金融財政報告書発表
18日 「平成28年度地方連携フォーラム」の開催(東京)
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
20日 第45代米大統領就任式
22日 山形県知事選挙
22日 フランスで社会党が大統領予備選
22日 G20農業相会合(ベルリン)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年1月10日(火) | [ ]

謹賀新年、今年も本コラムを宜しくお願い申し上げる。希望に満ちた2017年になればと言いたいところだが、新年早々、トルコとイラクでテロが起きてしまった。本年も中東でこの種のテロ攻撃が続くだろうことは容易に想像できる。問題はこのような想像可能、予測可能な事件ではなく、予測不能な事象を如何に予測するかだろう。

振り返ってみれば、昨年は予測不能と思われたことが次々と発生した。BREXIT然り、トランプ候補当選然りでだ。曲がりなりにも国際情勢分析を生業としている以上、自らの予測が外れたら、その理由を詳細に分析し、将来に備えるのが職業人の最低限の責任だ。という訳で、今年のテーマは如何に「Unthinkable」を考えるかである。

要するに、Unthinkableとは結局、人間の「五感」で把握できないことを言うのだろう。一般に五感とは視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚をいう。されば、今年の命題は、将来起こりそうもないが起こり得ることを見たり、聞いたり、触れたり、味わったり、匂いを嗅いだりすることで、何とか予測できないかということだ。これを第六感というのだろう。

さてどうしたものか。一年かけて考えてみたい。

〇欧州・ロシア
4-8日に日本の防衛相がベルギー・仏を、5-11日には外務大臣が仏、チェコ及びアイルランドをそれぞれ訪問し、6日には日仏外務・防衛担当閣僚協議、いわゆる「2+2」がパリで開かれる。しかし、これで欧州が新年明けで仕事を再開すると思ったら大間違いだ。
欧州ではまだクリスマス休みが続き、EU関係の会議は始まらない。何故なら、いわゆる「正教会」系のキリスト教では1月7日がクリスマスだからだ。ちなみに、この日程はエジプト等のコプト系クリスチャンも同様である。これだけ見ても、欧州の統合が如何に困難かが分かるだろう。

〇東アジア・大洋州
6日にキルギス大統領が訪中し、中国・キルギス・ウズベクを通る鉄道建設計画のルートと融資について中国側と話し合う。6-8日には本年最初の党中央政治局会議が開かれ、今年10月の党大会に向けて政策と人事が動き出す。中国でのUnthinkableとは何か、今からよく考えておく必要があるだろう。

〇中東・アフリカ
3-7日にトルコの議会が大統領権限の拡大に関する憲法改正案について審議を始めるという。エルドアン大統領がプーチンのような統治を目指しているのだとしたら、年頭のようなテロ事件が終焉する可能性はほとんどない。トルコでのUnthinkableはエルドアン失脚だろうが、昨年のクーデター事件でその芽はなくなったのか。

〇南北アメリカ
トランプ次期大統領が相変わらずツイッターで情報を流している。大統領就任後もこれが続けば、米国政府の方針の対外発信はいったいどうなるのだろう。既存の官僚組織に対する不信は理解できるが、このままで大丈夫なのか。また、情報機関と新大統領との関係も微妙だが、こんな状態でトランプ政権は機能するのか、心配だ。
一方、7-15日の日程で台湾の総統がグアテマラ、ニカラグア、エルサルバドルとホンジュラスを訪問し、乗り継ぎでヒューストンとサンフランシスコを訪れる。普通なら何も起こらないだろうが、今年はどうだろうか。トランプ大統領就任の直前だけに、トランプ陣営の動きが気になるところだ。

〇インド亜大陸
2-8日、インド国民議会派がモディ首相の急激な通貨改革に反対し抗議デモ等を行うという。モディ首相としては状況の打開を目指して思い切った挙に出たのだろうが、まだ混乱が続いているらしい。インドの安定を期待したい。今週はこのくらいにしておこう。


2017年1月3日 米国第115議会第1会期開会
3日 ドイツ2016年11月労働市場統計発表
4-8日 稲田朋美防衛相がベルギー・仏を訪問
5日 ブラジル2016年11月鉱工業生産指数発表
5-11日 岸田外務大臣のフランス、チェコ及びアイルランド訪問
6日 米上下両院合同会議で正式に大統領選出
6日 米国2016年11月貿易統計発表、12月雇用統計発表
6日 日仏外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)(フランス)
6-12日 ポルトガルのアントニオ・コスタ首相がインドを訪問
7日 インド2016年度GDP推計値発表
7-15日 台湾の蔡英文総統が南アメリカを訪問

【来週の予定】
1月9日 ユーロスタット、11月失業率発表
9-12日 欧州議会委員会会議(ベルギー・ブリュッセル)
9-13日 バイブラント・グジャラート グローバルトレードショー2017(インド・グジャラート州)
9-27日 国際民間航空機関(ICAO)第210回Committee Phase
10日 ブラジル11月月間小売り調査発表
10日 ニカラグア新大統領就任式
10日か11日 ロシア2016年12月CPI発表
10-11日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
11日 ブラジル12月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
12日 ドイツのメルケル首相がルクセンブルクを訪問
12-13日 安倍首相がフィリピンを訪問
13日 米国12月小売売上高統計発表
13-14日 第27回アフリカ・フランス首脳会議(マリ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年1月 4日(水) | [ ]

早いもので、今年もあと二週間となってしまった。今週もトランプ次期大統領の驚くべき発言を取り上げざるを得ない。12月2日の台湾総統との電話会談に続き、11日にも対中爆弾発言が再び炸裂した。なぜ「一つの中国」政策に縛られる必要があるのかと疑問を呈したのだ。どうやら、トランプ政権は中国に本気で喧嘩を売る気らしい。

今回のトランプ氏の発言は確信犯であり、米国との関係改善の可能性に関する中国側の希望的観測を事実上無意味にする内容だ。さすがの中国も今回ばかりは黙っていられないのだろう。17日、中国人民解放軍海軍はフィリピン本土に近い南シナ海公海上で米海軍の無人潜水探査機を奪取したという。

中国国防部は、「不審な装置を発見し、船舶の航行と人員の安全に危害が及ぶのを防ぐため識別調査した」と述べた。これはトランプに対する中国側の警告的報復だが、それでも今回の中国側の対応は抑制されたものだった。中国側が直ちに「装置の返還」に言及したことは、米国との決定的対立を望んでいないことを示すものだ。

米中関係はこれからもギクシャクする。今回はその始まりに過ぎないが、より重要な問題は、トランプ政権が「一つの中国」政策を対中交渉材料の一つと捉える可能性があることだ。そのような素人的アプローチは東アジアだけでなく、全世界の米国の同盟国を懸念させるだろう。トランプ大統領はまだ就任すらしていないのに・・・。

〇欧州・ロシア
欧州はもうクリスマス気分らしく、重要日程は殆どない。唯一ロシアでは22日に恒例のプーチン大統領による記者会見がある。トランプ次期大統領、シリア、日露関係などについて如何なる発言をするかに個人的には興味がある。

〇東アジア・大洋州
15-16日の山口と東京での日露首脳会議の結果に「国民の大半はガッカリしている」と与党幹事長が述べ、別の幹部はメディアが期待値を上げ過ぎたという。手応えありと高揚感を隠さなかったのは官邸の方だとマスコミは反駁する。今回だけで領土問題が動くと信じた向きが落胆するのは当然だろう。
しかし、冷静になって考えれば、一回でロシア側が譲歩するなどと期待する方がどうかしている。ある意味で、この問題では戦後の日本の基本的外交戦略のあり方そのものが問われている。戦略環境が激変しかねない東アジアで、日本が戦略的方針転換するか否かが問われるという認識が国民には必要だろう。

〇中東・アフリカ
シリアのアレッポでの戦闘の行方が気になる。ロシアはオバマの米国にどこまで協力するのか。プーチンはトランプとの交渉まで切り札を切らないのか。いや、そもそも、ロシアにはシリア問題を解決するインセンティブがあるのか、疑問に思う時もある。浮かばれないのは、無実のシリア庶民だ。それにしても、何とかならないものか。

〇南北アメリカ
19日に本当の米大統領「選挙」がある。各州で選ばれた大統領「選挙人」が大統領を選ぶのだ。厳密に言えば、彼らには「投票の自由」があるらしい。つまり、万一、数十人の選挙人が「造反」すれば、トランプ大統領就任はなくなる、というのだが・・・。この種の議論は時折聞く話だが、それ以上でも以下でもない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

12月19日 米国大統領選挙選挙人投票
19日 EU環境相理事会(ベルギー・ブリュッセル)
19日 EU・ウクライナ連合評議会第3回会合(ブリュッセル)
19日 外務省が国際セミナー「グローバルな開発潮流と新興アジアの課題~開発センターの知見を生かして~」を開催
19日 日・リトアニア租税条約交渉の開始(東京)
19日 日本の国連加盟60周年記念行事の開催(東京)
19、21日 WTO、米国に関する貿易政策レビュー(スイス・ジュネーブ)
19-22日 平成28年度中南米大使会議の開催(東京)
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
21日か22日 ロシア1~10月貿易統計発表
22日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
22日か23日 ロシア11月雇用統計発表
23日 メキシコ11月貿易統計・雇用統計発表

【来週の予定】
12月26-27日 安倍首相が米国オバマ大統領とともにハワイを訪問(パールハーバー)
29日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP統計(速報値)発表
31日 ソマリア議会選挙(予定)
12月下旬 サウジアラビア2017年度(暦年)予算発表
12月中 UAE2017年度(暦年)ドバイ首長国政府予算発表
12月中 ラオス第8期第2回国民議会
12月中 黒海経済協力機構外相会合(セルビア・ベオグラード)
12月中 中央経済工作会議(中国・北京)
12月中 第4回北東アジアエネルギー安全保障フォーラム(韓国・ソウル)
12月中 イスラエルのネタニヤフ首相がアゼルバイジャン訪問
<日程未定>
12月12日から2017年3月31日のいつか ダライ・ラマが米次期大統領を訪問
2017年1月1日 マルタ、EU議長国就任
1日 ロシアが2017年のCIS議長国に
1日 アゼルバイジャンで税務の電子監査(e-audit)に関する法律が発効
1-31日 ダッカ国際見本市2017

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2016年12月20日(火) | [ ]

今週のハイライトは何といっても15日の日露首脳会談だろう。山口県で開催するのは「国賓」でないことの証であり、その後、東京に来ても公式色は出さないのだろう。いずれにせよ、焦点は形式ではなく、サブスタンスだ。国際的に関心が高いのは、日露交渉とクリミア併合による対露経済制裁との関連があるからだろう。

それにしても、昨今日本のマスコミを中心に「期待値」が必要以上に高まっているのは何故なのか。筆者には良く分からない。領土問題や平和条約など戦略レベルの話をする時に、経済協力の多寡が決定的意味を持つとは限らない。されば、なぜ期待値が上がったり下がったりするのか、筆者には不思議ですらある。

いずれにせよ、オバマ大統領の任期は来年1月19日まで。ボクシングに例えれば、翌20日からは新たなラウンドが始まる。今回のラウンドで日本側がKOは無理にしてもダウンを奪えば、次回のラウンドの行方を左右する可能性が高い。逆に、ダウンがなければ、このラウンドは今後の長いバトルの末の判定の一要素でしかなかろう。

日露が戦略的重要問題について、ここまで首脳レベルで話し合ったこと自体、決して悪い話ではない。むしろ、よくここまで来たものだとすら思う。12月15日の結果がどのようなものとなるにせよ、日露、日中、中露、米中、米露関係などからなる東アジアの地域国際情勢は直ぐには解の出ない連立複次方程式だ。冷静に見るしかない。

〇欧州・ロシア
11日にトルコ大統領がカザフスタンを訪問、13日にはイスラエル首相がアゼリバイジャンを、ロシア外相がセルビアをそれぞれ訪れる。個人的には、こうした細かな動きが如何なる意味を持つかに大いに関心がある。どうも、欧州方面はロシアの思惑通りに動いているようで、実に不気味だが・・・。

〇東アジア・大洋州
15-16日に英外相が日本と韓国を訪問する。12-13日にはインドネシア大統領がインドを訪問する。

〇中東・アフリカ
12日に米国防長官がイスラエルを訪問する。13日にはロシアのエネルギー大臣がテヘランを訪れる。現在の中東を象徴するような主要プレーヤーの動きだが、ロシアはこの地域でトランプ政権と如何なるゲームをしようとするのか。いずれにせよ、トランプ政権の最大関心事が中東でのテロとの闘いであることだけは疑いなさそうだ。

〇南北アメリカ
トランプ政権の外交チームが揃いつつある。個々の人事についてコメントは差し控えるとしても、全体としてはあまり機能しなさそうに見えるが、どうだろうか。米国の外交安保政策は基本的に、NSC大統領補佐官と国防長官と国務長官が作る三角形がチームとして動くか否かにかかっている。しっかりしてほしいものだ。

〇インド亜大陸
17日からバングラデシュ首相が安全保障協力の新たな合意について話し合うためインドを訪問する。バングラとの安保協力とは何を意味するのか。やはり、イスラム過激主義テロ対策なのだろうか。今週はこのくらいにしておこう。

12月12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 EU外相理事会(ベルギー・ブリュッセル)
12日 中東・北アフリカ地域における女性の経済・社会・政治的役割の推進に関する国際シンポジウム(東京)
12日 ピエール・モスコヴィッシ欧州委員がオランド大統領と会合のためパリを訪問
12日 コロンビアのサントス大統領がスウェーデンを訪問
12日 リトアニアのグリボウスカイテ大統領がウクライナを訪問
12-13日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
12-13日 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領がインドを訪問
12-15日 欧州議会本会議(フランス・ストラスブール)
12-15日 欧州議会委員会会議(ストラスブール)
12-16日 日本からフィリピンへの薬物対策支援調査団の派遣
13日 ブラジル10月月間小売り調査発表
13日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
13日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
13日 黒海経済協力機構外相会合(セルビア・ベオグラード)
13日 ロシア・イラン政府間委員会会合(イラン・テヘラン)
13日 ロシアのノワクエネルギー相がイラン訪問
13日 南ア第2四半期雇用統計発表
13日 日米韓六者会合首席代表者会合の開催(韓国・ソウル)
13-14日 米国FOMC
13-14日 国際女性会議WAW!(WAW!2016)の開催(東京)
13-20日 JENESYS2016 招へいプログラム(対象国:インドネシア、シンガポール、マレーシア、インド、第8陣)
13-21日 JENESYS2.0 香港・マカオ高校生訪日団の訪日(テーマ:文化、交流)
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
14日 南ア11月CPI、自動車生産・販売統計発表
14日 米国11月小売売上高統計発表
14-18日 タジキスタンのラフモン大統領がインドを訪問
15日 米国11月CPI発表
15日 ECB一般理事会(フランクフルト)
15日 日ロ首脳会談(山口県長門市)
15日か16日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
15-16日 欧州理事会(ブリュッセル)
15-16日 ロシアのプーチン大統領の訪日
15-18日 第11回カンボジア輸出入一州一品展示会(プノンペン)
15-22日 MIRAIプログラム(冬・招へいグループ)
16日 インド10月鉱工業生産指数発表
16日 ロシア中銀理事会
16日 ユーロスタット、11月CPI発表
16日 南ア市場休場(和解の日)
16-18日 インテックス南アジア(縫製関連展示会)(スリランカ・コロンボ)
18日 コートジボワール国民議会選挙

【来週の予定】
12月19日 米国大統領選挙選挙人投票
19日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
19、21日 WTO、米国に関する貿易政策レビュー(スイス・ジュネーブ)
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
21日か22日 ロシア1~10月貿易統計発表
22日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
22日か23日 ロシア11月雇用統計発表
23日 メキシコ11月貿易統計・雇用統計発表

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2016年12月13日(火) | [ ]

今週は突っ込みどころが満載だ。まずはトランプ外交から。トランプ氏の台湾・蔡英文総統との直接電話にはさすがに驚いた。勿論、偶然のはずはない。周到な準備なしには実現しない、確信犯的な行動であることは間違いなかろう。ここにトランプ外交チームの危うさを感じるのは筆者だけだろうか。

中国側は、文字通り、慌てふためいたのではないか。王毅外交部長は「台湾側の小細工」だと切り捨てたが、彼の表情は怒りと焦燥感に満ちていた。彼の責任ではないが、中国外交にとっては大失態だろう。トランプ氏の言動は、中国側が理解する1972年以来の米政府の立場を逸脱しかねないものだからだ。

筆者の見立てはこうだ。トランプ氏は外交安保問題に深い関心を持たず、そこには「知的空白」がある。しかし、共和党系のまともな外交安保専門家が新政権の中枢に入っている可能性は低い。されば、トランプ政権の外交安保政策は誰かに乗っ取られつつあるのではないか。詳しくは今週木曜日の産経新聞コラムを読んでほしい。

〇欧州・ロシア
4日、イタリア首相が自ら仕掛けた国民投票で憲法改正案は大差で否決され、同首相は辞意を表明した。これは同国での極右の動きとは直接関係のない、単なる同首相の政治力不足、判断ミスの結果ではないかと思う。いずれにせよ、英国のEU離脱で国民投票を仕掛けた前英首相と同じ末路だ。政治家が弱くなったということか。
ただし、これでイタリアの総選挙も早まるので、反ユーロを主張する「五つ星運動」などが躍進する可能性も残っている。まだまだ、油断は禁物だろう。一方、もう一つ注目されたオーストリア大統領選挙は、対抗馬だった極右の候補を振り切り、リベラル系緑の党の元党首が当選した。これが欧州の良識だと信じたいのだが・・・。

〇東アジア・大洋州
9日に韓国議会が大統領弾劾の採決を行う可能性があるらしい。それにしても、韓国の大統領は何と哀れなことか。これまで誰一人として、元大統領としての威厳と矜持を保った政治家はいないではないか。韓国のマスコミは同国の前近代的、封建主義的政治状況を憂いているが、そのマスコミの責任も小さくないのではないか。
現在ジャカルタで、中国が主導する多国間貿易交渉RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)が開かれている。TPPは当分動きそうにないが、これを廃棄してはならない。せめて塩漬けか、フリーズドライにできないものか。捨てるのはあまりに勿体ないと思うのだが・・・。

〇中東・アフリカ
10日にパリでシリア反体制勢力の会合が開かれるが、一体何を話すのだろうか。米国やトルコが支援しているのだろうが、その支援の内容は中途半端だし、武器の一部はISに横流しされているという噂も絶えない。トランプ政権が早期解決のため前のめりになれば、それこそプーチン大統領の思う壺だろう。解決の道は遠いということか。

〇南北アメリカ
12月26-27日に安倍首相がハワイの真珠湾を訪れ、オバマ大統領と最後の首脳会談を行うという。成熟した同盟国同士だが、いや、だからこそ、このように和解のレベルを高めていくことが重要なのだと思う。日本総理の真珠湾訪問と米大統領の広島訪問はパッケージであり、オバマ大統領在任中にやるべきことなのだろう。

〇インド亜大陸
8日に米国防長官が訪印する。それにしても、オバマ政権下で軍事・安全保障の分野で米印関係が着実に進展しているようだ。これも、中国のインド洋進出を念頭に置いたものなのだろう。今週はこのくらいにしておこう。

12月5日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ベルギー・ブリュッセル)
5日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
5日 第4回日ウクライナ原発事故後協力合同委員会(東京)
5-6日 トルコのユルドゥルム首相がロシア訪問
5-6日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
5-7日 ノルウェーのホーコン皇太子がニューヨークを訪問
5-8日 英国最高裁、EU離脱通知の議会承認の要否に係る審理
5-9日 第155回FAO理事会(イタリア・ローマ)
6日 ユーロスタット、第3四半期実質GDP成長率発表
6日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
6日 南ア第3四半期GDP発表
6日 米国10月貿易統計発表
6日か7日 ロシア11月CPI発表
6-7日 エルジビエタ・ビエンコフスカ欧州委員がアルゼンチンを訪問
6-10日 第16回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合(インドネシア)
6-13日 JENESYS2016 招へいプログラムの実施(対象国:カンボジア、ラオス、ベトナム、第7陣)
6-14日 JENESYS2.0 2016年度中国高校生訪日団第4陣の訪日(テーマ:社会貢献、ボランティア)
7日 スイス連邦大統領・副大統領選挙(ベルン)
7日 ガーナ大統領・国民議会選挙
7日 ウクライナ東部紛争調整連絡調整グループ会合(ベラルーシ・ミンスク)
7-8日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
7-8日 日・イラン外相会談(日本)
7-9日 ザンビアのルング大統領が南アフリカを訪問
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
8日 メキシコ11月CPI発表
8日 中国11月貿易統計発表
8日 南ア10月鉱業生産・販売統計、10月工業生産・販売統計発表
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
8日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8-9日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
8-9日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
8-9日 第7回アフリカ郵便フォーラム(コートジボワール)
8-9日 第23回OSCE閣僚理事会(ドイツ・ハンブルク)
9日 ブラジル11月IPCA発表
9日 中国11月CPI発表
9日 CIS経済理事会(ロシア・モスクワ)
9日 H-IIBロケット6号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)の打上げ(種子島)
9日 フランスのオランド大統領がキプロスを訪問
9-10日 第19南アジア地域協力連合(SAARC)サミット(パキスタン・イスラマバード)
11日 ルーマニア上下両院選挙
11日 マケドニア議会選挙
11日 キルギス地方選挙
11日 キルギス憲法改正の是非を問う国民投票
11-14日 核兵器のない世界へ 長崎国際会議(長崎市)

【来週の予定】
12月12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 EU外相理事会(ブリュッセル)
12-13日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
12-15日 欧州議会本会議(ストラスブール)
13日 ブラジル10月月間小売り調査発表
13日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
13日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
13日 黒海経済協力機構外相会合(セルビア・ベオグラード)
13日 ロシア・イラン政府間委員会会合(テヘラン)
13日 ロシアのノワクエネルギー相がイラン訪問
13日 南ア第2四半期雇用統計発表
13-14日 米国FOMC
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
14日 南ア11月CPI、自動車生産・販売統計発表
14日 米国11月小売売上高統計発表
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
15日 米国11月CPI発表
15日 ECB一般理事会(フランクフルト)
15日 日ロ首脳会談(山口県長門市)
15日か16日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
15-16日 欧州理事会(ブリュッセル)
15-18日 第11回カンボジア輸出入一州一品展示会(プノンペン)
16日 インド10月鉱工業生産指数発表
16日 ロシア中銀理事会
16日 ユーロスタット、11月CPI発表
16-18日 インテックス南アジア(縫製関連展示会)(コロンボ)
18日 コートジボワール国民議会選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2016年12月 6日(火) | [ ]